世界のケータイ事情

家族みんなでまた行きたくなるレストランやカフェ

 週末に家族を連れて近所のショッピングモールに行くことがよくありますが、昼食時のフードコートの混み具合は尋常ではなく、ランチを取るのに一苦労します。みなさんも同じような経験をしたことはありませんか。国内でも、回転寿司の「スシロー」や「くら寿司」のスマホ向け予約アプリなどの取り組みがありますが、今回はICTを活用して、そうした問題を解消した米国のいくつかのレストランやカフェをご紹介します。

 ステーキレストランの「Outback Steakhouse」は、スマホアプリ「Outback 365」に「Click Thru Seating」を導入しています。それによって、利用者は、待ち時間をリアルタイムでいつでもどこでも知ることができます。「Outback Steakhouse」によると、来店者は、飲食店で席に着くまでに平均40分待たされるという調査結果を知り、「Click Thru Seating」の導入を決定したと言います。小さい娘を持つ親(筆者)としては、40分も待たされたら娘がぐずって大変です。

 また、ベーカリーカフェの「Panera Bread」は、デジタルによる注文・決済・運用機能である「Panera 2.0」を導入しています。「Panera 2.0」では、「テイクアウト」と「イートイン」という来店者の目的を区別しています。

 「テイクアウト」の来店者は、「Rapid Pick-Up」という方法によって、自分の職場や自宅からネットやモバイルで事前に商品を注文できます。受け取る際も「イートイン」とは別の「テイクアウト」専用エリアも設けているので、「イートイン」の来店者と一緒に行列に並ぶ必要はなく、事前に決めた時間にすぐに注文を受け取れます。

 一方、「イートイン」の来店者は、ベーカリーカフェ内のどこからでもモバイルで商品を注文できます。店内のキオスク端末からも注文できます。「Panera Bread」によると、注文するとわずか数分のうちに、テーブルに食事が運ばれてくるとのことです。

 イオンモールなどのフードコートでは、座席から離れたカウンターまで行って商品を注文し、できあがれば、またカウンターまで行って商品を受け取る必要があります。娘と2人だけでちょっと休憩したい時などには、「Panera Bread」の注文方法は、席を立つ必要がなく娘から目を離さなくて済むので、助かりそうです。

Panera 2.0の概要

 さらに、ニューオーリンズのフレンチ・クオーター地区でクレオール料理のレストラン「Tableau restaurant」やカフェ「Palace Cafe」を運営するDickie Brennan & Co.は、支払い方法を工夫しています。

 支払い方法の特徴は、来店者が読み取り機で、席に着いたまま自分でクレジットカードを読み取り、支払いを完了できることです。また、その読み取り機によって、チップを加えたり、友人と割り勘にしたり、伝票を印刷したりEメールで送信したりできます。自分でクレジットカードを読み取れることで、セキュリティー上、安心に思われる方は筆者以外にもいらっしゃるのではないでしょうか。

 これらのICTを活用した取り組みは、単に来店者が助かるだけではなく、店員のみなさんにとっても良いことが考えられます。注文受付などのミスやクレーム対応が減って、店員のみなさんの負担が軽くなると思われます。

 そう言えば、先日、椅子を1脚移動して、ベビーカーを置くスペースを用意してもらえて、嬉しく感じたことがありました。そうした心遣いは、店員のみなさんに気持ちの余裕がないようでしたら、難しいことに違いありません。けれども、そのような心遣いによって、美味しい食事を楽しむだけではなく、気持ち良く週末を過ごせたという体験が私たち家族みんなの心に刻まれて、今度、このお店に来る時には、ケーキも予約して、家族みんなで娘の誕生日をお祝いしようと、家に帰ってからもきっと話が尽きないことでしょう。

 国内の外食産業は、今後、人手不足が進むようですから、こうしたICTを活用した取り組みは、来店者の利便性を高めるだけではなく、店員のみなさんの負担を軽減し「接客の質」を向上することによって、お店のファンを増やしていく上でも、ますます必要になってくるのではないでしょうか。