「精細」になった新しいiPad


左が初代、右が新しいiPad

 新しいiPadの登場である。各メディアではもうずいぶんとレビューが掲載されているが、当コーナーでも改めて簡単に紹介したい。先日の製品発表では「全く新しい次元」「最初のiPadが作ったカテゴリーを再定義する」と紹介された。どこまで革新的内容なのか見ていこう。

 メインプロセッサには4コアの「A5X」という新型が採用された。フロントカメラは500万画素の裏面照射センサーと、「iPad 2」から大幅に強化され、HD画質での動画撮影も可能になった。話題の音声アシスタント「Siri」には対応していないが、テキストについては音声入力ができる。この原稿の作成にあたり試してみたが、認識精度の高さは実用に耐えるレベルだ。

 最大の特徴はなんといっても高精細なRetinaディスプレイを採用したことだろう。精細という言葉以外に形容できない語彙の少なさが恨めしく感じる。以前デジカメで撮った写真を取り込んでみて、自信の一枚だったはずの写真のピントが実は甘かったことに気付かされてがっかりすることも多く、嬉しいやら悲しいやらである。

 文字の読みやすさは秀逸だ。“自炊”して電子書籍化した本を読んでいて気が付いたのは、読み終わるスピードが以前よりも速くなっていること。購入当初は気が付かなかったのだが、読みやすさが影響しているのだろう。新聞社の、紙面レイアウトのまま読めるアプリでは、記事を拡大せずに苦もなく読める。毎朝とっている新聞をやめて、アプリ版に移行しようと真剣に検討している最中だ。

 残念なことに、ディスプレイの精細さを、ディスプレイごしに伝えることは大変難しい。拡大してもジャギーの見えないフォントを撮影してみたが、これだけ見せられてもピンとはこないだろう。どうか店頭で実際に見て確認してほしい。

 地味ながらも旧機種から改善している点は、iPhoneアプリの拡大表示機能だ。iPhoneのみに対応しているアプリをiPadで使用する場合、画面中央に小さく表示するか、拡大表示機能を使うしかなかったのだが、従来の機種では拡大時に輪郭が荒くなるジャギーが目立ち、実用に耐えるものではなかった。新しいiPadでもジャギーは残るものの、かなり綺麗に拡大できるので、iPhoneにしかなかった便利なアプリも実用できるレベルになっている。

 さて、この製品が「全く新しい次元」のものかと問われれば、筆者はそう思わない。初代iPadを横に並べてみれば、新型のその美しさは際立つが、初代iPadも単体で見れば十分精細で見やすい。利用シーンも、初代と比べて大きく変化することはないだろう。ただし、一度新しいiPadに触れれば、もう旧製品には戻れなくなる。大きなRetinaディスプレイにはそれだけの魅力がある。実物を見れば、虜になることは受け合いだ。

 また、購入時に無料のレーザー刻印サービスを利用するのも一興だろう。筆者はSiriをもじったジョークを刻印してみたものの、新しいiPadでは「Siri」が使えないことに気が付いたのは発注後だったのは、ここだけの話にしていただければ幸いだ。


Safariで文字を拡大表示。こちらは初代で、文字のギザギザが見える新しいiPadはギザギザが見えない
内蔵カメラで撮影。大きな画面で撮影するのは妙に楽しいせっかくなのでレーザー刻印サービスを利用した。が、iPadではSiriが使えなかった……

 

製品名製造元購入価格
新iPad Wi-Fiモデル(64GB)Apple5万8800円

 

(ナカムラ)

2012/4/2 06:00