ケータイソリューション探訪

D2C藤田社長に聞く、モバイル広告が高い成長を続ける理由


 モバイル広告やマーケティングを手掛けるディーツー コミュニケーションズ(D2C)。不況と言われる中、電通が発表した「2008年 日本の広告費」によると、モバイル広告費は前年比147%の913億円に成長し、2009年は1000億円を超えることが確実視されている。モバイル広告が堅調な成長を続ける要因は? どのような手法の広告がユーザーを惹き付けているのか? 今後どのように成長していくのか? 同社・代表取締役社長CEO兼CCOの藤田明久氏に聞いた。

D2C代表取締役社長CEO兼CCOの藤田明久氏

――まず、御社の業務概要についてお聞かせください。

 モバイルサイト上の広告から、モバイルでのキャンペーンの企画・制作、それに連動したリアルなイベントを含め、モバイルマーケティング全般を企画運営しております。

――株主がNTTドコモ、電通、NTTアドということもあり、iモード向けの広告を中心に扱っているという印象がありますが。

 2000年6月に会社を設立し、来年10周年を迎えますが、現在は全てのキャリアとビジネスをしております。また、公式サイトしか扱っていないというイメージを持たれることもあるのですが、mixi、GREE、モバゲータウンなどのSNSを始め、一般サイトも幅広くやらせていただいております。

――不況の影響で企業が広告費を減少する傾向が見られる中、モバイル広告が好調を維持する理由はどこにあるのでしょうか?

 携帯電話は24時間ユーザーから30cm以内に存在しているデバイスであると認識しています。日常的に持ち歩くものですし、就寝時もアラームを設定して枕元に置いていらっしゃる方が多いようです。そういう意味で、クライアントが見せたい広告を、ターゲットとなるユーザー層に一番見せたい時間帯に提案できるというメリットがあります。

 また「あなたのための情報ですよ」という演出がしやすい一面もあります。例えば、ユーザーを絞り込んで配信する「メッセージフリー」ですと、普段個人的なコミュニケーションツールとして使っているメールと同じように届きますし、ターゲット層に合わせた絵文字やFlash画像を使うなど、ユーザーに親近感を持たせる広告展開もできます。これは、テレビや新聞などでは難しいことだと思います。テレビのCMで「あなただけに……」と言っても、受け手には「みなさんに向けて言っているんですよね?」というふうに見えてしまいますよね。

――最近、モバイル広告の形態が多様化しているように感じますが?

 弊社がお取り扱いさせていただいているだけでも300以上の広告のスペースと種類があります。ですので、クライアントにとっては、その中から目的に合った最適の広告を選ぶのは難しいと思います。弊社は10年間の実績がありますから、それに基づいた提案をさせていただくことができ、それが強みになっていると思います。

――モバイル独自の広告やマーケティングとして、最近注目度が高まっているものがあれば教えてください。

 ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアで利用できる「iアバター」というツールを提供しています。ユーザーが自分のアバターに服を着せたり、物を持ったりできるものですが、これを利用してブランドや商品を告知していただく広告は増えています。さまざまなサイトと提携していますが、ブランドの服を着せたアバターを待受画面にしたり、デコメールにして友だちに送信したりもできますので、モバイルだけでなくリアルでのクチコミ効果も期待できます。企業にとっては自社でアバター機能を構築しなくて済みますし、ユーザー側も見にいくサイトごとでアバターを作る手間が省けます。とくに10~20代への訴求には効果的だと思います。

――「iアバター」はユーザーが主体的にアクセスすることによって情報が得られる「プル型」の広告ですが、ほかに「プル型」ではどのようなものがありますか?

 多くの人に一気に告知するには「iMenu TOP」や、大手SNSのトップページを用いるのが最も効率的だと思います。例えば、社名を変更したときですとか、新商品や新サービスを告知したい場合にご利用いただいています。今や1億人が携帯電話を使っていますし、認知度を一気に広める意味では他メディアよりも効果的と言えるかもしれません。「iMenu TOP」の場合、3日間掲載なのですが、3日間で5000万PVくらいありますから、クライアント様にサーバーを強化していただく必要があるほどです。

 ほかに、サイト画面の一部に表示される「ピクチャー広告」、多くの機種にプリインストールされているテレビ番組表アプリ「Gガイドモバイル」に掲載する広告、iMenuの検索結果に連動して表示される広告など、さまざまなメディアから選んでいただけます。

――ユーザーが自動的に受信する「プッシュ型」では、どのようなものがありますか?

