【CES 2016】

今年もユニークな新製品が勢揃いのCES Unveiled

Cerevoがプロジェクター内蔵ロボやセンサー内蔵ロードバイク発表

 米国・ラスベガスで開催される「CES 2016」に先立ち、プレス向け公式イベント「CES Unveiled」が開催されている。

「CES Unveiled」

 CES Unveiledは、「単独では発表会を行なわない/行なってもなかなか人を集められない」というような中小の企業の新製品を一堂に集め、プレスに見てもらおうという趣旨の、毎年恒例のイベント。レノボやプラントロニクスのような有名企業もごく一部出展しているが、まったく無名なスタートアップ企業もたくさん出展している。過去にはほぼ無名な状態でCES Unveiledに出展し、IoT業界で知名度を上げた企業も多い。

 今回は去年までよりもやや広い会場が用意されており、出展コマ数は191(レノボなど一部は複数コマを使用)と、非常に多くの企業が、さまざまなジャンルの製品を展示している。

 本誌ではモバイル関連製品の展示を取り扱うが、展示される大半の製品にはスマートフォンとの連携機能が搭載されており、そのすべてを取り上げるのは困難な状況だ。本稿では、今までにないユニークな着眼点の製品や、「CES Innovation Award」受賞製品を中心に、筆者の独断でピックアップして紹介する。なお、特に記載しない限り、にいずれの製品も日本での発売予定は案内されていない。

Cerevoは自転車とロボットを展示

 日本の家電ベンチャーCerevoは、プロジェクター内蔵のロボット「Tipron」と、3Dプリント技術を採用した自転車(ロードバイク)の「ORBITREC」、ORBITRECに搭載されているセンサーモジュールをほかの自転車に搭載できるようにした「RIDE-1」の3つの製品を展示している。

ORBITREC

 ORBITRECはCES Innovation Awardも受賞している、チタニウムの3Dプリント技術を使ったフルオーダーメイドの自転車。オーダーにより、フレームの接合角度を微調整して身体のサイズに合わせたり、チタンの剛性を調整したりできる。ORBITRECには走行状態を計測するセンサーモジュールがフレームに内蔵されている。10種類のセンサーが内蔵され、スマートフォン上でデータの蓄積や解析ができる。

 価格としては7000ドル(約84万円)程度を想定しているとのこと。フルオーダーメイドの自転車としては安価な部類を目指しているという。フルオーダーメイドの受注に対応できる自転車販売店を通して注文することができる。

RIDE-1

 「RIDE-1」はORBITRECに搭載されているセンサーモジュールを、ほかの自転車に搭載できるようにしたもの。こちらはセンサー入りスノーボードバインディング「SNOW-1」と同じ「XON」シリーズとなっている。センサーはORBITRECと同等だが、1回のツーリングごとに充電することを想定したORBITRECと異なり、RIDE-1は数週間ごとの充電でも利用できるよう、より大容量のバッテリーが内蔵されている。こちらは200ドル(約2万4000円)以内を想定しているとのこと。

 「Tipron」はプロジェクターを内蔵した自走式のホームロボット。変形機構を有し、非使用状態では背が低くなり、投影時には背が高くなる。投影部は3軸の回転が可能で、自由な角度で投影ができる。AndroidベースのOSを搭載し、インターネット上のコンテンツなどを出力できる。

 価格は検討段階で、量産台数やビジネスモデルにもよるが、1000~2000ドル(約12~24万円)を想定しているという。

Tipron
Tipron、収納形態

Logbar、指輪の次はウェアラブル翻訳機「ili」

ili

 指輪型コントロールデバイス「Ring」で知られる日本のスタートアップ企業Logbarは、新製品の「ili」を展示している。これはネックレス型のウェアラブルデバイスで、会話の翻訳機能が搭載されている。ネックレスのボタンを押して話しかけると、目的の言語に翻訳されて音声が出力されるようになっている。

 スマートフォンや通信ネットワークとの接続は不要で、音声認識から翻訳まで、すべてを端末内で処理している。翻訳できる会話は主に旅行者を想定してものに限定され、ビジネス会話の翻訳などは想定していないという。

 第1バージョンでは英語と日本語、中国語、第2バージョンではフランス語とタイ語、韓国語、第3バージョンではスペイン語とイタリア語、アラブ語への対応を予定しているという。無線通信機能はないが、USBでパソコンと接続し、言語や語彙を追加インストールできるという。

 発売は今年の夏の予定。価格は検討中の段階だが、3月ごろに値段などが発表される見込みとのこと。

NuAns NEOも実機を展示

NuAns NEO

 日本のTrinityは、昨年発表したWindows 10搭載スマートフォン「NuAns NEO」を展示している。日本ではすでに発表済みの製品だが、同会場でストレートにスマートフォンを展示するのはレノボぐらいということもあり、NEOは凝ったデザインの端末だけあって、来場者の注目を集めていた。

オムロンはウェアラブル血圧計を展示

 オムロンはウェアラブル血圧計「PROJECT ZERO」シリーズを展示している。「UPPER ARM BPM」は普通の血圧計のように上腕に装着するが、「WRIST BPM」は腕時計のようなリストバンド型になっている。血圧だけでなく、歩数などのアクティビティトラッキング、睡眠トラッキングの機能も搭載し、常時装着するようなタイプとなっている。メインの表示部の反対側、バンドのバックル部分にも表示部があり、そこを押さえつけることで血圧を測定する。2016年中に製品化予定で、200ドル(約2万4000円)程度の見込み。

