【2013 INTERNATIONAL CES】

クアルコム、「Snapdragon 800シリーズ」を基調講演で発表

75%性能アップでLTE Adavanced対応

 「INTERNATIONAL CES」の会期前日には、毎年「プレキーノート」と呼ばれる基調講演が開催されている。この常連だったのがマイクロソフトで、昨年までは同社のCEO、スティーブ・バルマー氏がプレキーノートに登壇していた。一方で今年はマイクロソフトがCESから撤退したこともあり、それに伴いスピーカーも交代となった。新たにこの役割を担うのが、クアルコムの会長兼CEO、ポール・ジェイコブス氏だ。

「BORN MOBILE」というテーマで基調講演を行った、クアルコムのポール・ジェイコブス氏

 プレキーノートでは、ジェイコブス氏によって「Snapdragon 800シリーズ」が発表された。Snapdragon 800シリーズは、「スーパープレミアムなプロセッサで、スマートフォン、タブレット、コンピューターのすべてに利用できるもの」(ジェイコブス氏)。ジェイコブス氏が「パフォーマンスとパワー効率がすばらしい」と語るように、現行の「Snapdragon S4 Pro」と比べ、75%の性能向上が図られている。CPUは「Krait 400」と呼ぶクアッドコアで、クロック数は2.3GHz。「Adreno 330」というGPUも搭載し、グラフィックス能力も強化。出力解像度は、フルHDの4倍のピクセル数を持つ「UHD」に対応する。

新チップセットの「Snapdragon 800シリーズ」が発表された
グラフィック性能の大幅な向上が図られており、3Dの映像も滑らかに動く
映像出力はUHD(HDの4倍相当)に対応している

Snapdragon 800搭載製品は2013年後半に登場

 Snapdragon 800シリーズは、LTE Advanced対応のモデムも統合されたワンチップ構成となる。LTE Advancedは、複数の帯域を束ねて利用するキャリアアグリゲーションに対応。Snapdragon 800シリーズでは、「最大150Mbpsで通信でき、HDビデオの再生も可能になる」(ジェイコブス氏)という。無線LANは、「IEEE 802.11ac」に対応する。このSnapdragon 800シリーズを搭載した製品は、「タブレットが今年の後半に発売される」(ジェイコブス氏)予定だ。

 Snapdragonシリーズは、Android、Windows Phoneなど、幅広いプラットフォームで利用されるSoC(システム・オン・チップ)だ。こうした広がりを同社は「エコシステム」と呼び、プレキーノートではAndroidの成功にも触れられた。ジェイコブス氏は「Androidはスマートフォン用に作られたOSだが、今ではタブレット、テレビ、デジタルカメラなど、さまざまな製品に使われている。50億以上の機器があり、すべてが成功している」と語り、それらの製品の多くがSnapdragonを採用していることに自信をのぞかせた。

Androidの幅広い製品にSnapdragonが採用されていることをアピール

マイクロソフトのバルマー氏が登場

 Windows PhoneやWindows RTもSnapdragon上で動作するOSのひとつ。プレキーノートには、この事例を語るためのゲストとして、昨年までプレキーノートでスピーカーを務めていたマイクロソフトのバルマー氏が登壇した。バルマー氏は「Windows Phoneは昨年に比べ、クリスマスに5倍売れた」と力強く語り、HTCの「8X」や、ノキアの「Lumia 920」にSnapdragonが採用されていることを紹介。「同じアイコンとルック&フィールだが、ログインすれば個々人の写真やドキュメント、Xboxミュージック、Xboxゲームにどのデバイスからもアクセスできる」とWindows Phoneの特徴を説明した。

サプライズゲストとして登壇した、マイクロソフトのバルマー氏。Windows RTやWindows Phoneのメリットを力強く語った
HTCの「8X」や、ノキアの「Lumia 920」にもSnapdragonが採用されている

周波数利用効率に対する取り組みや新技術、アプリの紹介も

 このほか、ジェイコブス氏は帯域をいかに有効活用するかにも言及した。「コストを抑制しながら、トラフィックが1000倍になってもいいようにするのがゴール。新たな周波数を作る、3Gや4Gの先を作る、そしてそれらを組みあせることが必要」といい、スモールセルの技術や、「IEEE 802.11ac」でネットワークを効率化する「STREAMBOOST」などが紹介された。

1000倍に増えるトラフィックに対処していくのが、クアルコムの目標
スモールセルなどのキャパシティを向上させる取り組みに言及

 クアルコムは、ARやデバイス連携などのモバイル活用事例も研究しているが、ジェイコブス氏はこうした技術も披露。米国でおなじみのモータースポーツ「NASCAR」のチャンピオンであるブラッド・ケセロウスキー選手や、「セサミストリート」のビッグバード、女優のアリス・イヴらをゲストに招き、「AllJoyn」や「vuforia」といった技術を活用したアプリのデモを行った。

タブレットやPCで、さまざまな角度からレースを楽しめるアプリ。「AllJoyn」という仕組みを活用している
「セサミストリート」のビッグバードが登場し、ARで文字を一致させる子供向けのアプリを紹介した
ロックバンドの「マルーン5」も登場。プレキーノートを歌で締めくくった

 なお、プレキーノートでは言及されていないが、クアルコムは同日、「Snapdragon 600シリーズ」も発表している。こちらのチップは、Snapdragon S4 Proと比較して40%の性能向上が図られている。CPUはクアッドコアの「Krait 300」で、クロック数は最大1.9GHz。2013年、第2四半期までに搭載デバイスが発売される予定だ。

石野 純也