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電話ボックス、第二の人生

KDDI総研 藤原正弘
 KDDI総研調査2部。専門は情報通信全般の社会・経済分析ということになっている。コンテンツ産業の研究もようやく成果がまとまり『コンテンツ産業論 〜混淆と伝播の日本型モデル』(出口弘、田中秀幸、小山友介編、東京大学出版会)として昨秋出版された。


 最近、新宿や渋谷といった都心のターミナル駅でも公衆電話はすっかり目につかなくなってしまった。ちょっと前まではコンコースにずらっと並んでいたのにすっかり様子が変わった。

 公衆電話の需要が陰ってきたのは、もちろん携帯電話の普及によるところが大きいためで、これは日本に限ったことではない。むしろ、携帯電話の普及率が高い欧州のほうが、公衆電話が消えていく速度が早いのかもしれない。

 欧州でおもしろいと思ったのは、使われなくなった公衆電話ボックスが第二の人生を送ることがあるという話だ。

 1つめは、幸せそうな余生。ロンドンの西200kmくらいのところにあるウェストバリー=サブ=メンディップという人口800人くらいの小さな村。この村では、廃棄される電話ボックスをBTから1ポンドで買取り、小さな図書館として使うことにした。図書館というと大げさだが、日本では俗に「駅文庫」と呼ばれるような、市民が読み終わった本やCD、DVDを持ち寄り、まだ読んでない人が気楽に借りて読める、そんなコーナーだ。詳しくはこちらを。

 BTはイギリスの各地で電話ボックスを払い下げており、その活用方法を競うコンテストも行われたようだ。そこで入賞した中には、市民が使える小さなギャラリーみたいな使い道が多かった。ウェストバリー=サブ=メンディップも入賞していて、500ポンドの賞金をもらっている。

 2つめは、やや残念なことに、電話ボックスが喫煙場所と化しているケースだ。世界的な禁煙・分煙の流れの中で、タバコが吸える場所はどんどん隅に追いやられている一方で、あまり使われなくなった電話ボックスは、愛煙家にとって限られた砦となっているところがあるようだ。こちらはオランダの電話ボックスの写真だが、こんな電話ボックスは珍しくないのかもしれない。

 最後に紹介するのは、これは活用方法という範疇ではないが、ちょっとした水族館というか、大きな水槽にしてしまった試みがある。これはフランスのリヨンのフェテ・ド・ルミエールというキラキラしたお祭りに出品された芸術家の作品なのだが、街なかの電話ボックスの中で、金魚がぷわぷわと漂っているのだ。こちらの写真を見る限り、彼らは公衆電話には興味はないようだ。

 世の中にはもっと奇想天外な使い道があるのかもしれないが、ここで紹介したのは、それぞれ第二の人生を歩んでいるだけ幸せなのだ。たまたまかもしれないが、今回紹介した例では、最初の人生は極めてプライベートな空間として親しまれていたものが、第二の人生では、人々が集ってくる場所として再出発しようとしている。常に扉の開いた電話ボックスは新しい時代のポータルになるかもしれない。

(藤原正弘)

2010/1/27 11:00


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