カセットテープをMP3に変換するプレーヤー


これがカセットテープを簡単にMP3化してくれるプレーヤー「カセットテープをMP3に変換するプレーヤー」だ。そのままの商品名だ

 カセットテープ。懐かしい響きだ。何を隠そう今では40過ぎのおっさんとなってしまった私だが、厚顔……もとい、紅顔の美少年だったころには「エアチェック」と称してラジオで流れる楽曲をカセットテープに記録したり、あるいはテレビの番組をラジオつきカセットで録音したりしたものだ。テレビの前に鎮座して録音し、周りで見たり食事の支度をしている母に「ちょっと静かにしてよ!」なんて怒って、その声がみごとにカセットに録音されたりもした。

 いやぁ、懐かしい。私が小学生のころから高校時代くらいまでずっと録音や音楽といえばこれだった気がする。今から50~20年前までは、ずっとそうだったはずなのだ。これだけ長い期間使われたデバイスだけあって、一般家庭でも相当なカセットテープが、昔はあった。今でも、家の押入れや納戸をあさってみると、「あ! あのときエアチェックしたカセットテープがあった!」なんて発見をしてしまう人も多いだろう。しかし、カセットテープを発見したとして、そのカセットテープを再生する機械は手元に残っているだろうか? 多くの人はもう手元にその機械がないのではないだろうか。

 それはそうだ、20年前からサンプリングレート44.1kHz、つまり音声を1秒間に44100回も細切れにしてデジタル化し、しかも劣化のないPCMで記録する、コンパクトディスク(いわゆるCD)が「音楽=カセットテープ」だった時代を終わらせ、さらに最近ではそのデジタル化された音楽データをメモリに入れて持ち運ぶMP3プレーヤーやiPodなども、世の中にあふれている。なので、今現在、カセットテープを再生する機械をわざわざ持っている理由は、普通に考えればない。だが、なつかしいカセットテープに入った音を、現在のMP3プレーヤーやパソコンでもう一度聞きたい。なんとかならないだろうか。

内部

 前置きが長くなったが、今回紹介する「カセットテープをMP3に変換するプレーヤー」はカセットテープに入った音を、安価に、手軽にMP3に変換できる機械だ。プレーヤー部分は昔流行った携帯カセットプレーヤー型(カセットウォークマンライクとでも言おうか。ただし外装はかなり安っぽい)。

 MP3化する手順は簡単で、付属ソフトをPCにインストールし、プレーヤーを付属のUSBケーブルで接続、認識されたら、PCでソフトを起動。プレーヤー本体の「PLAY」ボタンを押し、ソフト側では録音ボタンを押す。あとはPCが、曲ごとに分けてMP3をハードディスク上に作成してくれる。

 これで終わりだ。プレーヤーには「リバース再生モード」もあり、このスイッチを入れると自動的にA面、B面両方に入っている音を自動でMP3化してくれる(A→Bのみで、そこからB→Aはしない)。想像していたより単純で、そして手軽にMP3化作業ができるのだ。

 なお、付属の録音ソフトが「曲ごとに分けてMP3を作る」仕組みだが、無音部分がある程度続くとそこでMP3ファイルを分けるようになっている。これは設定で変更し、曲ごとに分けず全て1ファイルにすることも可能だ。

 ただ、ひとつ、ここまで読んで購入してみようかと思ったあなたに助言をしておきたいのだが、分かりやすく言うと、本製品でMP3化されたデータの音質は、再生すると、あなたが思っていたより悪いと感じられるはず。カセットテープに録音してあったものはもっといい音だった、と思うはずだ。記憶の中のその音楽は、時代を経て心の中で美化されてしまっているのだ。現在手元にあるアナログのカセットテープは、録音当時は今よりもはるかにレベルの低い音だったし、現在ではさらに磁気など劣化している。ある程度売れたヒット曲などであればリマスタリングされたCDが販売されているので、もしそんな音楽を聴きたいなら、筆者はCDを買うことを薦める。
 
 筆者が試してみたところ、このプレーヤー(と変換)に向いているのは、楽曲のMP3化ではなく、懐かしく、ノイズですら歓迎できるようなものだ。例えば筆者では、語学教材などがそれにあたる。筆者の兄弟が昔使っていたという、TOEIC対策のテープを本製品でMP3化したのだが、全く問題ない音質で聞くことができた。通勤・通学電車の中で、ヒアリングテストをしてみたい場合は、これで問題ないだろう。

 また、ラジオ番組をエアチェックしたものなどもそれに当たる。筆者は、今から35年ほど前に録音した深夜ラジオ番組「夜はともだち」や「電話好きっ娘ラジオっ娘、男の子には内緒なの!」(←そういう名前の番組が存在し、筆者は恥ずかしくもそれを聞いていたのである)などの録音テープをMP3化して聞いてみたのだが、これはかなりいい(笑)。懐かしい。ラジオのノイズだらけのトーク番組がフェージング(ラジオの音が時間によって大きくなったり小さくなったりする現象)も含めて再現されており、筆者の心は思わずタイプスリップした。

 これらのケースにあたるような内容をMP3化したいというなら、この「カセットテープをMP3に変換するプレーヤー」は絶対にお勧めだ。特に、当時のラジオのエアチェックなどを再び聞くことができれば、懐かしさに涙を流すことだろう。

商品の構成は、プレーヤー、USBケーブル、ソフト、説明書類。かなりシンプルだ
操作は、このようにPCとプレーヤーをUSBケーブルでつなぎ、プレーヤーの「PLAY」スイッチ、ソフトの「録音」スイッチを押すだけ。なんともお手軽だ付属ソフトの画面。赤い録音ボタンで録音、黒でストップ。MP3を曲ごとに分割するなら分割を「無音部分で分割」に、そうでない場合は「手動で分割」に。ちなみに語学教材などは「無音部分で分割」で、問題ごとに分割できる

 

製品名販売元購入価格
カセットテープをMP3に変換するプレーヤーサンコー2980円

 

 

(大和 哲)

2011/6/17 06:00