ケータイソリューション探訪

ケータイに最高の音を提供する「Dolby Media Generator」


ドルビー・ジャパン プロダクトマーケティング部マーケティング・マネージャーの鬼沢和広氏

 ドルビーがいま、モバイルコンテンツ向けオーディオソリューションに力を注いでいる。これまで映像のクオリティばかりが重視されていたモバイル端末に、オーディオ製品並みの音響を提供するために開発されたのが、同社独自の技術を活かしたモバイル向けのエンコードツール「Dolby Media Generator」だ。今回は同社プロダクトマーケティング部マーケティング・マネージャーの鬼沢氏に、Dolby Media Generatorの魅力、そしてモバイルコンテンツプロバイダーのサポーターとしてのドルビーの今後の展望を伺った。

 ドルビーは、もともと“オーディオ屋”として45年の歴史を持ち、一貫してドルビークオリティーを提供し続けてきた。今でも国内外の多くの映画においてドルビーの音響技術が採用されているのは広く知られている。その特化した技術をモバイルに落とし込んだのがDolby Media Generatorであり、それを再現するのがDolby Mobileの試みだ。「しかし、映画と携帯には実は大きな壁があります。携帯視聴においてはユーザーを満足させるオーディオ品質ではない。画像や映像は格段に良くなっているのに、音ばかりが後れをとっているんです」と鬼沢氏。そこで、より高品質なオーディオクオリティーの携帯コンテンツを普及させる提案ができないかという思いが湧き、Dolby Media Generatorのリリースに至ったという。

 Dolby Media Generatorの携帯での効果のほどを体験するためには、「Dolby Mobile」搭載の携帯端末を利用したい。Dolby Mobile搭載端末は、今春の段階で約30機種以上の機種が販売されており、豊富なラインナップとなっている。そして、Dolby Media Generatorはこれらの端末と併用することにより、最大限のパフォーマンスを発揮するのだという。もちろん、Dolby Mobileを搭載していない端末でも再生は可能だが、クオリティが全く異ってくる。「ぜひDolby Mobile端末と組み合わせて使って欲しい」というのが鬼沢氏の意向だ。

 競合するソリューションについて尋ねたところ、「ケータイコンテンツ開発用エンコードツールはいくつかあるので、そういったものは競合に当たるかもしれない。しかし、ここまでオーディオに特化しているツールを提供するのは、弊社だけではないかと思う。ドルビーは業務用の音声機器を開発していて、その業務用オーディオ技術をDolby Media Generatorに採用していますから」と鬼沢氏は自信をのぞかせる。Dolby Media Generatorには、ドルビーならではの蓄積されたオーディオのノウハウが凝縮されているのだ。

 では、Dolby Media Generatorは実際にどのような機能を持ち、音を処理しているのだろうか。「地味に見えますが、意外にこれ、頭がいいんです。特にすぐれているのが、コンテンツ内のオーディオ信号を解析する機能です。音のレベルはどれくらいか、データにエラーがないか……などといった細部にわたる解析を行い、Dolby Mobile搭載端末で最適に再生できるような付加情報をつけて出力してくれるんです」(鬼沢氏)。

 さらにオーディオ面の特長として挙げられるのは、5.1chサラウンドコンテンツに対応したドルビー独自のダウンミックスの仕方である。「5チャンネル分の情報をLとRの2チャンネルに落とし込むわけですが、中ではしっかり5チャンネル分のサラウンド情報を持ちながら2チャンネルで出力するんです」(鬼沢氏)。これによってヘッドフォンで聴いているにもかかわらずDolby Mobile搭載端末では、オリジナル(5.1ch)に近いふくらみあるサラウンド音場を再現することが可能となっている(※iモードサイト『ドルビーモバイルエンターテイメント』にて疑似体験可能)。また、プラットフォームに関してはWindowsとLinuxに対応しており、大抵の環境であれば問題なく使用できるという。

ドルビーサラウンドを体験できる「ドルビーモバイルエンターテイメント」(http://dolbymobile.jp/

 今後のDolby Media Generatorの提案先としては、やはり映像とのコラボレーションにおける需要が多いと見込んでいる。「現在のバージョンでは、オーディオ面に特化していくつもりだが、コンテンツプロバイダーさんからのフィードバッグを汲みながら、映像を含めた総合的ソリューション提案をしていくことも検討しています」と鬼沢氏。ライセンス体系や値段は基本「問い合わせベース」とのこと。また、個々のコンテンツプロバイダーのみならず、コンテンツ配信サーバーの提供会社からのニーズも出てきており、こうした取引先との今後の組み方を模索中だという。

 また、配信のターゲットとして、やはりスマートフォンの存在も無視できなくなっている。「iPhoneについては本社のほうで話はしていますし、関係は引き続き持っています。また、Androidなどにも対応する準備ができています。それはまた時期がきたらご案内したい」とのことで、今後の動きが注目される。

 携帯電話の通信速度が高速化されれば、もちろん映像はますます美しく鮮明になるだろう。「映像技術がここまで進化しているのだから、音響ももっと注目されるべき。今後より音のクオリティが求められてくると期待しています」と、鬼沢氏。「携帯は可能性がありすぎますし、特に音響ツールの進化はこれからだと思っています。この秋から冬にも対応コンテンツが増えますので、楽しみにお待ちください」と携帯市場への意欲を見せた。

(瀬川あずさ)

2010/6/2 06:00