世界のケータイ事情

アメリカンテイスト

 アメリカ中西部、ミズーリ州東部の都市セントルイスに行ってきた。セントルイスは今年で生誕250年。アメリカ合衆国建国よりも古く、かつては中西部のハブとして栄えた都市である。1904年には、アメリカ大陸初のオリンピックと国際博覧会開催で一気にインフラも整備され繁栄したが、第二次世界大戦後に状況は一転。市内の空洞化・スラム化が進み、最盛期から比べると、人口は約1/3となり、2014年、全米で最も危険な都市ランキング5位をマーク。

 今年8月には、セントルイスの隣ファーガソンで白人警官により黒人青年が射殺され、暴動が勃発。軍隊が出動するまでに。訪れた時も、地元の新聞ではファーガソン特集ページが設けられ、日々の様子が掲載されていた。一時暴動は沈静化したというものの、11月末には、警官が不起訴となった事で暴動が再燃。今もなお、あちこちでデモや集会が行われている。

 滞在期間中、いつでも家族と連絡がとれるよう、現地で携帯を調達することにした。早速、一番近くのモールにあるAT&Tのお店にいってみた。

 店に入ると、セキュリテイを兼ねているスタッフなのだろうか、販売員に似つかわしくないスーパーマッチョな男性スタッフが入口でタブレット端末を片手に受付をしてくれた。呼ばれるまで店内でお待ちくださいと言う。とりあえず、SIMフリー端末は持っていないので、プリペイド携帯を買うことに。プリペイド携帯は6種類ほどのラインナップがあった。通話のみ携帯(フィーチャーフォン)だと、本体価格14.99ドル~。スマホだと安いものは59.99ドル~。通話のみでもよかったのだが、やはり不慣れな土地では地図アプリは必須、観光地情報も欲しいと、スマホを選択。端末価格が100ドル以下のスタイリッシュなWindows Phoneがよさそうだったが、通常使用しているGoogle Voice, Hangoutが非対応だったこともあり、また旅行中で気が大きくなっていたのか、100ドルも追加して別のAndroid端末を選択。うっかり散財してしまった(一応、再渡米の予定があるかもしれないし……)。

 プリペイド携帯のいいところは、契約期間の縛りなし、SSN(社会保障番号)はもちろん、個人ID(免許証等)もいらない。滞在している住所と連絡先(メールアドレス)、クレジットカードがあれば即購入できる。プリペイドが犯罪に使われるというのは至極納得である。

 しばらくすると、今度は綺麗なお姉さんがやってきて、購入の手続をしてくれた。店では受付専用カウンターみたいなものはなく、カスタマーの所にスタッフがきて、その辺のテーブルで全ての手続きをしてくれる。

 名前、メールアドレスなどを入力した後、「どこの都市の電話番号にする? NY? LA?」と聞かれた。え? どこでもいいの? アメリカ国内だったら、好きな都市の電話番号を取れるらしい。でもここはあえてセントルイスの番号を選択。

 端末にスマホ用プランの40ドル/月(500分の通話及び500MBのデータ通信)を追加して、アクティベートしてもらい最後にクレジット決済のサインをして手続き終了。5分後には使えるようになった。4G LTEで通信速度も特に問題なし。車に戻り、車内で携帯を充電しつつ早速観光に繰り出した。市内は、空港から都市を結ぶMetroLink(電車)、バスもあるが、あちこち移動するのには不便なので、やはり車での移動が必須である。

 地図アプリで観光地までの所用時間を調べ、1日で行けるところの計画をたてた。まずは、観光名所のGateway Arch。高さは192m。セントルイス一高い建築物である。内部は中空になっており、トラムに乗って展望台までいける。アーチの中を移動しているのはなんだか不思議な感じだった。

 展望台から街を見下ろすと、中央手間に旧裁判所が見える。後に南北戦争のきっかけとなったといわれるドレッドスコット裁判が行われた場所である。現在は博物館になっている。

 小腹が減ったところで、アメリカに来たらやっぱりドーナツ屋へGo! Yelpで検索して、まぁまぁ美味しそうなドーナツ屋を見つけ行ってみた。後日、知人は「Best Donuts in St.Louisだ!」と言っていた。確かに激ウマだった。ぜひまた食べたい。

 続いては、アートと遊び心が融合する大人も子供も楽しめる体験型のCity Museumへ。元々は靴の工場だったビルを改築し、中には滑り台や洞窟、屋上には中古のバスや観覧車。まだビルの中では改装が続いており、新たなアトラクションが増えている。ほとんどの材料はガラクタのようであるが、それがまた楽しい。

 這いつくばって遊んで腹ペコになったので、近くのダイナーへ。写真はセントルイス名物のSlinger。ハッシュポテト(またはフレンチフライ等のじゃがいも)にねぎ、ソーセージ、チーズ、アボガドソース、卵をどちゃーっと大皿にのせてある。朝の6時半からカフェやダイナーはあいているので、朝からこれを食べる人もいるというのが驚き。

 アメリカっぽいDeep Fried French Toast(簡単にいえば揚げパン)も人気メニュー。これに、シロップを大量にかけていただく。ダイナーを出ると辺りはすっかり暗くなっていた。胸焼けモードで次の観光地へ。

 締めはセントルイス名物「Frozen Custard」で有名なTed Drewesへ。Gateway Archにつぐ有名な観光地である。平日夜8時過ぎだというのに、結構並んでいる。夏の夜には駐車場待ちで、交通渋滞が起きることもあるらしい。筆者は滞在中に2回も行ってしまった。癖になる甘さとボリュームたっぷりのこってりしたアイスクリームである。人気メニューは、アップルパイ一切れが丸ごとはいったアップルカスタード。アイスに混ぜてあるのかとおもいきや、カップの中にパイがドンと入って、上からアイスがかかっているのである。もうおなかいっぱい!

 なんだか観光というより、食い倒れの1日となってしまった。おいしいものが安く食べられるということは怖いものだ。セントルイスが米国でも肥満率が高いというのはなるほど頷ける。

 1日携帯を片手にぐるりと観光(食べ歩き)して、あとで気が付いたのだが、観光地、ホテル内、美術館、多くのカフェやレストランは無料Wi-Fiがあった。当初、うっかりWi-Fiにつながずに、アプリをダウンロードしたり、メッセージと一緒に写真を送ったりしてしまったのだが、うまく使えばあまり契約プランのデータ残量が減ることはなかったように思う。次回はもっと安いデータプランにしよう。

 実は5年振りに訪れたセントルイス。8月の暴動があったが、近年、人口が少し戻ってきつつあるそうで、5年前に比べると、街に何となく活気を感じた。

 治安の良くない地域にさえ入らなければ比較的安全で観光スポットもたくさんあり、ミシシッピ川の船上でカジノもできる。日本からの直行便はないが、シカゴから飛行機を乗り継ぎ、1時間ちょっと。近くに用事があった際は立ち寄ってみるのもいいだろう。色褪せた写真のような、ちょっぴり懐かしいアメリカを見つけられるかもしれない。

参考情報

 ハンバーガー、ホットドック、アイスティー、アイスクリームのワッフルコーンが初めて米国にお目見えしたのは、1904年のセントルイスで開催された国際博覧会である。ピーナツバターもセントルイスのお医者さんが発明したとか。どれもまさしくアメリカンテイスト!