無線で使えるバイブレーションスピーカー
「Bluetooth 振動式スピーカー BTSP10」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


無線で使えるバイブレーションスピーカー

 今回のネタはキングジムから発売予定の「Bluetooth 振動式スピーカー BTSP10」。PCやスマートフォンなどとBluetooth接続して使う無線式のスピーカーで、設置した面が振動して鳴る(設置面がスピーカーになる)、いわゆるバイブレーションスピーカーですな。

キングジムの「Bluetooth 振動式スピーカー BTSP10」。PCやスマートフォンなどとBluetooth接続して使えるバイブレーションスピーカーだ。2012年9月28日発売予定でメーカー価格は6930円。

 じつは、2011年にキングジムからPREON(プレオン)というバイブレーションスピーカーが発売された。使ってみたらイイ感じで、手軽に汎用できる製品であった。が、リンク先のとおり回収となってしまった。

 俺的には「これは便利!! 遊べる♪」と感じていたPREONだが、市場から消え去って超残念であった。しかしこのPREONを上回る機能性を持ったバイブレーションスピーカーが登場。それがこの「Bluetooth 振動式スピーカー BTSP10」なのである。

 BTSP10、俺としてはも~かなり興味津々。なので、2012年9月28日発売予定だが、発売前にサンプルをお借りして試用してみた。てなわけで以降、BTSP10の機能や使用感をレポートしてみたい。


会議やセミナーでの利用を想定

 前述のとおり、BTSP10はバイブレーションスピーカー。BTSP10を置いた面が振動し、その面全体がスピーカーとなり「音が鳴る」というもの。出力は10W(モノラル)で、再生周波数帯域は40Hz~20kHz。サイズは直径5.5×高さ7cmで、質量は約250g。内蔵のリチウムイオンバッテリーで連続3時間程度は使えるとのこと。バッテリーへはUSB給電して充電する。

手のひらサイズのバイブレーションスピーカーだ。底面には粘着素材があり、机上面などにペタリと貼る感覚で設置できる。上面には高音をよく再生するサテライトスピーカーを内蔵している
音源とはBluetooth接続してもケーブル接続しても鳴らせる。ケーブル接続時は、付属のφ3.5mmステレオプラグ付きUSBケーブルを使う。ハンズフリー通話にも対応し、BTSP10をBluetooth受話器のようにも使える。なお、使用時は写真右のようにサテライトスピーカーをポップアップさせる

 プレスリリースによると、用途は会議やセミナーを想定しているようだ。たとえばプレゼンテーションソフト使用時、PCとBTSP10を無線接続し、BTSP10を会議テーブルに置く。すると、会議テーブルがスピーカーとなり、動画など資料を音付きで見せることができる。通常なら別途スピーカーを設置する手間がかかるが、BTSP10ならテーブル上に置くだけで済むというわけだ。

 ただ、率直な話、あまり高音質は望めない。バイブレーションスピーカー全体に共通して言えることだが、接した面の材質や大きさにより音質がガラリと変わる。また、テーブルなどBTSP10を置く面は音を鳴らすことを想定して作られているわけではない。ので、偶然イイ音で鳴ることもあるものの、多くのケースで「フツーのスピーカーより音質は劣る」というイメージになりがち。

 とは言っても、後述のように適切な置き場所を探せば、BGMとして音楽を楽しむくらいの音質は求められる。またBTSP10の場合、Bluetooth接続=音源と無結線なので、そういう「イイ音が出るポイント探し」がラクに行える。

 それと、上の写真のように、振動式スピーカー部に加え高音を再生するサテライトスピーカーを内蔵しているBTSP10。一般のバイブレーションスピーカーより音質がクリアだったりもする。


クリアな音質で音量も十分

 さて、実際にBTSP10を機器と接続して音を出してみる。なお、BTSP10はBluetooth2.1+EDRに対応している。ただし、SCMS-T(ワンセグ音声)には非対応となっている。

 まずは機器とのペアリングだが、BTSP10の電源を入れ、機器側からBTSP10へ接続操作を行うだけでペアリングが完了する。BTSP10の場合はペアリングのためのモードへの移行や、PINコード(パスキー)入力などは必要ないようだ。手持ちの端末(iPhone 4S、第3世代iPad、GALAXY Note)でペアリング操作を試したが、どの端末とも問題なくつながり、BTSP10で音声の再生やハンズフリー通話機能を使用できた。

 で、使用感。iPhone 4SとBluetooth接続し、仕事机の上に設置し、取材時に録音したボイスメモ音声を鳴らしてみたところ、予想以上に音質がイイ。サテライトスピーカーが効いているのだと思うが、高音がクリアに出て声が聞き取りやすい。硬く重い仕事机からは、バイブレーションスピーカーからの低音が、これまた予想以上に豊かに出ている。

 それと音量も十分に大きい。拙宅仕事机の上で、BTSP10および音源機器側のボリュームを最大にして再生すると、ちょっと慌てて音量を下げたくなるくらいの音量になる。10人程度が入る会議室なら、机上にBTSP10を設置して音声付きプレゼンをするには十二分な音量だと思う。

