世界のケータイ事情

マドリードの街中から

 昨秋、スペインの首都マドリードを訪問しました。日本でもサッカー・スペインリーグ(Liga BBVA)のレアル・マドリード及びアトレティコ・マドリードの本拠地としてもお馴染みです。EUの統計Eurostatによると、マドリード首都圏の人口は約650万人で、EUではロンドン、パリに次ぐ規模となっています。

 スペインというと、燦々と明るい太陽が降り注ぐイメージがありますが、その雨風の少ない気候に盆地という地形が相俟って、マドリードは欧州では最も大気汚染が深刻な街の1つとなっています。といっても、普段はマスクをしないと街を歩けないなんてことは全くありませんし、現地の方も観光客もテラス席での飲食を満喫しているところによく出くわします。

 そんなマドリードでは、公共交通機関が非常に充実しています。

 市内で乗り合いバスを運営するのはEMTMadrid、日本で言えば都バスにあたる組織です。ここでは、アプリでバス停や接近情報を提供するといった日本でもよくある取組みに加えて、大気のセンサーデータを提供しています。市内を走行するバス1900台余りに取り付けたセンサーで、NOxやPM2.5といった大気の情報を収集し、気温・湿度・バスの位置情報等とあわせてセンターに送信することで、マドリード中の大気の状況をリアルタイムで把握することが可能になっています。このデータを生かして、市民の健康を向上させるような取組みが行えないか、現在研究が進められているところです。

 また、地下鉄は、総延長約300km、駅数約300。人口規模ではるかに上回るロンドン、パリ、東京等と匹敵する世界有数の規模を誇っています。スペインは観光大国ですので、旅行者向けの路線図もウェブサイトに掲載されています。

一般向けの地下鉄路線図(PDF
旅行者向けの地下鉄路線図(PDF

 ところで、この地下鉄の路線図で、何かしら違和感というか懐かしい感じを抱かれる方はいませんか? Vodafoneのロゴがいくつか掲載されていますね。日本市場からは10年前に撤退しましたが、今でもVodafoneは世界最大の通信会社の一つであり、スペインでも携帯電話でシェア3位、固定ブロードバンドでシェア2位の大手事業者です。

 実はこれ、Vodafoneが2013年9月、都心Puerta del Sol(国道原点のあるところですので、日本で言えば東京・日本橋)の最寄駅Sol駅と、同駅を通る地下鉄2号線(Linea 2)の命名権を取得し、それぞれ名前を、Vodafone Sol駅、Linea 2 Vodafoneに変えてしまったことによります。

 日本でも命名権での駅名変更は、昨年話題になった銚子電鉄の笠上黒生駅改め髪毛黒生駅のように増えてきてはいます。しかし、都心の駅名やそこを走る大幹線(例えば、東京メトロ銀座線)の路線名を変更するというのは、なかなかの「英断」です。

Vodafone Sol駅の入口(筆者撮影)

 駅名・路線名となると、路線図や駅構内・車内アナウンスに留まらず、さまざまなところで露出されますので、宣伝効果も相当高いのでしょう。ただ、観光客にとっては混乱の元ですので、旅行ガイドブック等では駅名・路線名が変わったことを注意喚起していたりします。

 ところが、現在の契約は3年契約。このままでは今年の秋にはまた名前が変わってしまうことになります。傍からは、みんなが混乱しないか等と気をもんでしまいます。しかし、Sol駅は2012年にも“Sol Galaxy Note”に駅名を変更していました(1カ月間の試験的なことでしたが)。大らかなスペインの方にとっては、こんなことなんてことはないのかもしれません。

Sol Galaxy Note(マドリード地下鉄)
なお今回の旅(あくまで出張です!)で会いたかったのは、CR7等ではなく、The Lord of la Manchaの彼(筆者撮影)