本日の一品

Mマウントの薄~い交換レンズを探して出会った、ペラール35mmレンズ

簡易なパッケージと手作りレンズ、手書きスペックシート&取説。日本にはこういう誠実な作りの商品が減ってしまった

 筆者は、親父がカメラマニアだったので小さな頃からカメラは見慣れていたが、自分では“写れば良い”程度の感覚で昔買った安物カメラを長く使っていた。しかし、簡単にパソコンと連携できるデジタルカメラの登場で、写真を撮るということとは別の側面で強い興味を持つようになった。

 カシオQV-10の登場以来、何十台ものデジカメを買い替えてきたが、撮影の結果である写真そのものには、相変わらずそれほど強い興味もなく、噂に流されて次々と高画素カメラを買い換える典型的なミーハーユーザーだった。

 その後、年に2回もモデルチェンジするデジカメの変化やテクノロジーの進歩を追いかけるのが面倒になった。あくまで筆者の場合ということで、このあたりは個人差もあるだろう。そして、モデルチェンジがきわめて少ない、あるいは大きなコンセプト変更の少ないカメラに惹かれるようになっていった。

 個人的な好みの問題は別として、趣味性の強いモノには歴史と伝統、商品クオリティが伴った究極のプロダクトが必ず2~3点はあるものだ。たいてい値段は非常に高いが、それだけの価値はあると認知されている製品だ。

 そんなこんなで、スカイツリーから飛び降りたつもりでライカのデジタルカメラLeica M(Type240)を買ってしまった。ほぼデジカメしか知らないウルトラ素人がすぐに使えるほど生やさしいカメラではなかったが、慣れとは恐ろしいモノで、やっとこさ高校の写真同好会1年生並みにはわかってきた。

 当然、ライカにはバランスのとれたメーカー製のレンズがピッタリだとは思うが、ただでさえ大きなカメラがレンズを付けることでモビリティとはほど遠い世界に入ってゆくのも多少残念だった。

 約半年間、ライカで使える薄くて小さなレンズを世界中のWebサイトを探していて、最後に「MS-OPTICAL Super Triplet II PERAR(ペラール)3.5/35mm」(以降:ペラール)という長い難しい名前のレンズを見つけゲットした。

レンズ本体と、前後のキャップ、レンズフードが付いてくる
沈胴状態をやや側面から見ると昨今国内でも流行のボディキャップ・レンズだ
撮影のためにレンズを指先で引き出し回転して固定した状態はこんな感じだ

 送られてきたパッケージを見て、ライカ幼稚園生の筆者はぶっ飛んだ。完全手書きコピーのスペックシートと取説、手作りイメージの35mmレンズが薄いボール紙製の白いパッケージに入って送られてきた。

 昨今はWebサイト上のどんなに小さなショップで安価なモノを購入しても、格好良すぎるパッケージに入って送られてくることが多い。そのため、かえって宮崎光学(MS Optical R&D)という超個人企業の対応は印象的だった。

 同じ35mmレンズでもペラールは、構造の違いなのかきわめてコンパクトだ。レンズの胴体部分を捻ってカメラの胴体に落とし込めば(専門用語では“沈胴”というらしい)、そのコンパクトさとモビリティはさらに増す。

一般的な35mmレンズ(右)と比べるとペラール(左)のコンパクトさが光る
筆者のカメラに取り付け、沈胴させると出っ張りはメチャ小さい

 しかし、なぜか沈胴させた状態では、レンズは固定できず多少ガタガタする。ICT系の常識で洗脳されている筆者の脳みそではその不都合が理解できず、精密製品とは思えず、早速メーカーに聞いてみたところ、キッパリと「仕様」だと言う気持ち良い返事を頂いた。

 確かに撮影時には確実に固定できるのでカメラの目的を達成する上では何の不都合もない。限定数量の手作り品であったペラールは、既にオークション市場以外にはほぼ存在しないが、そのクオリティと個性、不要なサービス過剰や商品のコンセプトを見失う商品思想が溢れる現代には多くの事を考えさせてくれる珠玉の逸品だ。

好き嫌いの個人差はあるが、撮影結果に関して筆者は非常に満足している
製品名製造販売場所価格
MS-OPTICAL Super Triplet II PERAR(ペラール)
3.5/35mm
宮崎光学
(MS Optical R&D)
米国のオークション約9万円

ゼロ・ハリ