本日の一品

アプリやリモコンが新しくなった「Apple TV」

Apple TV

 Apple TVはテレビで各種コンテンツを楽しむという、いわゆるセットトップボックス(STB)のような製品だ。名前の通りアップル製で、iPhoneやMac、iTunesなど、ほかのアップル製品やサービスと相性が良いという特徴を持っている。10月末に第4世代となる新モデルが発売された。

 新モデルの最大の目玉は、App Storeからアプリをダウンロードして追加できるようになったことだ。ただし、iPhone/iPad向けアプリがそのまま使えるというわけではなく、Apple TV向けアプリのみが使える。発売直後の執筆時点では、配信アプリの数はまだまだ少ない。

App Store

 たとえば動画配信サービスであれば、YouTubeやNetflixなど国外の大手だけでなく、国内ではバンダイチャンネルなどがApple TVに対応したアプリを提供している。しかしHuluやdアニメストア、ニコニコ動画などのアプリはまだ登場していない。ゲームアプリでは、大手としてはゲームロフトのレースゲーム「アスファルト8」などがあり、個人製作ゲームも登場しているが、やはりまだまだ数が少ない。

YouTubeアプリ
バンダイチャンネルアプリ

 ちなみにアプリによっては、iPhone/iPadで購入したものはApple TVでも「購入済み」扱いになる。筆者は「BADLAND」というゲームアプリをiPhone/iPadで購入していたため、Apple TVでは無料でダウンロードできた(本来は有料)。ただし、iPhoneとiPadでアプリを別売りしているケースもあるので、iPhoneで買ったからといってApple TVでも購入済み扱いになるとは限らないはずだ。

 ブラウザやメール、カレンダー、マップなど、スマホでお馴染みのアプリは、Apple TVには搭載されておらず、FacebookやTwitterといったSNS系アプリも配信されていない。そうしたパーソナルなアプリはApple TVではなくスマホで使え、ということなのだろう。

ヤフオク!などのアプリもApp Storeで配信されている

 App Storeではヤフオクなど一部ショッピング系アプリが配信されていたりするので、買い物はApple TVでできるようだ。しかしパスコードロックなどはないので、家族で共有しているときは、不用意にアカウントを登録しない使い方が良いかも知れない。

 なお前モデル同様、iPhone/iPad/Macの画面をApple TVでテレビに映す「AirPlay」に対応しているので、Apple TVで配信されていないアプリもテレビで楽しめる。Macの場合、拡張デスクトップ画面としても使える。

iPhone 6sの画面をApple TVに転送すると、上下左右に黒枠が入る
画面比率が3:2のiPadだと左右の黒枠が大きく、非常に無駄が多い感じ

 付属の標準リモコンは「Siri Remote」という名の新型に変更されている。Siri RemoteはApple TVとBluetoothで接続し、本体上部のタッチパッドでいろいろな操作ができるようになっている。

 このSiri Remoteのタッチパッド、操作感がなかなか良い。筆者は普段からMacのタッチパッドを使っていて、アップルのチューニングに慣れているせいもあるが、すぐに慣れてサクサク操作できるようになった。

左が新リモコン「Siri Remote」。右は赤外線方式の旧リモコン

 Apple TVのプロセッサ「Apple A8」は、iPhone 6/6 Plusに搭載されているもの。いわば1世代前のものだが、シングルタスク中心のApple TVでは性能十分なようで、メニュー操作時に素早く指を動かしても、動作レスポンスにもたつきは感じられない。ゲームもPS2というよりPS3レベルだ。

 Siri Remoteには加速度センサーとジャイロセンサーが内蔵されていて、傾きを検知することができる。たとえばゲームロフトのレースゲーム「アスファルト8」はリモコンを傾けてハンドル操作するのだが、そこそこの反応速度で快適なゲームプレイが可能だ。

「アスファルト8」。この画質でヌルヌル動く

 ゲームコントローラーとして、Made for iPhone(MFi)認証を受けたサードパーティーの製品も利用できる。筆者が所有しているSteel Series製「STRATUS」は、とくにApple TV対応は謳われていないが、Apple TVに接続してメニュー操作やゲーム操作に利用できた。

 ただし、現状配信されているゲームは、Siri Remoteでのプレイを前提としてデザインされた、比較的シンプルな内容のものがほとんどなので、ゲームコントローラーを使ってもゲーム体験は大きく変わらない。また、STRATUSは原因不明の操作ラグがあって、むしろSiri Remoteの方が快適という場面も多かった。

ホームとなる画面。いろいろなアプリ・コンテンツがタイル状に並んでいる

 Siri Remoteの操作感はおおむね良好なのだが、文字入力だけはどうしようもなく使いづらく感じられた。コミュニケーション系のアプリはないので、文字入力はパスワード入力や検索時などに限られるが、パスワードを家人に見られやすいテレビ上で入力するのは良くないし、検索はいろいろなアプリで使う機会がある。このあたりはアップデートでの改善を期待したいところだ。

文字入力画面。かなり使いづらい……

 また、Siri Remoteはマイクを内蔵していて、その名の通り、iOSデバイスでお馴染みの音声エージェント機能「Siri」を使うことができる。といってもApple TV自体はブラウザもメッセージもカレンダーもないので、できることは非常に限られている。情報検索も天気予報や株価くらいで、「メガロドンの写真が見たいんだ!」と訴えてもiPhoneやiPadのようにWebを検索してくれない。ここも今後の強化を期待したいポイントだ。

Siriでは天気予報や株価検索などが利用できる
新Apple TV(上)と旧Apple TV(下)。だいぶ分厚くなったが、光デジタル端子はなくなっている

 Apple TVはほかのアップルの製品やサービスとの相性が抜群に良く、iPhoneやMac、iTunesをメインに使っている人にとっては、高い価値のあるデバイスだ。しかし逆に言うと、ほかのアップル製品やサービスと組み合わせないと、その真価を発揮できないデバイスでもある。Androidスマホのユーザーであれば、Nexus PlayerやChromecastの方が使いやすいことが多い。

 また、iPhoneをすでに使っているという人は、「Lightning-Digital AVアダプタ」(税別5800円)でiPhoneをテレビに直結すれば、Apple TVと似たようなことはできてしまう。有線接続なので、頻繁な操作が必要なコンテンツには不向きだが、Apple TVよりも安上がりなので、大画面テレビでコンテンツを楽しみたい人は、こちらも選択肢に入れておくべきだろう。

 正直なところ、現状ではアプリがそれほど充実していないので、「Apple TVは買いだっ!」とは言えない。しかし今後App Storeが充実し、さまざまなアプリをApple TVで楽しめるようになれば、面白いデバイスになっていくと思う。今後のアプリの盛り上がりに注目したい。

製品名販売元購入価格
Apple TV(第4世代) 32GBアップル1万9872円(税込)

白根 雅彦