高速な表示速度が特徴の電子書籍リーダー「Cybook Odyssey」


フランスから来たeBOOKリーダー、「Cybook Odyssey」

 僚誌PC Watchを眺めていたところ、E-inkディスプレイを利用した海外製の電子書籍リーダーの紹介記事が掲載されていた。そのうちの一つ、フランスのBOOKEENという会社から発売されている、「Cybook Odyssey」という端末に心惹かれたのでさっそく取り寄せてみた。フランスからの発送にも関わらず、発注から3日で届いたので早速紹介したい。

 「Cybook Odyssey」はE-inkディスプレイを利用した電子書籍リーダーで、AmazonのKindle、楽天のkobo、ソニーのReaderなどの競合に当たる。E-inkディスプレイの解像度は800×600ドットで、競合製品と同じ。重量や厚みなども大きく異なる部分はない。最近の電子書籍リーダーは暗いところでも読めるようにLEDライトをディスプレイに内蔵するのがトレンドになっているが、「Cybook Odyssey」には内蔵されていない。

 この製品が他の製品と差別化をはかっている部分は何かというと、処理速度だ。High Speed Ink System、略して「HSIS」と銘打たれた表示システムなのだが、これが驚くほど快適な「めくり速度」を実現している。EPUB形式で出力した青空文庫を表示してみると、その素早い動作に驚いた。ページめくりボタンを押しっぱなしにすると、画面のリフレッシュをせずに次々とページがめくれるのだが、その速度は実際の本をめくっているかのようだ。

 タッチ操作に対応しており、画面をさわったときの反応も速い。また、タッチの領域が直感的で、めくる動作・メニューを呼び出す動作などが、非常にわかりやすい。これを触ってしまうと、他の端末は一段も二段も劣ると感じてしまう。

 そのぶん端末価格は199ユーロと、他製品に比べるとやや高い。一方、日本から端末を購入するためオンラインストアにアクセスすると、為替レートに応じて日本円で価格が表示される。筆者の購入時は1万5900円だった(日本への送料が別途2350円必要)。この点では円高のありがたみを感じる。

 一方、紙をスキャンして“自炊”した電子書籍のリーダーとしての実力は、低いと言わざるを得ない。ページの連続めくりやタッチ操作時の反応は申し分ないが、めくる方向の変更ができないため、日本語書籍(縦書)を読むのにはちょっとつらいのだ。日本語を埋め込んだPDFファイルの表示は問題ないが、PDFファイル自体の処理速度は、他の端末と同程度だ。

 またこれは日本語・外国語を問わないが、ページめくりボタンが左(戻る)、右(進む)に1つずつしかないため、電車でつり革を握っている時など、片手で端末を持っている場合、ページを戻すためには無理して指を伸ばすか、端末を持ち替える必要がある。Kindleではボタンが2つずつあり、またkoboでは逆方向に画面をスワイプすればページが戻るなど、片手で済む工夫がしてある。高性能であるにも関わらず、操作で使いづらいくなるのは残念だ。

 なお、技適マークは取得されていないので、国内でWi-Fiは利用できないが、他の製品と同様にUSB接続でコンテンツの転送が可能。「自炊」コンテンツの転送には問題がない。端末には海外の著作権の切れた作品の電子書籍が予め入っているのだが、国際仕様のためか、同じ本でもメーカーの母国であるフランス語の他、英語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語版の書籍が入っているのがユニークだ。いよいよAmazon Kindle 日本版の上陸前夜とささやかれる昨今だが、正式に日本市場に対応した、フランスからの黒船という展開を期待したくなる一品だ。


第4世代Kindleと比較。サイズ・重量ともほとんど差はない個人差はあるだろうが、日本語表示はKindleの方がやや読みやすく感じる
加速度センサーがあるので、端末を横にすると表示も自動的に切り替わる本体下部に電源ボタン、microSDスロット、USBポート、イヤホンジャックを備える。技適マークがないので日本国内ではWi-Fiは使えない

 

製品名製造元購入価格
Cybook OdysseyBOOKEEN1万5900円

 

(ナカムラ)

2012/10/10 06:00