 先ほど申し上げました「メッセージフリー」は性別、年代、地域などのデモグラフィックを特定して、配信時間を指定して配信することができます。例えば「栃木県に住む女性にだけ」といった配信も可能です。ただし、1日にあまり多くのメッセージが届くと読んでもらえない可能性がありますので、ユーザー1人あたりの配信数は、多くても午前、午後それぞれに1~2通という上限を設定しております。ほかに、メールマガジンのヘッダ部分に掲載するテキスト広告もあり、これはキャリアに関係なく配信できます。

――モバイル広告を利用するには、どのくらいの費用がかかりますか?

 広告の種別や、どれくらいの規模で展開するかによって料金体系は異なってきますが、広告を目にするユーザー1人あたりの単価としては、他の広告メディアよりも安いのではないかと思います。

 例えば「iMenu TOP」は3日間掲載で3300万円です。これでケータイの電波が届くところであれば、北海道から沖縄まで全国のユーザーに訴求できますし、述べ5000万人くらいに見ていただけます。弊社が提供する広告枠としては最も高いのですが、それでも非常に人気が高い枠です。

 逆にリーズナブルにご利用いただけるものとしては、私どもがドコモと共同で運営している「iMenu ショッピング」。11月から始めたものですが、1カ月で5万円程度から広告を打つことが可能ですので、予算に応じてご利用いただけると思います。「メッセージフリー」も配信する通数にもよりますが、数万円程度から利用可能です。ダイレクトメールに近いものですが、郵送するダイレクトメールでは印刷代などの制作費や郵送費がかかりますが、それらを節約できると考えていただけるいいかと。しかも、指定した時間帯にタイムリーに告知することができます。

 ほかに、iMenuのメニューリストの各ジャンルのトップページに表示する広告も始めました。これは1カ月掲載で複数の広告がローテーションで表示されますが、ターゲット層を絞った告知をしたい場合はリーズナブルで効果的だと思います。

――モバイルSNSでの広告展開も増えていますか?

 ユーザー数が1000万人を超えているサービスもありますし、2年前から急速に伸びています。SNSの場合、ユーザー間での情報シェアなどによる波及効果も期待できます。

 例えば、SNSのサイト上である商品のキャラクターを用いたゲームを作ったことがありますが、ゲームを通してユーザーの興味を喚起することができ、同時にブランディングとしても好感度を高めることができました。モバイル広告以外の広告と比較しても断然効果が上がったという調査結果も受けています。

――モバイル広告の市場は、今後も拡大していくのでしょうか?

 そもそもPCサイトで広告をクリックする人よりも、モバイルサイトでクリックする人のほうが多いという調査結果があるのですが、その傾向はさらに高まっているように感じています。その理由は、画面サイズが関係していると思っておりまして、画面が広いPCサイトでは、中央にコンテンツがあり、四方に広告が掲載されますよね。ケータイは、画面をスクロールする過程で広告を発見してもらえるので、より気づかれやすいということがあると思います。

 もうひとつ、Flashが使えるようになったこともモバイル広告の利用価値が広がる転機になったと思います。2004年に発売されたドコモの505iシリーズからFlash対応になりましたが、今ではほとんどの方がFlash対応の端末を使っていらっしゃいます。モバイルのバナー広告はスペースが小さいのですが、Flashを用いたアニメーション表示により、伝えられる情報量が増えて、ストーリー性も打ち出せるようになりました。逆に言えば、ユーザーの目に留まる間にどれだけ興味を惹けるかということが勝負になりますが、Flashを上手に活用した広告が増えています。

 他メディアやリアルなイベントなどとの連動を図ったクロスメディア型の広告も増えていますし、おサイフケータイや動画コンテンツなど、モバイルコンテンツもさらに多様化してきています。モバイルを活用した広告・マーケティングは今後も成長をしていくと思いますし、弊社としても、新しいサービスを提供していきたいと考えております。

――ありがとうございました。

(村元正剛)

2009/12/17 06:00