【CommunicAsia2010】
ドコモ山下氏が語る2010年後半のスマートフォン戦略


 4月に発売して以降、売れ行きが好調なNTTドコモの「Xperia」。6月15日からシンガポールで開催された「CommunicAsia2010」では、NTTドコモからアジアに向けて、同社のスマートフォン戦略が語られた。

 今後、NTTドコモではスマートフォン市場でどのように攻めていくつもりなのか。同社スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 山下哲也担当部長に話を聞いた。

NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長の山下哲也氏

――4月に発売が開始されたXperiaの売れ行きが好調なようですが、人気の理由をどのように分析されているのでしょうか。

 予想以上に、多くの人に店頭でXperiaを手にとってもらえているようです。昨年、発売したHT-03Aに比べると、これまでAndroidやスマートフォンに感心がなかった人にも認知されてきています。

 やはり、興味をひいているのが、直感的に操作できる大画面のようです。いろいろな機能が詰め込まれていながら、タッチ操作によって簡単に使える。これまでのケータイにも様々なサービスを搭載してきましたが、どうしても『使う』という面でハードルが残っていました。その点、機能の使いやすさという面では、スマートフォンはハードルを越えたのではないでしょうか。

――Xperiaに対して、ユーザーから不満点などは上がっているのでしょうか。

 一番には、やはりiモードメールをスマートフォンでも使いたいという声を聞いています。現状、Xperia1台だけの契約ではiモードメールは使えませんが、徐々に1台持ちが広まったことで、Xperiaでiモードメールを使いたいユーザーが多くなってきたようです。

――先日の夏商戦モデル発表会では、「SPモード」の概要が明らかにされました。

 SPモードは、iモードに成り代わるサービス基盤というよりも、スマートフォン向けに、基本的なメールやコンテンツ課金サービスを簡単に提供するために環境整備を進めてきたものです。SPモードを契約すれば、様々なサービスが簡単に使える。スマートフォンユーザーに必要な基盤としての位置づけになっています。

――ドコモのスマートフォンユーザーからすると、プッシュ配信によるiモードメールの対応が長らく待たれていたと思います。スマートフォン対応がかなり遅れた印象があるのですが、背景には何があったのでしょうか。

 iモードメールだけであれば、プロトコルの対応をすれば導入は可能でした。しかし、iモードというサービスは、メールとウェブ、アプリなどの機能が相互リンクしているので、メールだけを取り出して提供するのはハードルが高かったのです。コンテンツプロバイダー側も、iモードメールサービスとの連携をベースにしているため、こちらも整合性を取る必要が出てきます。iモードメールをオープンな環境に移行しようとすると、これまでのサービスとの調整が必要なため時間がかかっていました。

――夏商戦で各社からスマートフォンが登場し、一部には見た目も機能も似通ったモデルが複数のキャリアから発表されてきています。今後、どのような点でキャリアとしては差別化していくのでしょうか。

 これまでは、端末そのものがキャリアとしての差異化の柱でした。しかし、これからはスマートフォンが各キャリア共通の端末として登場し、さらにSIMロックフリーの時代になってくればくるほど、キャリアとしての差異化は難しいと思っています。

 そんな中、ユーザーが実際に使うときにどういう経験を届けられるかが重要になってくるとか思います。どこででも使える、あるいはサービスが簡単に購入できるかなど、端末に紐づく目に見えない部分での競争が、キャリア間で激しくなっていくと見ています。

――夏商戦モデル発表会で、秋頃にサムスン電子「Galaxy S」の投入が明らかになりました。Galaxy Sにはどのような点を期待していますか。

 秋の発売時には、世の中で最もハイエンドで、最もリッチなグラフィックの快適な端末として提供できると思っています。ドコモの中でも、フラッグシップ的な位置づけになるのではないでしょうか。

――海外では、ソニー・エリクソンがXperia X10 miniなど小型のスマートフォンを投入しています。ドコモでも採用する予定はあったりするのでしょうか。

 ソニー・エリクソンがXperiaシリーズを強化しているのは充分に理解しています。また、ドコモでXperiaが好調に売れているという事実もあります。ソニー・エリクソンが計画している商品バリエーションを見つつ、ドコモとしては他のメーカーの商品群をミックスして、全体のラインナップを考えていくつもりです。ただ、Xperia X10 miniについて言えば、全くの白紙の状態です。

――iPadのようにタブレット型端末の市場も形成されようとしています。ドコモとしてもタブレット型PCなどに取り組む予定はあるのでしょうか。

 2月にバルセロナで開催されたMWCでも、いくつものタグレット型端末のプロトタイプが展示されていました。それらにはAndroidがOSとして提供されています。魅力を感じるのは商品の多様性で、家電もクルマも単一の商品がマジョリティになることは難しいです。iPadはフラッグシップになりつつありますが、タブレット型端末の世界でも多様性を確保していきたい。Android OSによって様々なデバイスが出てくるのであれば、積極的にサポートをしていきたいですね。

――夏商戦はiPhone4がかなり強そうですが、対抗する手段などはありますでしょうか。

 iPhoneのユーザーやその周辺の人たちが、マルチタスクがいかに便利なものだということを理解してくれると思います。やはりシングルタスクはイライラとしてしまい、マルチタスクがないと不便に感じます。Androidであれば、マルチタスクでさまざまなアプリを渡り歩いて使いこなせます。iPhone 4によって、マルチタスクの認知が広まると思います。iPhone 4は競合ではありますが、売れるのは喜ばしいことでもあります。スマートフォン市場が大きくなることで、Android端末にも追い風になるのではないでしょうか。

――年末に向けて、スマートフォンラインナップは拡充されていきそうですか?

 もう、この流れは止まりません。秋冬から、市場の勢いに弾みがつけば、さらに世界中から端末を調達して積極的に展開していきます。日本市場がどう反応するかを見つつ、攻めていくつもりです。

――ありがとうございました。

 



(石川 温)

2010/6/18/ 17:55