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【GSMA Mobile Asia Congress 2009】
NTTドコモがLTEに向けた取り組みを解説


 11月18日、19日の2日間、中華人民共和国の香港特別行政区で「GSMA Mobile Asia Congress 2009」が開催されている。18日のキーノート・プレゼンテーションには、NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏のほか、チャイナモバイル(中国移動)CEOの王建宙氏や、CSL(香港)のCEO、タレク・ロビアティ氏らが登壇。LTEに向けた各社の取り組みを紹介するとともに、パネルディスカッションを行った。ここでは、ドコモの講演を中心にイベントの模様をレポートしていく。また、イベント後に山田氏への単独インタビューを行ったので、そちらも合わせて参照いただきたい。

LTEのエリア展開と動画サービス

NTTドコモ代表取締役社長、山田隆持氏

 講演の冒頭、山田氏は世界の第3世代(3G)携帯電話の普及率を挙げ、データ通信の伸びが大きくなっていくことを指摘。「3Gの加入者は現在16%だが、2013年には20〜30億人、全体の約40%にまで成長するのではないか」と語った。

 すでに日本ではデータ通信の伸びが著しく、ドコモでは、「売上の42%を占める状況になってきている」という。こうしたデータトラフィックの増加を受け、ドコモは、2010年12月に“世界の先頭集団”としてLTEを導入する。エリアはW-CDMA(HADPA、HSUPA)にオーバーレイする形で、「需要の高いところから広げていく」という。

 また、講演では、これまで同様、データ端末を2010年に、音声端末を2011年に投入するロードマップも披露した。

世界の3G普及とデータ収入 ドコモのLTEの立ち上げイメージ

 これに続けて山田氏は「伝送路が大容量のため、高速で遅延も少ない」とLTEの特徴を挙げ、その上で、端末やサービスが重要になってくると話した。現時点での取り組みのなかにも、LTE時代を見据えたものがあるといい、実例として動画サービスの「BeeTV」を紹介した。

 山田氏は「有料会員が80万人を超えた」と話し、「携帯の画面は非常に小さく、映画をそのまま持ってきても主人公が見えなくなってしまう。そこで、BeeTVでは、主人公を真ん中にくるように新たに作っている」といった、ケータイならではの工夫を披露した。今後は、観光案内やレストラン案内、フィットネス動画といった“生活密着型”の動画に注力していく方針だ。

 一方でLTEには「低遅延」という特徴もあり、ドコモではこれを活かしたサービスも構想しているという。山田氏は「処理をネットワーク側に任せても、LTEならあたかも端末で処理したかのように思っていただける」といい、「これがどんどん進んでいくと、クラウドやシンクライアントにも繋がってくる」との見方を示した。

ドコモのマルチメディアサービス シンクライアント化の説明

オープンOS端末などの取り組み

ドコモのスマートフォンに対する取り組み

 端末のオープンOS化も、将来を見据えたドコモの取り組みの1つである。「これまでの携帯電話は“電話”が進化したものだが、オープンOSのスマートフォンはパソコンからきたもの。ゆくゆくは融合していくが、まだまだハードルがある」とし、そのギャップを埋める取り組みとして、今年度にオープン予定のアプリケーションストアを紹介。「総合モールを作っていきたい。これは、いわばアプリのデパート。欲しいものを並べて、それを買っていただけるようにする」と意気込みを語った。

 山田氏は、このほかにも、行動支援サービスの「iコンシェル」や、融合サービスの「フェムトセル」といった取り組みも説明した。また、インドで展開している「タタ・ドコモ」については、「これからは、バリュー・アッディッド・サービス(付加価値サービス)に注力していきたい」と話し、タタ・ドコモでもiチャネルを始めたことなどを解説した。

 なお、チャイナモバイルは現行方式の「TD-SCDMA」を発展させた「TD-LTE」や、Androidをベースにした「OPhone」を、CSLは最大21Mbpsを誇る「Next G(HSPA+)」と、LTEに向けたロードマップなどについての講演を行っている。

チャイナモバイルCEO、王建宙氏 CSL CEO、タレク・ロビアティ氏
スライドでOPhoneに対する取り組みを紹介 香港ではHSPA+の「Next G」が始まっている

