【Embedded Technology 2009】
NEC、LED照明を使った可視光通信システムなどを参考出品


 NECブースでは、LED照明を使って動画の無線伝送を実現する可視光通信システムなどが参考出品された。

可視光通信システム

 LED照明とは、照明器具の発光源などにLEDを採用したもので、可視光とはその名の通り“目で見える光”のこと。LED照明は、肉眼では発光しているように見えるが、点灯と消灯を高速で繰り返し点滅発光している。今回の可視光通信システムは、この仕組みを利用して、点灯と消灯を「1」と「0」に置き換えることでデジタル通信を実現している。

 伝送速度は5Mbpsで、通常の照明器具同様に電磁波の影響はないという。また、可視光を利用しているため、無線技術で通信できる範囲が視認できる。今回のデモは、映像データの単純送信となるが、色の波長が異なるRGBを利用して、データの多重化なども想定されているという。

 今回のデモは、室内のLED照明から送られたデータを受信機で受け、パソコンに映像を伝送するというものだった。受信機は、ポータブル音楽プレーヤーや携帯電話などを想定したもの。ブースの担当者によれば、今回はLED照明器具だが、光の点滅を利用した技術となるため、LEDを光源にしたものであればさまざまな応用が考えられるという。たとえば、デジタルサイネージや車のヘッドライド、信号機ディスプレイのバックライトなどがそうだ。

 カメラを使って、こうしたデータを受信することが想定されているが、現状の携帯電話ではフレームレートが最大で30fps程度となる。フレームレートが高いほど光の点滅が認識でき、伝送できる量が増える仕組みとなるため、現状の携帯電話の伝送データ量は非常に小さく、1.5bps程度になってしまうという。

 可視光通信システムは、慶應大を中心とした可視光通信コンソーシアム(VLCC)で標準化作業が進められているという。IEEEでは可視光通信は「IEEE802.15.7」という規格になるという。

 担当者によれば、可視光通信の現在課題となっているのが、キラーアプリが存在しないことだという。可視光通信でなければならない状況が見つけられていないとのこと。担当者は、宇宙での無線通信などへの応用も視野に入れて開発を進めていくとしていた。


可視光通信ボード。上部に2つある丸い部分が受信部。2つあるが、実際には1つで受信できるキャプション

FeliCaやワンセグを使ったソリューション

業務用ユビキタス端末
マルチメディア端末ソリューション・ディスプレイ下部にFeliCaを内蔵

 ソリューション関係のデモでは、FeliCa搭載の情報端末を使った「マルチメディア端末ソリューション」、エリアワンセグを活用した「ワンセグ配信ソリューション」などのデモを行っていた。

 「マルチメディア端末ソリューション」は、Windows CE搭載のタッチパネル式情報端末に、おサイフケータイなどで採用されているFeliCaモジュールや人感センサーなどを搭載したもの。端末を配信サーバーなどを含めたソリューションとして提供される予定。

 スーパーなどの店頭でこの情報端末におサイフケータイなどをかざすと、目の前の食材を使ったレシピ情報が配信されたり、その場で当たるクーポンなどが提供されたりと、おサイフケータイをトリガーに情報を取得するというもの。ASP形式での提供となるため、中小規模の小売店などでも利用できるという。

 また、マンションデベロッパーなどが、この仕組みを利用して、マンション各部屋に配備された情報端末として活用する動きも出てきているそうで、幅広い利用方法に期待できそうだ。

 エリアワンセグによるワンセグ配信ソリューションは、微弱電波を利用した無線免許の要らない放送や、実験局免許を使った放送、有線放送までを幅広く対応できる配信ソリューションで、ブースでは、ライブ映像の配信なども行われていた。

 専用筐体を使った館内映像配信端末として利用したり、ワンセグ対応携帯向けの販促ツールとしても活用でき、ワンセグデータ放送なども配信できる。NECではこのソリューションの実証実験を展開しており、2008年12月には国立科学博物館において展示内容の補助コンテンツとして展開されたほか、成田空港のハワイ便では搭乗ゲートに設置し、ハワイにこれから向かう旅行者に対して、旅行ガイドなどを配信したという。

 このほか、Windows CE 5.0を搭載した業務用ユビキタス端末なども展示されていた。横スライド式のPDA型端末で、4.1型液晶などを搭載。QWERTY配列のキーボードなどを搭載している。

ワンセグ配信ソリューションデータ放送を配信できる

 



(津田 啓夢)

2009/11/19/ 21:40