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親指トラックボール界に期待の新星登場! エレコムの「M-XT1DR」

 トラックボールという入力デバイスは、ご存じの通り(あるいは存在自体をご存じでない通り)とてもマイナーなものだ。当欄で何度かご紹介させていただいているが、普及する兆しは見えない。それでも紹介するのはとても優れた道具であるからなのだが、主軸になり得ない製品なのでなかなか新製品が出ない。それでもありがたいことに定期的に発売されるので、トラック野郎を増やす為にも紹介は続けたいと思う。今回の新製品はエレコムから発売のEX-G トラックボール・M-XT1DRシリーズだ。

トラックボール界期待の新星「EX-Gトラックボール M-XT1DRBK」

 M-XT1DRBKとM-XT1URBKの2種がラインナップされているが、前者が無線・後者が有線というだけで機能は同一だ。今回は無線モデルを購入した。2.4GHz帯を利用する無線式で、小型の専用USBレシーバーが付属する。1円玉くらいのサイズで場所をとらず、このあたりは近年のトレンドを押さえた作りだ。

 ポインターを動かすトラックボール部分は親指のみで動かすタイプのもの。この機種では人差し指に左クリック、その左にボタンを二つ、中指に右クリック、薬指のボタン、スクロールホイールの押下と左右を含めると合計8つのスイッチを配している。このあたりはLogicoolの名機、M570tに近いものがあるが、薬指とホイールの左右が追加されていて、差別化がはかられている。オムロン製の高品質スイッチを使用しているとの事で、耐久性は良さそうである。手を乗せると自然と指が各所に配置され、無理なく動かすことができ、乗せ心地もよい。

手が自然と目的の位置に、無理なく置かれる形状になっている

 ところで、近年のPCモニターの大型化は、実はトラックボールとの相性が悪い。端から端まで快適に移動するにはカーソルの移動速度を上げる必要があるが、細かい作業をするには逆にその速度がアダになるというジレンマがあるのだ。それに対するM-XT1DRシリーズの解はスイッチによる切り替えと、薬指の「減速」ボタンだ。

単三電池1本で動作。背面の電源スイッチが、省電力モード・ハイスピードモードの切り替えも兼ねる。USBレシーバーの収納スペースもある
人より大きい筆者の手でも、はみ出さず自然に使える

 スクロールホイール下にある切り替えスイッチは、分解能を750/1500に切り替えができる。スイッチによる切り替えは目新しくないが、もうひとつの「減速」ボタンは白眉といえる。薬指のボタンはユーティリティーによる割り当てができない、「減速」機能が配されているのだが、この薬指のボタンを押している間だけカーソルの移動速度が下がるのだ。これにより、スイッチ切り替えは煩わしい、少しの間だけ細かい作業用に速度が落ちてくれればよいというニーズに対応している。少々慣れは必要なものの、これがなかなか快適なのだ。

ユーティリティソフトの設定画面。ホイールの左右にも機能を振り分けられるので、合計7個のボタンが割り当てできる

 道具として見ると、習熟が必要という点で万人向けではない製品だ。なんといってもほぼ右利きの人専用で、ユニバーサルデザインとは言い難い。使う側にスキルを要求する道具というものがはたして良いものかという議論はあるだろうが、一度慣れたときの生産性向上には目を見張るものがある。一度試して欲しいと気軽に言える金額ではないが、店頭で短時間試して良さが分かる類の製品でもない。ただ、試練を乗り越えた先に得られる効果は価格以上のものがあると考えて頂いて差し支えない。この製品により、また少しでもトラック野郎が増えてくれることを切に願うものである。

製品名販売元購入価格
EX-Gトラックボール M-XT1DRBKエレコム4881円

ナカムラ