【CEATEC JAPAN 2012】
富士通、テレビ映像から別の情報を取り出せる新技術


富士通のブース
テレビ映像をスマートフォンで撮影すると、関連するWebサイトにジャンプ

 ドライブアシストシステムのために実物大のレーシングカートを設置したり、Windows 8搭載のノートPCとタブレットを参考出展するなど、多彩な分野における展示内容で注目を集めていた富士通。スマートフォン関連のサービスとしては、「映像を媒介した新通信技術」と称し、テレビ映像をカメラで撮影するだけで別の情報を取り出せるという新技術が見どころだ。

 この技術は、テレビ映像の1つ1つのフレームにわずかずつ変化する小さな光を紛れ込ませ、その光の変化を専用のスマートフォンアプリのカメラ機能でスキャンすることでデータとして復元するというもの。たとえばテレビ番組の最中に視聴者がスマートフォンのカメラでテレビ映像を撮影するだけで、その番組で紹介している商品の詳細情報を受け取ったり、通販サイトにアクセスする、といったことが可能になるわけだ。

 映像内には1秒間に16ビット(2バイト)までのデータしか埋め込めないため、URL程度の文字列であっても受信にはかなりの時間がかかってしまう。したがって、受信したものをそのまま用いるのは現実的ではないため、あらかじめ割り当てられた桁数の少ないIDのようなものを映像に埋め込み、スマートフォンで受信したIDをサーバーに送信して問い合わせ、適切な本体データを再受信する、という手法を採ることになる。

1コマごとの光の変化は、連続すれば光の波長になる。この波長を捉えて情報化する

 肉眼では認識できない、ごく微細な光の変化によって実現する仕組みであることから、テレビの画質や受け取る側のスマートフォンのカメラ性能によっては、受信精度にばらつきが出るのではないかという心配もあるが、担当者によれば、国内外の主要メーカーのテレビ製品でテストしたところでは、問題なくデータを復元できたという。4Kテレビにも当然ながら対応し、スマートフォンのカメラについても、よほど古いものでない限り、性能としては十分以上であるとしている。ただし、アナログテレビや画素の粗い街頭大型ビジョンなどではまだテストできていないとのことで、より多くの視聴者への提供、大勢の観客が集まるパブリックビューイングへの応用などについては、これから具体的な検討やテストが行われる。

農業に携わる経営者向けのサービスを提供

 農場経営を支援するソリューションでも、スマートフォンやタブレットの活用が進んでいる。最近は個人事業主ではなく、会社化して個別の農家から提供された農場を管理するといった動きが目立ってきており、世襲であるかどうかに関わらず、いわば経営者としての立場から農業に携わる人たちが増えてきている。会社として利益を生み出すために、生産性を向上させる仕組みが必要になってきているわけだ。

 “農業生産管理SaaS 生産マネジメント”というサービスでは、実際に農場で作業にあたる従業員の日報作成や、その従業員を取りまとめる経営者の管理業務、現在の作物の生育状況のチェックなど、多方面における情報の管理・集約に、スマートフォンやタブレットを活用できるようにしている。従業員の手間が可能な限り少なくなるよう、インターフェイスを単純化するのはもちろんのこと、スマートフォンによるカメラ撮影のみで農場の状況を報告できる機能を用意するなど、さまざまな工夫が見られる。

従業員の作業日報を記録するための画面
経営者はコスト管理などを行える
畑の状況をカメラ撮影してレポートするシンプルなスマートフォンアプリ

 また、“施設園芸SaaS & 施設環境制御 box”というサービスでは、スマートフォンやタブレットを使って、ネットワーク経由でリモートから温室を管理できる。実現にあたっては、新規で温室を設置しなければならない場合もあるが、室内外の温湿度のリアルタイム表示、天候・日射量の監視などを行い、その状況を見て日光を遮るカーテンを展開したり、湿度を調節する天井の開閉をコントロールしたりできる。あらかじめ条件とそれに対応する動作を決めておけば、一定の日射量に達した時に自動で温度を調節したり、天井やカーテンを動かす、といったことも可能だ。さらには、緻密な温湿度管理が要求される作物を栽培するときに、最適な温湿度を常に保てるようすべての制御をあらかじめスケジューリングしておくといった応用も可能になっている。

温室の設備や温湿度の調節もスマートフォン・タブレットでコントロールできる

 現時点でユーザー側のスマートフォン・タブレット上で行えるのは、各種情報の表示や温室内設備の単純操作のみだが、今後の要望やカスタマイズ次第では、それら自動化のための機能を加えることも考えられる、とのことだった。こういった分野は、従来は欧米のシステムが幅を利かせていたが、コスト面が大きな課題だったという。日本発のソリューションとすることでコスト減と柔軟さを実現し、多くの経営者に導入を促したい考えだ。




(日沼諭史)

2012/10/3 16:19