“土管”からの脱却を目指すアジアのケータイ事業者

 講演後には、3社の代表によるパネルディスカッションが開催された。冒頭で、モデレーターのダンカン・クラーク氏(コンサルティング会社のBDA China会長)が、増大するトラフィックと通信規制に触れ、データ通信でトップを走る日本市場の状況を質問した。

 これに対し山田氏は「LTEを導入すれば、電波の使用効率が格段に良くなり、1パケット辺りの単価も落ちるため、積極的に進めていきたい」とLTEの意義を強調。今後も、動画サービスに注力し、パケットARPUを伸ばしていく方針を示した。

 また、ダンカン氏の「LTEでの音声はどうするのか」という問いかけには、チャイナモバイルの王氏が「IMSベースの『ボイスオーバーLTE』が、ほとんどのオペレーターの目標とするところだが、当面、音声には既存のネットワークを使うことになる」と答えた。

パネルディスカッションの様子

 一方、「キャリアは土管屋になるのか」というテーマに対しては、3社それぞれの事情が垣間見えた。まず、CSLのタレク氏は「土管になるとインフラはやがて崩壊する。サービス要素を管理することで調整していきたい」と述べる一方、「ソフトウェアのビジネスは通信会社と全く違う」とキャリアが上位レイヤーを手がける難しさを漏らした。

 対するチャイナモバイルの王氏は、「我々はお客さまを熟知している。その要求にかなえつつ、マーケットを様々なコンテンツプロバイダーに提供することが大切」と、キャリアならではの顧客接点や、OPhoneで導入するマーケットなどが付加価値につながると語った。

 同様に、ドコモの山田氏は「端末とネットワークのコラボレーションをやっていきたい。サービスをネットワーク側で処理できるようになれば、高度なサービスをリーズナブルに提供できる」と、ケータイのシンクライアント化構想を改めて詳細に解説。「土管化を避けるには付加価値が重要。王氏の言うように、お客さまを一番知っており、きめ細やかな配慮が出来るのもキャリアの強み」と強調した。

 さらに、インターネットの無料モデルがケータイの世界にも訪れつつあることに対し、CSLのタレク氏は「ネットは無料ではなく、そう見えるだけ。最終的には誰かがネットワークを動かしている」と断言し、アメリカなどで過度に進むオープン化に対して警鐘を鳴らした。これに対してドコモの山田氏は、「BeeTVは有料で1カ月315円。費用と中身のバランスが取れていれば有料でもいい、となる」と、自社の経験を元に、市場が無料一辺倒にはならないとの見解を示している。

ドコモの山田氏が語るLTE時代のケータイ

 キーノート・プレゼンテーション終了後、ドコモの山田氏に単独インタビューを行い、LTE時代に向けた取り組みをより詳細にうかがうことができた。そこで、ここからは、一問一答形式でインタビューの模様をお伝えしていく。

インタビューに答えてくれた山田氏

――まず、ドコモのLTEのロードマップや、普及に向けた意気込みを改めてお聞かせください。

山田氏
 私どもは2010年12月にカード型を、2011年にハンドセットを入れたいと思っています。どのくらい伸ばすのかという点ですが、総務省に提出した資料では2014年度でだいたいお客さまの数が30%程度になることを想定しています。一応、3500億円という設備投資もそこから算定しました。ただ、基本的には“需要対応”なんです。設備だけが先に行き過ぎてもだめだし、設備が遅れてもだめだし、ということで、需要を見ながらやっていきたい。

 ドコモは品質のよさを認めてもらっていますが、だからこそお客さまの評価はかなりシビアなはずなんです。“動画のドコモ”を広めても、その結果「品質が落ちた」と言われてはだめなんですね。最初は東京23区や大阪、福岡などの大都市からですが、パケットの量を見ながら、なんとしても広げていきます。

