Google Analytics講演レポート~モバイルアクセス解析セミナー


 アクセス解析イニシアチブが主催した有料セミナー「モバイルアクセス解析セミナー」が3月15日に開催された。セミナーでは、グーグル株式会社プロダクトスペシャリスト 中島弘樹氏が「Google Analytics モバイル解析の最新情報」と題して講演を行ない、機能や設定方法などを説明した。

 なお、主催のアクセス解析イニシアチブは、2009年4月に開設されたアクセス解析に取り組む人々の協議会。「知識ノウハウのベースアップ」「ウェブアナリストの地位向上」「人と人をつなぐ交流」をテーマに活動、4月8日には1周年交流会を予定している。

Googleの真の強みは、Googleの検索を支える巨大なデータセンター

グーグル株式会社プロダクトスペシャリスト 中島弘樹氏

 中島氏はまず、アクセス解析にはアクセスログ(サーバーログ取得)型、パケットキャプチャリング型、ウェブビーコン型の3つのタイプがあるが、Google Analyticsはウェブビーコン型にあたると説明。「導入には3つのコードを埋め込むだけ。誰でも無料で利用でき、豊富な情報が得られる。ぜひ利用してみていただきたい」と述べた。

 また、PC版とモバイル版については、「基本的にデータ収集の仕組みは同じ」と述べ、「Googleの真の強みは、Googleの検索を支える巨大なデータセンター」だと強調。昨今はクラウドが話題に上ることが多いが、Googleではクラウドと言えば、世界中に存在するデータセンターのことを指すと述べた。

 Google Analyticsでは、得られるさまざまなデータを指標とディメンションの2つに大別している。指標は、セッション・ユニークユーザー、ページビュー、平均ページビュー数、サイト滞在時間、直帰率、新規セッション率など。ディメンションは、滞在時間や最初に見たページ等のデータが提供される。また、指標・ディメンションの表示画面には、×月×日にサイトを改修した、というような覚え書きメモも貼り付けることができるという。

 中島氏は、どういった情報が得られるのか、具体的には数も多いため、実際にGoogle Analysticsで確認してほしいとしたうえで、「モバイル版Analyticsの最大のメリットはこうした豊富なデータをもとにアクセス解析ができる点にある」と豊富な情報量への自信を見せた。


Google Analyticsはウェブビーコン型。3つのコードを導入するだけで利用でき、利用料も無料利用するには、ルートにgaファイルを設置し、アクセス解析したいページの上部と下部にコードを埋め込むだけ。Google Analyticsでデータ収集する仕組み。ウェブビーコンを埋め込むことで、Googleデータセンターにアクセスデータが送られ、収集・蓄積される

モバイル版と通常のAnalyticsの違い

 モバイル版と通常のAnalyticsの違いとしては、PC版はJavaScriptをサポートするが、モバイル版ではPHP、JSP、Perl、ASP.NET on IIS 6.0(C#)をサポートしている。

 モバイル版で取得できないのが、ページタイトル、イベントトラッキング、ユーザー定義変数などJavaScriptに依存するデータだという。また、NTTドコモの携帯電話では、2009年夏以後のiモードブラウザ2.0以降搭載端末であればリファラーを送出するが、それ以前の端末は仕様としてリファラーを送出しないため、こうした携帯電話の仕様などにより取得できないデータもあるとした。ただし、JavaScriptに依存する部分では、カスタマイズにより対応可能な部分もあるという。

 また、地域情報もモバイル版では取得できない。PC版ではIPアドレスで判断しているが、携帯端末の場合は、沖縄と北海道から同じIPアドレスでほぼ同時にアクセスが来るなど、少ないIPアドレスで日本全国の多くの端末からのアクセスをさばいている事情があり、IPアドレスでの判別は困難であると述べた。ただし、都市レベルであれば、auとソフトバンクモバイルの場合は、携帯端末の固有IDから、契約場所が沖縄であるなど、ざっくりしたレベルであれば契約した場所の住所がわかるので、そうした情報を利用して地域データを付加することは不可能ではないという。

 計測対象では、モバイル版では携帯電話のほかハイエンド携帯端末(iPhoneやAndroid)、PC、検索エンジンのクローラーも計測できるため、JavaScript を利用したカスタマイズをするような使い方をしない場合には、PC版よりもモバイル版の方がさまざまな端末のアクセスを解析できる。「モバイル版を入れればすべてのトラッキングが可能」(中島氏)。

 またモバイル版は、携帯通信事業者では、KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル、ウィルコムと国内主要キャリアをサポートする。ドコモのSSLページは、iモードIDを送出しない仕様のため、ドコモのSSLページは基本的にはトラッキングできないが、gaファイルを書き換えるなどでSSLページのトラッキングも可能になるという。

モバイル版とPC版の違いモバイルサイトの訪問者数。新規ユーザーのセッション数がどのくらいの割合を占めるかもチェックできるどの検索エンジンから流入したが、検索エンジンレポート機能も。国内外の主要検索エンジンに対応する。「Yicha」は中国の検索エンジン

AndroidとiPhoneからの検索は2009年1年間で500%の伸び

 検索数の伸びでは、2007年から2009年の成長率比較では、PCは23%の伸びであるのに対して、モバイル(携帯電話)からの検索数は95%とおよそ倍に成長しており、また最近のテレビ連動キャンペーンなどではモバイルの方が反応が大きいという。ちなみに、モバイル数字は、Googleのサイトのほか、NTTドコモとauの公式サイトでの検索数を含んでいる。

 特筆すべきはスマートフォンの伸びで、2009年1年間でAndroidとiPhoneは約500%の成長率と飛躍的な伸びを見せているという。

 また、PCとモバイルはピークタイムが異なり、自席を離れるお昼休み時間ではPCの検索は減るが、モバイルではピークになるという。全セッションに占める新規ユーザーの比率を見ることもできるが、モバイルでは夜に新規ユーザーが多い傾向も見られるとした。

 また、モバイルの携帯端末別の解析も可能となっている。つい最近まで実装中だった機能だが、現在は各キャリアの端末別に解析・表示が可能となっている。

 セミナーはアクセス解析を業務で利用するマーケティング担当者などが主な聴講生となるため、「上級編カスタマイズ」として、セッションIDの対応方法なども具体的に説明された。よく「モバイル版では、[その他]という項目がたくさん表示されるのはなぜですか」と聞かれるが、これはランダムなセッションIDが入るからだという。Google Analyticsでは、各指標につき1日5万件を超えると記録はされるが、レポートでデータが個別表示されず、[その他]としてまとめて表示されることになる。

 セッションIDを除外するなど、この問題に対応する方法が説明された。なお、こうしたノウハウについては、Analytics ヘルプ、Google Code、「Google Analytics IQ Lessons」などに関連する説明があるという。

 中島氏は最後に、「PCに比べてモバイルは見えづらいという印象があるかと思うが、Google Analyticsモバイル版のさまざまなデータを用いて可視化して活用していただきたい。2010年も機能改善・追加を休まず行っていくので、今後もGoogle Analyticsをご利用いただければと思います」と挨拶して講演を締めくくった。

PC検索とモバイル検索の成長率。2007~2009年でPCは23%、モバイルは95%の伸びモバイルとPCでは、ピークタイムが異なる対応端末を拡充している段階で、現時点ではiPhoneやAndroidの機種確認に使ってほしいとのことだが、携帯端末の機種別レポートも近く可能になるという

(工藤 ひろえ)

2010/3/16 06:00