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かわいいポータブルシンセ、OP-1

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


かわいいポータブルシンセ、OP-1

 今回のネタはスウェーデンのメーカーTeenage Engineeringから登場したポータブルシンセサイザーのOP-1。日本ではMedia Integrationから9万8700円で発売された。

Teenage Engineeringのポータブルシンセサイザー「OP-1」。サイズは幅28.2×奥行き10.2×高さ1.35cm。質量は576g(実測値) ツマミ(ロータリーエンコーダー)などがカラフルに並ぶ。シンセサイザーとしては非常にポップで現代的なデザインなのである 60fpsで表示する有機ELディスプレイ(320×160ドット)を実装。動作中はアニメーションしまくり。小さいが情報量は十分ある

 OP-1は携帯可能な電子楽器。バッテリー駆動のポータブルなシンセサイザーなんだが、シンセでの音作りや演奏、リズムマシン(サンプルベース)、シーケンサーやエフェクター、そしてそれら機能で作った曲を録音することまでできる、いわばDAW製品ですな。これ1台で音遊び〜演奏〜録音〜曲作りまで可能なのだ。

 コレ、つい最近発売された製品だが、拙者の場合はOP-1の見た目に惚れて予約注文。既に各所に出回っているOP-1関連動画を見ても、まあ、ヤバげな製品ではなさそうなので、見た目重視で中身も信用してポチッとな、みたいな。

 てゅーかスゲくカワイくないですかコレ。拙者の場合は2011年7月20日にOP-1を購入できたんだが、実機に触れた瞬間、全俺のハートが超震えた!! カワイイうえに、このイイ感じの高級感を伴った触り心地がたまらねえ!! ボタン類の感触も上々!! 有機EL超キレイ!!

 そして……数時間使った結果、も〜最近試したサウンド系ガジェットのなかではいちばん愉快だと感じた。愉快だし、なんかコレ、じつは凄い実用性っていうか実戦力があるシンセなのでは!? つか、そーとーイイよOP-1!! と強い満足感を得た拙者であった。

 てなわけで以降、OP-1の概要〜使用感などをレポートしてみたい。

 

小さくてキュート★

 まずはOP-1の外見から。音なんか3つくらい出ればいいじゃん級のキュートさであり、置いとくだけで満足クラスのクールさであり、しかも後述のようにポータブルなDAWとしても使えるというのだから、もう1台欲しいくらいである。

真正面から見たところ。ポップな配色でありながらもストイックな雰囲気も醸し出してますな 各キーはこのような形状で少し突起している。適度なクリック感があり、ボタン操作は快適だ キートップは文字少なめでアイコン多め。アイコンなどの色は直感的操作につながる工夫がある
本体左上部にはスピーカーを内蔵する。高音質ではないものの、OP-1のみでとりあえず音を出せるのは楽しい 本体右側上部にはマイクを内蔵する。マイクなどから音を録って、OP-1のサンプラー系機能で演奏できる 本体右側面。オーディオ/ヘッドホン出力、オーディオ入力、USBポート、電源スイッチが並ぶ。上下にストラップ穴もある
有機ELディスプレイの表示例。演奏中などはこのような美しい表示が音色変化などに応じてアニメーションする エフェクターの設定表示例。ちょいとユーモアを含んだキレイな表示。設定も楽しくわかりやすく進められる感じ Tape機能(4トラック録音機能)の表示例。これもまたテープ録音されているような雰囲気でアニメーションするのだ

 写真ではプラスチックな感じに見えがちな本体だが、側面〜底面はアルミ削り出しのモノコック・シャーシとなっている。ややズシリとくる重みとアルミの冷たさに精密さ&重厚さ&高級感アリ。キー類は樹脂と思われるが、少々のクリック感を伴う押下感は良好。ロータリーエンコーダー類の操作感も悪くない。ポップなデザインからは想像しにくいマジメでマトモな操作感がある。

 このようなジョリーグッドな製品は、使うために1台、観賞用に1台、そして予備に1台の3台くらい欲しいモンですな。って実際買うとソッコーで「OP-2」とかが出たりして機材貧乏になるわけだが、さておき、作り込まれた美しい機材はそれだけでソソる。……そう言えば、OP-1のパッケージもちょっと好印象なものであった。

OP-1のパッケージは、このような紙フォームの黒箱。保管や持ち運びのためのケースにも使える 箱を閉じて付属のゴムバンドでまとめれば簡易ケースになるんですな。わりと実用的である 付属のゴムバンド。Teenage Engineeringってメーカー名は日本語で「10代工学」らしいゼ!!

