本日の一品

バッファローの無線高速化技術「ビームフォーミングEX」の実力

 現在発売中のバッファローの無線LANルーター「WZR-1750DHP2」が、「ビームフォーミングEX」という新たな機能に対応したという(ファームアップデートにより対応)。無線LANの高速化を狙うべくビームフォーミングに注力してきたバッファローだが、無線LANの規格IEEE 802.11ac(以下11ac)に限られていたこの技術を、なんと独自の工夫によって同製品の5GHz帯の11nで実現し、ビームフォーミングEXと命名した。果たして速度に違いはあるのか、さっそく試してみた。

バッファロー「WZR-1750DHP2」
4つの有線LANポートとUSBデバイスサーバー機能を備える

 ビームフォーミングEXについて詳しくはこちらの記事をご覧いただきたいが、改めて簡単に説明すると、もともとのEXではない「ビームフォーミング」は、無線LANにおける11ac規格のオプションとして定義されている技術。モバイル端末など無線機器の場所に応じて無線電波を最適化し、距離が離れていたり障害物が途中にあったりしても効率的に電波を届けられるようにする仕組みだ。

特別なアプリなしでスマホから簡単に接続設定できるAOSS2機能も特徴
本体底面に初期設定値が書かれたカードが仕込まれているのが、なにげに便利

 これまでは11acでのみ利用できたこのビームフォーミングを、iPhone 5/5s/5cやiPadなど、11nまでにしか対応していないモバイル機器でも利用できるようにしたというのが、ビームフォーミングEXというわけ。

 ということで、所有しているiPhone 5などを使用して筆者の自宅で速度計測してみた。木造2階建ての古い一軒家で、固定回線は上り・下り最大1Gbpsの「auひかり ギガ得プラン」。WZR-1750DHP2はauひかりの終端装置と同じ2階の隅に設置しており、計測場所は最も電波の届きにくいであろう1階の対角にある部屋とした。

なかなかにボロい我が家で計測
2階の隅に設置。手前の2台はauひかりのONUとホームゲートウェイ

 使用したツールは、iPhone/Android版のアプリ「RBB TODAY SPEED TEST」と、PC Web版の「RBB TODAY GIGA SPEED計測(ベータ版)」。参考までに、同じく11ac準拠でビームフォーミングにも対応しているApple Time Capsuleでも同様の条件で測定し、iPhone以外にMacBook Air(11ac対応)とAndroid端末(11n対応でビームフォーミングEX非対応)でも測定した。結果は以下のグラフの通り。

インターネット通信速度計測結果グラフ

 まずビームフォーミングEXをオンにした状態とオフにした状態では、ダウンロード速度で20Mbpsほどの差が出た。アップロード速度はほとんど変わらなかったが、ビームフォーミングEXの効果は間違いなくある、ということだろう。

 ビームフォーミングEXを搭載していないTime Capsuleで通信したのと比べると、こちらも主にダウンロード速度に決定的な差がついた。5GHz帯は電波が混雑していない分高速に通信しやすいと言われるが、障害物には弱いとされている。今回は家の隅から隅、ということで、ビームフォーミングEXを搭載していないTime Capsuleには障害物の影響がはっきりと出たようだ。

 2.4GHz帯で比べれば、WZR-1750DHP2とTime Capsuleでほぼ同等であることからも、宅内でも離れた場所で通信する場合は、11n対応機器では5GHzよりも2.4GHzにした方が快適になるケースもありそうだ。もちろん、MacBook Airの結果を見る限り、絶対的に高速な11acに対応しているならそれを使うに越したことはない。

 一方、ビームフォーミングEX非対応のAndroid端末とは、もはや比較にもならない差になってしまっている。こういった端末でも家の隅々まで快適に通信できるようにしたいなら、やはり無線LAN親機の中継機能を使うなどして電波の範囲を広げた方がいいだろう。WZR-1750DHP2も中継機能を備えているので、金銭的な余裕があれば2台構成にしたいところだけれど……。

 近頃の家庭向け固定回線でも1Gbps超の接続サービスが徐々に広がり、「auひかり ギガ得プラン」以外にもNTT西日本の「フレッツ 光ネクスト ファミリー・スーパーハイスピードタイプ 隼」などが最大1Gbps、So-netのNURO光に至っては提供範囲が関東に限定されているとはいえ、下り最大2Gbpsにまで達している。

 ただ、固定回線がいくら高速化しても、それに接続して利用する端末の性能が追いついていないと本当の実力は発揮できない。無線LAN親機もモバイル端末も、11ac(+ビームフォーミング)に対応しているのが今のところはベストかもしれないが、両方とも対応している機種をそろえるとなると、さすがにまだ選択肢は少ない。

 そういう意味で、バッファローが今回実現した5GHz帯の11nで使えるビームフォーミングEXは、なんとなく“裏ワザ”チックな雰囲気はあるものの、かなり実用的で現実的な対応方法ではないか、と思った。筆者の自宅にはノートPC 2台にスマートフォン、タブレット、ゲーム機などがあるが、それらで複数同時に通信しても速度が落ちにくいギガクラスの高速回線を、これからはもっと有効に使えそうだ。

製品名製造元購入価格
WZR-1750DHP2バッファロー1万6500円

日沼諭史