マスキングテープに印字する「キングジム coharu」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


マスキングテープに印字するcoharu

 今回のブツはキングジムのcoharu(こはる)。ラベルライターだが、キングジムのテプラシリーズとは性格を大きく異にしつつ、キングジムのイメージから大きく離れているよーにも思える製品なのである。

キングジムのcoharu(こはる)。専用マスキングテープに印字できるラベルライターだ

 coharuの最大の特徴は、専用テープが「マスキングテープ」だということ(厳密に言えばマスキングテープ風の紙テープ)。一般のマスキングテープに印字できるわけではないが、専用マスキングテープに熱転写方式で印字できるのだ。

 ここで「マスキングテープ?」と思われた方と、「マスキングテープ♪」と思われた方があると思う。文具売り場などによく行く人ならご存知かと思うが、マスキングテープが数年前からブームで、最近ではマスキングテープを使った物作りやモノ飾りがクラフトのひとつとしてすっかり定着した感がある。

 どーゆーコトかは、「マスキングテープ」をキーワードとしてGoogle画像検索を行えば一目瞭然。塗装などに使う紙の養生テープが多々ヒットするかと思いきや……大半がカラフルでかわいらしい粘着剤付き紙テープの画像となる。

「マスキングテープ」をキーワードとしてGoogle画像検索を行ったところ。現在、日本でマスキングテープと言えばホビー/クラフト用のカラフルなテープ(紙/粘着剤付き)を指す雰囲気になっているマスキングテープ・クラフト向けのカラフルな市販テープ。マスキングテープ・クラフトブームの火付け役となったカモ井加工紙の製品だ。紙タイプのほか、布タイプやフィルムタイプなどもあるマスキングテープを活用したクラフト入門書も多数出版されている。カラフルなマスキングテープでかわいい手作りをするという趣味が定着し、ショップではマスキングテープ専門コーナーも見られる。

 マスキングテープなら、手でちぎれる、どこにでも貼れて剥がせる、書き込める、かわいい色/柄のテープがたくさんある、重ねて貼ると色合いが変わって楽しいなどなど、自由度や趣味性の高さがあり、それゆえ流行ってる……というかマスキングテープで楽しむという、ひとつの趣味が確立されたんですな。そんな状況に対し、キングジムがマスキングテープなレベルライターを投入したという格好だ。

 モノとしては、まず前述のcoharu。それから趣味なマスキングテープの本家ことカモ井加工紙のテープをそのままラベルライターのカートリッジにしたマスキングテープ「mt」ラベルがある──テプラPROシリーズで印字できるラベルですな。

 ただ、後者はカートリッジの実勢価格が1本700円弱とやや高価。coharuは本体の実勢価格が5000円弱で、専用テープが1本300円弱。手を出しやすい製品ってトコロで、今回はcoharuの使用感などをレポートしてみたい。

coharuちゃん、ニャわいい♪

 Amazonでポチッとしたら翌日サクッと配送されたcoharuは、イキナリ、かわいい雰囲気なのであった。言われなければキングジム製だとは思えないほど。パッケージからしてカワイイ……というか、クラフトで手作りで非装飾的で素朴、みたいな。

coharuのパッケージはボール紙の箱。素朴なパッケージですな。捨てたくない方面の箱と言えよう箱のなかに鎮座する本体(実際は緩衝材に包まれている)。もー全然キングジムって感じがしないのだ本体各部も可愛らしくデザインされている。上部に見える取っ手が革バンドだったりするから驚く
coharuのサイズは約80×110×40㎜(革ベルト部除く)で、質量は約175g(電池除く)。ポケットサイズですな非常に小さなキーボードが並ぶ。プリントキーは鳥のカタチ。視認線や使用感よりカワイサを優先した!?電源は単4形アルカリ乾電池×4本。電池は別売。専用テープは15種類あるが、これも別売となっている
専用テープはこんなふーな癒し系カラーっていうかパステルカラーを基調としたものが15種類ある試しに印字してみた。後述するが、ソレっぽいフォント、フレーム、記号などを使って印字できるテープは「マスキングテープ風の紙製」。手でちぎれる。ただし感熱紙なので長期使用には不向き

 パッケージも本体も各種専用テープも印字結果も、ぜ~んぶ乙女な雰囲気ですな。ある意味、全然拙者向きではないが、拙者の星座は乙女座なのでまさに拙者向きとも言えるかどうかはさておき、さらにcoharuの機能や使用感などを見ていこう。

単純明快な専用機

 ここでイキナリ、coharuの機能~性能に対する印象を言えば、機能/性能とも高くないものの、目的を十分達成できる「遊べるラベルライター」てな感じ。ここで言う「目的」は、「ニャわいいマスキングテープ風紙テープにニャわいい文字や記号を印刷してニャわいく貼って楽しむニャ♪」的なことですな。

 coharuの使い方の基本を見てみると、まあ、ラベルライターなんで、ほかの製品と似たような感じだが、至って単純明快なのが特徴的だ。基本は、キーボードで文字などを入力してプリントするだけ。「キレイなテープとかに」「何か書いたりして」「どっかに貼ったりして楽しむ」、という趣味のうち「何か書いたりして」を担当するのがcoharuですな。手で書くのはアレなんで、coharuという道具を使う、みたいな。

