【CEATEC JAPAN 2011】
ドコモ岩崎氏、スマホ時代に対応するドコモのネットワーク戦略


ドコモの岩崎氏

 幕張メッセで開催されているエレクトロニクス関連の総合イベント「CEATEC JAPAN 2011」の3日目、キーノートトラックの中で、NTTドコモの取締役常務執行役員の岩崎文夫氏は「スマートイノベーションを支えるドコモのネットワーク」と題した講演を行った。

 まず岩崎氏は、世界のモバイルの動向として、モバイル自体が広く普及しつつあるとともに、3Gの比率が上昇、そのような状況の中で、ドコモのARPUに占めるデータ通信の売り上げが世界でもきわめて高いことを紹介する。

 そしてスマートフォンについては、Androidがこの1年で大きく成長したことを指摘し、「AndroidはオープンなOSなので自由度が高く、世界でもラインナップが広い。また、拡張性も高い。これまでの総合力をスマートフォンでも展開し、お客様に提供したいと考えているので、ドコモとしてはAndroidをメインとして選択している」と語った。

 そうしたスマートフォンの販売状況について、「各社競争しているが、4月から8月のシェアをみると、私どもがAndroidを中心に販売するスマートフォンが8月には55.9%になるなど好評をいただいている。その販売台数も、8月に新しいラインナップ投入もあって伸びていて、300万台に迫る規模。今年度は600万台を見込んでいたが、これを上方修正するポテンシャルもあると見ている」と語った。

 また、スマートフォン向けに従来iモード端末向けに提供してきたサービスを一部提供していることにも触れ、将来の予定として「11月の冬端末以降では、iコンシェルやコンテンツの課金認証機能、マイメニューの移行も予定している。さらに従来から対応している緊急地震速報についても、Xi対応機種からは従来のCBS方式よりさらに高速なETWS方式に対応し、充実させていく。このように、iモードから乗り換えてもそのままお使いいただけるようにしつつ、さらにスマートフォンならではのサービスも提供する」と語った。



 スマートフォンが普及する中で、そのいちばんの課題は増大するトラフィックにあると岩崎氏は指摘する。「便利になったので大量のパケットがネットワークに流れ込んでくる。有限のリソースでサービスを提供する中で、世界中のキャリアが知恵を出して取り組んでいる。昨年は前年同月比で約1.7倍の伸びだったが、今年は前年同月比で約2倍の伸びとなる」とトラフィックが文字通り倍増していると指摘。「対応方法としては周波数の有効利用。とくに力を入れているのがLTEを採用するXiで、このサービスエリアを早期に展開するのがひとつの柱となる」と語った。

 LTE以外の増大するトラフィックへの対応としては、「ダイナミックな通信制御」を行っていることを紹介する。岩崎氏は「5%のユーザーが全体のトラフィックの半分を使っている。一部の特定ユーザーがネットワークを占有している形になっているので、公平性という観点から、そういったユーザーには、回線が混んでいる状況ではお譲りいただく、そういった仕組みをネットワークに盛り込んでいる」と説明。具体的には、直近3日間で300万パケットを超えたユーザーが、混雑中の基地局に接続するとき、そのユーザーのパケット送信機会を減少させるというQoSを盛り込んでいるという。

 岩崎氏は、データオフロードによる対応についても、フェムトセルや各家庭でのWi-Fi、さらに公衆無線LANを駆使していることを紹介。とくに公衆無線LANサービスについては、そのアクセスポイント数を1年で約4倍に拡大し、2012年の上期には3万カ所、将来的にはニーズを見ながら10万カ所にまで増やしたいとの考えを示した。

 ドコモのネットワークの進化については、LTEの次の世代、4G(LTE-Advanced)についても言及する。LTE-Advancedはすでに屋外での実験も行われており、2015年に開発を完了させることを目標に取り組んでいるという。

 こうしたネットワークの進化に合わせ、現在は3Gネットワーク上でIP化して運用している音声通話機能についても、LTEのネットワーク上で通信する「VoLTE」を将来的に導入することも明らかにする。岩崎氏は、「こうすると、現在の3Gに比べ、2倍3倍の音声通話を収容できる」と語った。

 さらに岩崎氏は、「このようにネットワークの進化の上で、私どもは、さまざまなサービスを創出しようとしている」と語る。その例として、ケータイ向けマルチメディア放送を手がけるmmbiや基地局に収容している利用者数から人口分布を調査する「モバイル空間統計」などを紹介した。

 岩崎氏は講演の最後に、東日本大震災による被災状況について紹介した。ドコモでは地震発生直後の3月12日の時点で最大4900局がサービスを中断したが、4月30日の時点で震災前のエリアを復旧している。その中には、福島原発の20km圏内も含まれ、原発で作業する人たち向けに、20km圏内もエリア化復旧したという。また、こうした復旧エリアについてはマップとして提供することで、被災地を支援しているという。

 岩崎氏は、東日本大震災や台風災害から学んだ教訓を活かした災害対策としては、「通信の確保」と「被災地への迅速な対応」、「災害時の利便性向上」の3つの柱を挙げる。このうち、災害時の利便性の向上としては、災害直後に輻輳がおき、音声通話ができなくなっても、端末側で記録した音声データファイルをパケット網で送信することで、相手に音声で安否を伝えることのできるサービスを2011年度中に提供する予定と紹介した。



 




(白根 雅彦)

2011/10/7 13:29