――そうなると、都市部とそれ以外の地域で、今以上に通信環境の差が広がるということもありえるのでしょうか。

山田氏
 3GもHSPAで7.2Mbpsなので、そんなに遅くはありません。LTEは最大37.5Mbpsですが、お客さまが満足していただけるというレベルであれば、数Mbps出ていれば十分だと思います。一番困るのは、HSPAで無線区間が混んで「なかなかデータが通らないよね」と言われることで、それは何としても避けたい。ですから、地域で格差をつけるつもりは全くありません。

――低遅延でシンクライアント的なサービスは、LTEのエリア整備が進んでいない地域でも使えるのでしょうか。

山田氏
 それはHSPAでもいいのですが、色々なサービスをやっていき、LTEなら一番快適に動くというものを出していきたいと思っています。

――ネットワークだけでなく、サービスもオーバーレイしていくということですね。

山田氏
 我々は、ネットワークは“黒子”だと思っています。色々なサービスを導入したとき、お客さまにご不便をおかけしないことが一番重要ですからね。

――オープンOSについての取り組みも紹介されましたが、チャイナモバイルのOPhoneのように、独自のカスタマイズを施すという選択肢も想定されているのでしょうか。

山田氏
 ゆくゆくはそうしたいと思っていますが、道筋があります。今は、オープンアプリケーションを取り込むためのもので、ハンドセットはグローバル型でという段階です。それをより使いやすくするために、アプリケーションの総合マーケットを作りたい。これは、日本のアプリを作る方にも役立ちますよね? そういうことをやっていく中で、iモードメールにも対応したいと思います。現時点では「iモード.net」だけで、iモードメールそのものは使えませんが、いわゆるスマートフォンに入れることも、来年ぐらいにできるよう頑張っています。あと、メールだけでなく、「お預かりサービス」系も、ぜひやっていきたいですね。今、お客さまに使っていただいているものを、徐々に入れていければと思っています。

 そのうちに、どこかでiモードと融合するかもしれませんが、これにはハードルをいくつか飛び越える必要があります。なぜかというと、iモードはやはり電話から進化した端末で、電話が使えなくなるとすごく困ってしまいます。繋がらないだけで、待ち合わせできない人がわんさか出てしますからね(笑)。例えば、スマートフォンだと悪意のある人にウィルスを埋め込まれただけで、アウトになってしまいますよね。ですから、融合する際は、ベストエフォートではなく、ある程度ギャランティー型にしていき、なおかつオープンアプリケーションにしなければならない。これは大きな課題で、真剣に取り組んでいきます。

――ところで、世界に目を向けるとタタ・ドコモが非常に好調だとうかがっています。iチャネルも導入したとのことでしたが、評価はいかがでしょうか。

山田氏
 タタ・ドコモが絶好調だというのは、新たなコンセプト、サービスもありますが、「秒課金」が大きいですね。というよりも、(現状の好調な純増は)ほとんどが秒課金だと思います。タタは元々品質がよいと評判で、なおかつそこに秒課金が入ったのが大きかった。さらにドコモになってバリュー・アッディッド・サービスもやってくれそうというところで、お客さまが加入してくれている状況です。

――付加価値サービスが広がれば、日本メーカーの端末の海外進出の一助になるような気がしますが、いかがでしょう。

山田氏
 インドで売れる端末の価格も考えなければいけません。あちらはARPUが数ドルですからね。(今の端末価格だと)大きなパイは狙えません。ただ、富裕層を狙った高機能端末はあると思います。私どもは台湾でF905iを出しましたが、ああいう形ですね。実はT-01Aも、スペインのテレフォニカに我々が推奨したんです。タタの場合、今すぐにこれができるというものはありませんが、ハイエンドをターゲットに入れて考えています。

――本日の講演で、「ボイスオーバーLTE」という話題が出ました。先日、ベライゾンなどがLTE上で音声通話を実現する規格を発表しましたが、これに対する見解をお聞かせください。

山田氏
 最初は、データをLTEで、音声を3Gでやりたいと思っています。将来的に、音声をLTEに乗せることはあるかもしれませんが、先ほどお話ししたように、エリアをオーバーレイしていくので、効率を考えると当面は音声に3Gを使っていくことになるでしょう。

――本日はどうもありがとうございました。

 

(石野 純也)

2009/11/19/ 13:04

 

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