WRIST BPM
バンドのバックル部分

おでこに当てて体温計測する「Thermo」

Thermo

 Withingsはネット連動する体温計「Thermo」を展示している。これはおでこに当てて2秒ほどで体温を測定できる機器で、測定した体温はWi-Fi経由でアプリと同期し、体温と体調の履歴を簡単に管理できる。複数の人を登録しておき、セレクトボタンで切り替えることで、1台で複数人の管理にも対応できる。

何が写ったか記録/通知するカメラ「Presence」

Presence

 個人向けの気象観測IoT機器などを展開するNetatmoは、屋外設置が可能なホームセキュリティカメラ「Presence」を出展している。写り込んだものを解析する機能が搭載されており、映像として記録するだけでなく、人や車、動物が写り込んだとき、その時刻とともにログを記録したり、特定の条件下でスマートフォンに通知したりできる。解析機能などはサーバーが不要で、月額料金などなしに利用できる。照明も内蔵され、赤外線投光による暗視カメラとしても使える。

 Netatmoは昨年のCESで屋内設置向けのホームセキュリティカメラ「Welcome」を出展している。Welcomeは顔認識機能を内蔵し、家族の誰が帰宅したかなどを記録・通知できたが、想定する被写体から比較的遠くに設置するPresenceには個人の顔を判別する機能は搭載されていない。

賢くなったbeddit

beddit SMART。新製品もデザインは旧製品と同じ

 bedditは睡眠トラッカーの新製品「beddit SMART」を展示している。bedditシリーズはベッドのシーツの下に敷く睡眠トラッカー。beddit SMARTはより高度な睡眠の計測・解析が行なえるようになっている。bedditシリーズはApple StoreやAmazonを通じてワールドワイドに展開しており、前製品のbedditは日本のApple Storeなどでも購入できる。新製品も同様にワールドワイドで展開する。

ぐにゃぐにゃ曲がるウェアラブルカメラ「pic」

pic

 「pic」はフレキシブルなボディを持つウェアラブルカメラ。カメラ自体は8メガピクセルで1080p動画撮影と一般的な性能となっているが、本体が細長く、胴体部分が自由に曲げられる素材になっていて、腕やカバン、家具などに巻き付けて簡単に固定できるのが特徴となっている。デザインもナゾの生物っぽいイメージで、頭の部分を交換して毛を生やしたりすることもできる。

マッスル強化向けデバイス「GYMWATCH」

左上腕に巻かれているのがGYMWATCH

 アクティビティトラッカー製品というと、ランニングに代表される有酸素運動向けのものが多いが、「GYMWATCH」はダンベル運動など、筋力トレーニングにフォーカスしている。連動するスマートフォン上で運動の状態を確認でき、プログラム通りに動いてないと警告される、といった機能が利用できる。こちらはすでに発売中。

ジャンプ以外の運動にも対応した「VERT 2」

ジャンプ以外にも測定できるようになったが、飛ぶ気まんまんのVERT 2のデモ

 「VERT 2」は激しい運動の運動強度を測定できるアクティビティトラッカー製品。昨年のCESにも出展していた前製品「VERT」は垂直跳びにフォーカスしていたが、VERT 2は垂直跳び以外の激しい運動にも対応している。腰巻き状のバンドの腹部分に機器を内蔵し、血流も測定できるという。

カスタマイズ可能なリストバンドデバイス「NEX」

文字通り数珠つなぎのNEX

 「NEX」はユーザーがカスタマイズできるリストバンド型のウェアラブルデバイス。5つのモジュールを数珠つなぎに連結できるようになっており、タッチセンサーやLED、バイブレーションモーターが内蔵されている。これらはどのように連携させるかを設定できる。さまざまなWebサービスを連携させられる「IFTTT」にも対応しており、音楽再生のコントロールやガレージの開閉など、さまざまな用途への応用が可能だという。3月に149.99ドル(約1万8000円)で発売予定。

睡眠トラッキングが可能になったヘッドバンド型スピーカー

HARMONYもデザインは他製品とほぼ同じヘッドバンド型

 ヘッドバンド型スピーカーのSleepPhonesは、睡眠トラッキング機能を搭載した新製品「HARMONY」を展示している。フリース地の柔らかいヘッドバンドの中にスピーカーとセンサー、通信モジュールが内蔵されており、装着したまま寝ることができる。スピーカーだけの製品は有線・無線でさまざまな製品がラインナップされていたが、睡眠トラッキング機能は今回が初搭載となる。

スワイプ・プレスに対応するBluetooth MIDIキーボード

Seaboard RISE

 ROLIの「Seaboard RISE」はCES Innovation AwardのBest of Innovationsを受賞しているMIDIデバイスだ。フニフニとした独特な触感のキーボードとなっているが、表面のスワイプやプレス、押し込みの強さや勢いなども検出し、独特の音を出すことができる。プロや本格的に音楽を楽しむ人向けのデバイスで、価格は799.99ドル(約9万6000円)で発売中。Bluetoothでスマートフォンなどと接続できるほか、パソコン用のアプリも提供されている。スマートフォンアプリ「NOISE」を使うと、スマートフォン上で似た操作を使えるほか、iPhone 6s/6s Plusならばプレス操作も再現できる。

白根 雅彦