世界のケータイ事情

テレコムの夜明け in ミャンマー

日本車の多い道路(筆者撮影)

 ミャンマー連邦共和国は、東南アジアに位置し、インド、中国、ラオス、タイ、バングラデシュと国境を接する。通称はミャンマー。成田空港からヤンゴン国際空港まで直行便で約7時間。

 空港に降り立ち、市内に向かうため、まずは車に乗った。自動車は日本と反対で右側通行であるが、ハンドルは日本と同様に右側についていた。窓から外を見ると街を走る自動車の多くが日本車。バスに至っては日本語の表記があったり、日本で走っていたときのデザインのままだったりする。そう、中古の日本車を輸入しているのである。9割くらいは日本車ではないだろうか。

 ところで、今、携帯電話の人口普及率が約10%のこの国で通信環境が大きく変わりつつある。入手が困難なSIMカード(電話番号と結び付ける固有のIDが記録されたICカード)は市場で値段が上がり、1990年代はSIMカードの価格が1枚50万円程度! その後、徐々に値下げはあったが、数年前で30万円程度と平均所得が月8000円程度のミャンマーでは一般にはなかなか手に入れられないものであった。ところが、2011年頃から大幅に価格が低下しはじめ、今では1500チャット(日本円で約150円)で一般の販売店で入手できるようになった。

SIMカード、クレジットカード程度の大きさのカードから切り離して(左側中央部分)、携帯電話に差し込んで使用する(筆者撮影)

 私でも買えるくらいの価格となったSIMカードであるが、残念ながら1500チャットのSIMカードを購入できるのはミャンマー国民だけである。ダメもとと思いながら、ケータイショップに足を運ぶ。価格を聞くとカードは1枚1万5000チャットとのこと。よく見ると“0”がひとつ多い。ケータイショップでは10倍の値段で売られていたのであるが、これにはある事情があった。

 一般の人の手に届く価格になったのは、つい最近のことで、ほとんどの人はこれまで欲しくても買えなかったのである。そのため、手に届く価格でSIMカードが売り出されれば販売店の前に長蛇の列ができ、たいていの場合は抽選を経て即日完売の状態。この店では入手したSIMカードにプレミアを付けて販売しているのである。SIMカードを入手しやすくなったものの、今でもいわゆるSIMカードの闇取引市場らしきものが形成されているのである。しかも、こそこそ売っているのではなく、普通のケータイショップで昼間から正々堂々と売っていて外国人も買える。

 買いやすくなったせいか、携帯電話をいろんなところでよく見かける。それもスマートフォンだ。私が入ったケータイショップで売っていた携帯電話はほとんどがスマートフォン、街中で見かけるのもスマートフォン。メーカーはサムスン、LG、HTC、ASUS、ファーウェイなど、機種はさまざまであるが、アジアメーカーのAndroidが主流。日本で人気のiPhoneもここではAndroidに圧倒されている。

金ピカの寺院、「シュエダゴンパゴダ」(筆者撮影)

 このようなSIMカードの大幅な価格低下に加え、競争の導入といった変化もある。これまではミャンマー情報通信省が運営する「MPT(ミャンマー国営郵便・電気通信事業体)」のみが携帯電話サービスを提供していたが、新規参入したノルウェーのTelenorとカタールのOoredooが今年に入ってサービスを開始。今後、ミャンマー国内でISP事業などを展開しているYatanarpon Teleportも参入予定であり、さらなる競争の活発化も予想される。

 一方、MPTもこれを迎え撃つべくKDDI、住友商事と組んでそのサービスを一新することとしている。今後はこれらの事業者間の競争の下、料金競争だけでなくサービスの高度化も期待でき、多くの国民が世界とつながる日もすぐそこである。テレコムの夜明けは今始まった。

KDDI総研 日野高志

 KDDI総研調査1部。8月末に初めて訪れた後、いったん日本に戻り、一週間後に再度訪問することになったミャンマー。街中にある金ピカの寺院“シュエダゴンパゴダ”の美しさに圧倒される。