 というわけで、coharuにはテプラシリーズにあるような各種お役立ち系機能はほとんどナイと言えよう。プリント結果としての見栄えを良く(というかカワイく)するための機能はあるが、テプラシリーズなどからすればデキナイことのほうがずっと多いと言える。

 たとえば、文字などを入力して電源切って、再度電源を入れたら、入力した文字などはなくなっているのだ。記憶などしないのである。記憶などする装置はカワイクナイのである(そうなのか?)。

 もちろんオートカット機能などなく、プリントされたラベルは手でちぎるかハサミで切るのだ。オートカットなどという高度な感じの機能はカワイクナイのである(そうなのか?)。

 連続印刷機能なんかもなく、印刷結果プレビュー機能なんかも当然なくて、アタリマエだがバーコード印刷機能なんかあるわけなくての無い無い尽くしのcoharuである。こういった業務指向の機能はちっともカワイクナイのである(そうなのか?)。

 カワイイ/カワイクナイはさておき、coharuは「愉快な貼れるテープを自作できるだけの趣味的ラベルライター」であり、それ以外の用途にはほとんんど向かないと思う。

coharuのカワイさ演出力

 さて、前述「coharuは可愛いマスキングテープ風ラベル作る以外ナンも役立たねえ」的なことを書いたが、まあ実際そう思うんですけど、じゃあ可愛いテープを印刷するときの実力はどうか? 拙者はカナリのモンだと感じた。実勢価格5000円弱のラベルライター+専用テープで、このくらいソレっぽいモノをサクッと作れちゃうなら十分実力派ではないだろうか、と。

 具体的には、coharuには可愛らしく印刷するためのフレームやフォントや記号などが内蔵されており、それらをラクに使える。逆に、可愛らしい印刷物を作るためのフレームやフォント以外は内蔵されてナイ感じと言えよう。また、フレームやフォントなどを超ラクに組み合わせて使える、が、その一方で、それらを独自のデザインへと追い込んでいくような編集機能はほぼない。

coharuに内蔵されている6種類のフォントおよび注意事項(説明書より抜粋)。実質、漢字は1種類、ひらがなは4種類、英数字は6種類となる内蔵の記号/絵の一部(説明書より抜粋)。数は少ないが、使いやすい記号が多い。専用ラベルへの感熱印字のレトロな雰囲気もなかなかフレームは34種類から選べる(説明書より抜粋)。横方向には自動的に延びるが、縦方向は固定。なお、coharuは縦組み印刷には非対応だ

 ぶっちゃけ、ユルくてニャわいい感じのラベルっていうかむしろ紙のシールを、アッと言う間に作れちゃうのがcoharuである。時間をかけてもソレ以上のモンは作れないとも言えるが、敢えてそこまでキリッとはキメないのがマスキングテープ・ホビイストのスタンスだと思われる。ともあれ、coharuを使えば以下のようなラベルがアッという間にできる。

内蔵のメッセージを選択して印刷しただけの例。電源入れてメッセージ選んで印刷ボタン押すだけで、アッと言う間に作れちゃうのがナイス文字や内蔵メッセージなどにフレームを組み合わせることもできる。ただ好きなフレームを選ぶだけなので、一見凝っているラベルも楽勝で作れる漢字変換は低性能だが使えるレベル。ただし漢字はスタンダートと呼ばれるカワイゲもユルサもないフォントでしか印刷できない。微妙に残念かも

 文字入力の快適さだが、まずキーボードの各キーが非常に小さいので効率的には入力できない。漢字変換の効率は、必要最低限の性能しか持たないという印象。前述のように、一般的なラベルライターからすればデキナイことのほうが多い──たとえばフォントや文字サイズの混在には非対応だったりするし、そもそも効率とか汎用性を求める製品ではない気がする。

 てな感じのcoharu。拙者的にはキングジムがまさかマスキングテープ市場へと展開しているとは!! ってコトで驚いたんだが、coharuはなんかこーソッチ方面の人のツボを心得てる感があって、そういう観点でコストパフォーマンスが高い製品だと感じる。

 あと、ヒトツだけ注意点だが、coharu専用テープは、たとえばmtなどのマスキングテープとは違った手触りであること。本来のマスキングテープは表面が水を弾くような素材(油紙!?)だが、coharu専用テープはフツーの薄い紙。貼ったり剥がしたり、手でちぎったり、自由に書き込んだりできるあたりはマスキングテープと同様だが、感触がちょい違うわけですな。なので、そのあたりにもこだわる方は、一度coharuのテープ質感を確かめてから購入を吟味したほうがいいかもしれない。

2011/2/21 06:00