 ただ、あまり音量を上げると、設置した面の素材や再生する音によっては高音が割れたり低音が歪んだりする。音が聞こえればいいだけならまあ我慢できるレベルだと思うが、綺麗な音で聞かせたい場合は設置する場所を吟味したり、音量や音源に配慮する必要がある。

 それから、やはり無線接続式のスピーカー類は便利でイイですな。音源機器との位置関係に悩まされることがほとんどない。また、無線式のバイブレーションスピーカーとなると、非常に自由に「設置場所の吟味」を行えて実用性が高い。そして愉快。

 たとえば、音楽を再生中のiPhoneをポケットに入れ、手でBTSP10を持っていろいろなところに(BTSP10の底面を)押し当て、音質を確認して歩き回ることができる。もちろん俺も拙宅内の各所で「BTSP10の出音」を確かめて回ったりした。

 BTSP10の好ましい設置場所だが、ある程度硬い対象だと音質も音量も良好になる傾向がある。ダンボール木、木よりも樹脂、というように、密度の高い素材のほうが音がよく響き、音質的にも締まりが出るようだ。

 また、素材自体は密度が高くても、構造が中空になっていると、良く響くがややソフトで聞きやすい音になる気がする。……BTSP10の使用目的を考えると本末転倒なコトだが、BTSP10を箱形のスピーカー上に設置したらアコースティック感がある心地良い音が出たりもした。


音楽鑑賞以外の用途になら、かなり汎用的なBTSP10

 冒頭で「バイブレーションスピーカーの音質は、フツーのスピーカーよりは劣る」と書いたが、BTSP10は予想以上に高音質だと感じた。率直なところ、音楽再生用途にもけっこー使えるかも、と思う。

 BTSP10はモノラルスピーカーだし、機構上「じっくり音楽を堪能する」のには全く向かないスピーカーだ。が、モノラルでもいいし音質もあまり気にしないといった目的なら、十分良好なサウンドだと感じる。たとえばBGMを流すくらいなら、音楽再生用途にも向くと思う。

 それから、音が出るアプリで遊ぶような用途。たとえばスマートフォンやタブレットでゲームをするのに向きますな。端末からの出音に比べたら、ずっと迫力のある音を出すBTSP10。ケーブル接続の煩雑さもないので、エンタテインメント用途にはよく向くと思う。

 もちろん楽器アプリの演奏にも向く。いろいろ試してみたが、シンセ系のサウンドはイイ音が出ますな。とくにベース系シンセサウンドだとヘッドホンより気持ちイイ低音が出ることもある。各人がBTSP10を楽器アプリ入りスマホを持ち寄って、テーブルをスピーカーとしたセッションを行ったりすると楽しいかも。

 ただ、DAW系アプリはBTSP10へ音声出力できないものが多かったりする。ので、音楽系アプリからの音をBTSP10で出そうと考える方は、使用予定のアプリはBTSP10から音声出力可能かどうかを事前に調べたほうがよさそうだ。

 意外に良かったのが、Huluでの動画鑑賞。iPhoneやiPadやAndroid端末などとBTSP10をペアリングし、Huluで映画観るわけですな。ヘッドホンよりは音質が劣るものの、Hulu再生端末を置いたテーブル全体から低音が出て、高音もわりとクリアに出る。ヘッドホンの煩わしさがなく、意外なほど臨場感のあるサウンドが得られるので、映画への没入感がUPして良い。

 とても良くマッチしたのは、radikoでの音声再生。ラジオクオリティのサウンドだと、BTSP10で鳴らしてもほとんど違和感がない。いやむしろ声が聞き取りやすかったり、ラジオより低音がしっかりしていたりして、リッチな感じがする。

BTSP10はいろいろな用途に使える。音楽のBGM的な再生、ゲームや楽器やHuluなどのアプリでの音声再生、radikoなどのストリーミング放送の音声再生など、どれも実用的だった

 ちなみに、BTSP10と音源は、ケーブル接続しても使える。BTSP10付属の専用USBケーブルにはφ3.5mmのステレオミニプラグが付いていて、これを音源側につなげばケーブル接続での音声再生ができる。ので、ヘッドホン出力などがある音源機器なら全てBTSP10につなげられる。

 なお、BTSP10への充電はこの専用USBケーブルで行う。試したところ、一般的なモバイルUSBバッテリーを使っても充電できた。また、充電中でもBTSP10から音声を出力できる。ケーブル接続時もBluetooth接続時も、充電しながら音を出せるってわけですな。

 てな感じで、音楽再生用途あたり幅広く使えるBTSP10。Bluetooth接続やケーブル接続で多彩な音源機器を接続でき、モバイルUSBバッテリーからも充電でき、前述のように手のひらサイズでポータリビリティも高い。なかなかのコナレ感である。

 メーカーは「会議やプレゼン用」としているが、俺的には「音楽鑑賞以外ならイロイロ使える無線スピーカー」という印象であり、汎用性が高い製品だと思う。価格的にもまずまず手を出しやすいレベルなので、興味のある方はぜひ一度チェックしてみて欲しい。


2012/9/3 06:00