 Teenage Engineering本家サイトでは、この箱について「OP-1 comes in a reusable Paper Foam Box. Great for you and mother earth.」とキャプションを付けている。ニクいネ♪

 

OP-1で何ができるのか?

 OP-1は多機能シンセサイザーではあるが、実質、曲作りまでこなせたりするポータブルDAWと言える製品だ。ここでは具体的にどんなコトができるかザッと見ていこう。

 まずはシンセサイザーとしてさまざまな音色を使って演奏でき、音色のエディット(音作り)もできる。ボタン(1〜8)にあらかじめ音色が割り振られていて、これを選んで音色を決め、鍵盤で弾くんですな。スゲく多量のプリセット音色を持ち、それらプリセット音色を自由にボタンへ割り振って使える。

1〜8のボタンに音色を割り振れる。使えるプリセット音色がタップリ用意されている。下に並ぶ縦長の丸と黒丸のキーがキーボードの白鍵と黒鍵ですな 音を出すと表示もリアルタイムで変わる(アニメーションする)。この状態のまま音色をエディットしていくことができる。アナログシンセ風の操作感だ 有機EL上のパラメータ表示の色とロータリーエンコーダーの色(ブルー/グリーン/ホワイト/オレンジ)は対応している。ので、音作りを直感的に行える

 ユニークっていうかグレイトなのが音作りの容易さ。シンセサイザー・エンジンとしてはFMシンセをはじめとする7種類があり、かなり幅広い音作りを楽しめる。のだが、どれも直感的に操作して音を作っていける。「なるほど、ブルーのツマミを動かすとコレが動いて、ノイジーになったりクリアになったりするのか」みたいに。

 サンプルベースのリズムマシン(ドラムマシン)も使える。録音した音の一部分を、たとえばスネアやハイハットなどとして音を出し、リズムを刻めるわけですな。これもまたプリセットが入っていて、シンセサイザーと同様に鍵盤を叩くだけで即ドラム音を出せる。

 それからシンプルに使えるシーケンサーやエフェクトもある。シーケンサーは、ステップ入力式(ENDLESS Sequencer)、グリッド入力式(PATTERN Sequencer)、ランダムなパターンを生成できるTOMBOLA Sequencerがある。今時的DAWハードウェアに搭載されるシーケンサーとしては最低限(かそれ未満)の機能しか持たないが、そのぶん理解しやすいとは言える。

ステップ入力のENDLESS Sequencer、グリッド入力のPATTERN Sequencer、独自のTOMBOLA Sequencerが使える グリッド上に音を置いていく感覚で使えるPATTERN Sequencer。ドラムトラックを作るのに向きますな ランダムなパターンを作るTOMBOLA Sequencer。TOMBOLAは六角形の回転箱からランダムに券を引くクジだ

 エフェクターとしては、Delay(昔ながらの単純なディレイ)、Phone(電話っぽいローファイな音になるエフェクト)、Punch(サウンドにパンチを!?)、Grid(グリッド・エコー)、Spring(スプリング・リバーブ)が使える。

 シンセサイザーやリズムマシンで演奏/シーケンス演奏させたフレーズ/曲は、Tape機能で録音していける。このTape機能、なんとカセットMTR(マルチトラックレコーダー)をイメージしたマルチトラック録音機能。ただ、実際のカセットMTRと違って、1つのトラックに対するオーバーダブ(重ね録り)は自由に行えたり、録音テイク部分を手動でずらすことができたり、テープ上の前後のテイクを容易に合体させることができたり、そのあたりはデジタル録音機材ならではですな。

 一方でアナログ的な操作(トリック)も可能だ。たとえばツマミを回しつつ録音するとテープ速度を微妙に手動調節でき、結果、うねったようなサウンドを録れる。あるいはボタン一押しでテープの逆再生が可能だったり、テープを前後に短く送ってのスクラッチもデキちゃう。

 てな感じでこのカセットMTR風な録音機能、なかなかオモシロイく、使い勝手もまずまずである。ただ、録音機能としてはちょっと今時的なDAWからは離れているような気がしなくもない。とは言え、OP-1のなかで音作り〜演奏〜わりとわかりやすいマルチトラック録音までデキるのは楽しい。ちなみに、録音機能で録った手動演奏のフレーズなどをサンプルベースのリズムマシンの音源として使うようなこともできる。

