【英国大使館主催ビジネスフォーラム】

カプコン廣瀬氏が語る、英国を欧州拠点にするメリットとは


CEヨーロッパ CFOの廣瀬和貴氏

 駐日英国大使館は19日、「英国スマートフォン&ソーシャルメディア ビジネスフォーラム ―英国版シリコンバレーへの投資機会―」と題した講演イベントを開催した。

 講演では、CEヨーロッパ(Capcom Europe) CFOの廣瀬和貴氏が登壇し、「株式会社カプコン ―英国を欧州統括拠点として選んだ理由を実例で語る― グローバル戦略に基づく欧州地域統括会社の役割」というテーマで、主に人材や財務といった会社の管理側の実例が語られた。

 カプコンは、ソーシャルネットワークのゲームで海外展開を行う別会社「ビーライン」を立ち上げ、スマートフォン向けゲーム「スマーフ・ビレッジ」がヒットするなど、海外展開を拡大している。ワンコンテンツ・マルチユースを基本に、AndroidやiPhone向けタイトルを今後も拡大し、「バイオハザード」など海外で映画としてもヒットしているタイトルについても引き続き展開していく方針。広瀬氏は「グローバルに通用するコンテンツの開発と、コンテンツを広げる仕組みについて、注力していく」と方向性を語る。

 英国に欧州統括拠点を構えている同社だが、ドイツ、フランスにも拠点は設立されている。売れるコンテンツは国により異なるということで、象徴的な例では、英国ではバイオハザード、フランスでは日本文化の影響が色濃く、モンスターハンターなどが支持されるという。また、ドイツではパソコン向けゲームタイトルの影響力が大きいとのこと。

 そうした各国で異なる市場に対応するための人材について、「欧州地域では、欧州各国の言語も必要になってくるので、(言語もさまざまな人材が多い)ロンドンで採用し、各テリトリーに割り振ることもしている」と、事情を語る。また、英語のできる日本人が足りていないとのことで、ロンドン在住の日本人なども人材として確保しているという。

人材の流動性が高く、労働法などでもメリットがあるとした

 同氏は英国の拠点を大きくした理由について、「ロンドンは人材の流動性が高い。ドイツ、フランスではスタートアップの会社にはなかなか人が移ってきてくれない。ロンドンは人材が流動的に入ってきて、人材にかかる社会保障費もドイツ、フランスと比較して低い。労働法も整備され、ビジネスモデルの変更や組織変更もきっちりとできる」と、ドイツやフランスと比較した英国のメリットを挙げる。また、メディアや広告関連などのビジネスが集積している点も挙げ、「協業の機会が比較的簡単に持てる」とロンドンのメリットを紹介した。

 グローバルオペレーションという観点では、北米に拠点を設けている場合、欧州拠点は日本と北米との時差の中間に位置するという点も指摘。24時間体制でコンテンツを管理する際に、日本、欧州、北米と、大きな時間を開けずに対応できる点も紹介した。例えば、何かのコンテンツやコミュニティで問題が発生した際、時差の問題で半日放置してしまった、といった事態を防げるという。

 廣瀬氏は交通の面でもロンドンの利便性を挙げる。「ヒースロー空港は大きく、行きやすい。来てもらう際にも楽。パリからでも、ユーロスターで1時間と、東京~大阪間を新幹線で移動する感覚。宿泊施設も、パリでは夏にホテルの予約が全く取れない時期があり、ビジネスでは困ることも多いが、ロンドンではそうしたことはない。ITインフラも政府が積極的に進めている。データセンターも利用しているが、クオリティに問題はない」とロンドンのメリットを語る。

 さらに、会計的にもメリットがあり、例えば英国の会計基準は国際基準のIFRSとほとんど差がなく、すぐに連結できる点や、日本の本社の会計システムに大幅な変更がいらずコストを抑えられるといった、より実務的な利点も紹介した。このほか、法人税率が欧州のほかの都市より低い点や、グループ納税が可能なこと、日系企業が増えたことで日本語で財務関連の相談を行える窓口が増えているといった点にも触れた。日本でいう公認会計士のような人材も、欧州拠点にロンドンを選ぶ企業が多いことなどから、優秀な人材が多いという。

 メリットが多いロンドンだが、廣瀬氏が自社の経験から「ちょっと大変なのは」と紹介したのはオフィスの賃貸事情。ロンドンの中心地では賃料が高く、古い建物では共益費が「意外と高い」という。「貸手市場で、リース契約で10年、5年をコミットとかもある。IT企業で10年は大変。Tech Cityのようにインフラが整っているところは、立ち上げのスピードが上がりメリットがある」と語り、拠点の規模に合わせて柔軟に立ち回れる施設を見つけることがポイントとした。

 廣瀬氏は「ロンドンは、特に人材でメリットを感じている。フランスもドイツも、それぞれの国の事情を分かっていないと、オペレーションが回らず、モノが売れない。(欧州で通用する)グローバルな(視点を持つ)人材は、ロンドンで調達できる」と語り、さまざまな文化や人材が集まるロンドンのメリットを語った。

プレゼンテーション

 




(太田 亮三)

2011/10/20 17:01