世界のケータイ事情

愛犬との散歩で思ったこと

 健康管理の目的もあり、愛犬の散歩も兼ねて街中の散策を日課としています。散策しながら市中の様子を見ていると、色々な変化が気になります。例えば自動車のヘッドライト。以前はラジエターグリルの両端に横型のライトがついていましたが、昨今の乗用車は斜め形のライトが主流となっています。単にデザイン上だけの問題と考えていましたが、そうではないようです。自動車は燃費向上のため空気抵抗低減が必須の課題であり、ライト部分で空気の流れを変え、ドアミラーの空気抵抗を低下させるためとのことだそうです。小さな変化も、それぞれ理由があっての変化であると納得しました。翻って情報通信の現場を見ると、街中スマホばかりです。このスマホの大きな普及により、色々な面で大きな変化が起きています。

 第一は「ながらスマホ」の増加です。「歩きながら」「食事をしながら」……と、多くのながらスマホが目につきます。散歩中の愛犬が歩きスマホの学生に蹴飛ばされそうになった筆者の経験も含めて、多くの危険が予測されます。現在、日本では自動車運転時のスマホ使用は禁止されています。また、多くの都道府県では自転車運転時のスマホ使用に対する罰則規定が設けられています。近い将来、歩きスマホにも罰則が設けられてもおかしくはない状態です。

 実際、米国ニュージャージー州フォートリーでは2012年に「歩きスマホ規制条例」が制定され、歩きながらスマホを使ったメール操作を禁じ、違反者に85ドルの罰金、アイダホ州レックスバーグでは横断中の歩きスマホに1回目は50ドル、2回目以降は150ドルの罰金とのことです。また、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア市では今は中止されましたが、歩きスマホのための「e-lane」の試験的な導入、米国ユタ州のユタバレー大学や中国重慶市でも歩きスマホ専用レーンが設置されるなど、インフラ側も、この変化への対応を模索している状況です。スマホ利用者側も、「ながらスマホ」がもたらす危険をしっかり認識した対応が必要と考えます。とは言いながら、筆者も、知らない場所でスマホの地図を見ながら歩きスマホの経験もあり、柔軟に対応する解決策が期待されます。

 第二は、プライバシー情報の取扱いの問題です。例えば、ほとんど全てのスマホにはGPSが搭載されており、所在地が判明します。GPSによる位置情報を利用したサービス、ゲームも普及しています。筆者も、毎朝の散歩コースで地図が埋められていくのは、ちょっとした楽しみでもあります。また、救急車、消防車やパトカーも、このGPS情報により短い時間での到着が可能となっているなどメリットも大きいと思われます。アメリカ政府は認知症患者追跡装置に補助金を出しているなど、迷子探しなどにも有効と考えられます。

 しかし、情報の取扱いによってはプライバシー侵害が大きく懸念される状況もあります。このGPS機能について、総務省情報通信研究所が調査したところ、GPSをオンにしている人は22%、オフにしている人は16%、残りは「わからない」との回答であったとのことです。確実に起きてはいますが半数以上が「意識していない」この変化、もっと多くの人が主体的に意識できるよう、環境の整備が求められるように感じます。米国では、アップル社がiPhoneで位置情報を勝手に収集しiTunesへ保存していることが発覚し大問題になり、既に集団訴訟が始まっています。米国カリフォルニア州では会社からGPSアプリを携帯にダウンロードするよう命じられた社員が、常時監視の不快感からアプリを削除したところ、解雇され訴訟となっているなどの例もあり、今後の動きが気がかりです。

 第三は、依存性です。デジタルアーツの調査(2015年7月実施)によると、高校生のスマホ保有率は99.0%に達し、特に女子高校生の1日の平均利用時間は5.5時間にも及んでいます。寝不足(25.2%)、体調不良(17.5%)など健康面の影響を訴える数字も上がっています。アメリカで話題になった母から息子へスマホを使うための「18の約束」(米ABCニュースの報道)を記憶の方も多いと思います。スマホの虜にならないためにも、約束を作り、守る気持ちが大切です。

 「自分の子供には、テクノロジー機器を使う時間を制限している」――iPhoneの生みの親で、2011年に死去したスティーブ・ジョブズは生前こう発言していたそうです。筆者も「18の約束」にある、「上を向いて歩いてください。あなたの周りの世界を良く見てください。窓から外を覗いてください。鳥の鳴き声を聞いてください。知らない人と会話をしてみてください。グーグル検索なしで考えてみてください」を思い出しながら、愛犬とともに、朝の街に飛び出していきます。