 なお、各機能の詳細はOP-1のPDFマニュアルをご参照願いたい。……あ。なんか本家サイトにも日本代理店サイトにもPDFマニュアルにも、このTape機能の録音時間が「Normalスピード時は、6分までレコーディング可能。Lowスピード時は、24分までレコーディング可能」となっているが、コレ、「6時間」と「24時間」の間違い……ですよね!? ていうか間違いだと思われる。

 ともあれ、こんな機能を使って音を出して演奏をして(させて)トラックをまとめて曲へと仕上げていけるわけだ。ちなみにOP-1の最大連続使用時間は16時間。じっくり長時間、モバイル状態でもサウンド遊びを楽しめますな。

 

使い勝手は?

 OP-1の全体的な使用感だが、予想以上に平易だと感じられた。OP-1はかなり多機能なので、もちろんマニュアルに目を通す必要はある。しかし、マニュアルを参照しつつひととおり機能に触れていけば、機能〜操作法はだいたい把握できると思う。

 それと、OP-1をイジっていて軽い目眩とともにプチ感動した操作性がある。少し前述したが、UIの一部として「色」が積極的に採り入れられていることだ。

 たとえばシンセサイザー系機能ならブルー、録音機能ならオレンジという感じでおおまかに分けられている。有機EL上の表示とロータリーエンコーダーの色もそうで、たとえば音色エディット時にグリーンで表示されたパラメーターは、グリーンのロータリーエンコーダーを回せば数値が変わるようになっている。

 一部そうでない「色と操作の関係」もあるが、全体的に表示の色とボタン/ツマミ類の色が密接に関わっているので、非常に直感的に操作できてラク。また、色により表示/ロータリーエンコーダーの対応を示しているから、ロータリーエンコーダー位置と有機EL位置を自由にデザインできたのだとも思う。サラリとスゴいことヤッてるUIだと思う。大したモンですな。

 単純なところで、アナログシンセ的な感覚で、ツマミを回しつつの音作りが楽しい。鍵盤を押下しつつツマミ(ロータリーエンコーダー)を回すと、リアルタイムで音色が変わっていき、好みの音を作っていけるのだ。

 OP-1には現在7種類のシンセサイザー・エンジンが搭載されている。具体的には、Cluster、Digital、String、Pulse、FM、Phase、Dr Waveとなる。各エンジンは4つのパラメーターを調整でき、エンベローブはADSRを使って音作りを行える。エンジンもADSRエンベローブも4つのパラメータをイジるわけだが、これもまた4つのロータリーエンコーダーで扱えて、直感的に効率良く音作りが行える。

OP-1のロータリーエンコーダー。パラメータなどの調整に幅広く使う「メインのツマミ」ですな。数値などの微妙な調整も容易だ OP-1は7種類のシンセサイザー・エンジンを搭載持つ。エンジンは今後のアップデートで追加される予定。※図は説明書より抜粋 ADSRエンベローブも4つのロータリーエンコーダーでサササッと調節できる。音作りが非常にラクなOP-1だ。※図は説明書より抜粋

 それから、やはりこのサイズが良い。前述のとおり幅28.2×奥行き10.2×高さ1.35cmで質量は576g(実測値)だが、全然邪魔にならない〜♪ バッテリーで最大16時間使えちゃうからいつでもどこでも遊べちゃう〜♪ 前述のような機能と操作性がありつつ、このサイズっていうか凝縮感があると、なんかちょっとやっぱ機材的にゾクゾクするわけですな。

 まあ、不満がないわけではなく、たとえばキーはベロシティ非対応だとか、MIDI対応だがMIDIコントローラーとしてしか使えないとか、なんだかんだ言ってもシーケンサは高機能とは言えないとか、今時的なDAW機材としては弱い部分も多い。本格的に音楽製作をしたいと考えている場合、OP-1はオススメできないというケースが少なくないと思う。

 のだが、「小さくてカッコ良くて外でも使えてムツカシイことナシに音を楽しめて電子音楽な感じで遊びた〜い!!」的な緩い要望ならバッチリ満たしてくれそうなOP-1。またそんなふうな緩くリラックスした音遊びから、思わぬサウンドが出現したりするのも、気楽に使えるOP-1ならではの良さだとも思う。

 てなわけで、興味のある方はゼヒ一度実機に触れてみる方向で。単純に楽しいっす。カワイイっす。イカシてるっす。……ちょっと高いけど。

2011/7/25 06:00