【Interop Tokyo 2013】

Wi-Fi案内アプリや11acルーター、スマホ連携サイネージなど

 6月12日~14日の3日間、幕張メッセにおいてインターネットやクラウド関連の展示会「Interop Tokyo 2013」が開催されている。本稿では、モバイル関連の動向を中心に会場ブースの模様をお伝えする。

ナビタイム

 今年のInteropでは、シスコシステムズやナビタイムジャパン、三井情報らが協力して、Wi-Fiの位置情報分析技術を利用したAndroidアプリを配信している。会場には無料のWi-Fiアクセスポイントが設置されており、アプリを利用すると屋内展示会場の簡易ナビが体験できる。

 また、来場者参加型のゲーム企画なども用意されている。このアプリはフィールド実験用アプリとなり、Wi-Fi位置情報を利用した来場者行動分析ツールによって、滞在状況がモニタリングされている。モニタリング状況はシスコブースで確認できる。

NECアクセステクニカ

 NECブースでは、IEEE802.11ac対応ルーター各製品を展示していた。今年3月、総務省は5GHz帯でのIEEE802.11ac(Draft)を認可し、以降、各メーカーから続々と対応製品が投入されている。NECアクセステクニカは、3×3 MIMO(3つのアンテナを利用する)で最大1.3Gbpsを実現する「AtermWG1800HP」、2×2 MIMO(2つのアンテナを利用する)で最大867Mbpsの「AtermWG1400HP」といった11ac Draft対応ルーターを投入している。

 また、11ac Draftルーターのエントリー向けモデルとなる「AtermWF800HP」が11日に発表され、今回のイベントで初お披露されている。こちらの通信速度は最大で433Mbpsとなる。6月20日発売。

 今夏のスマートフォンは11ac Draftに対応しているモデルが複数ある。対応スマートフォンはいずれもアンテナを1つ利用するモデルとなるため、自宅でのネット利用がスマートフォン中心ならば「AtermWF800HP」という選択もありそうだ。会場説明員によると、Draft版ではあるが、11acが正式に認可された場合は、ファームウェアの更新で対応できるという。

AtermWF800HP
ルーターが透明な枠にはまっていた。この枠のサイズがバッファロー製の11acルーターをイメージしたものという

 NECアクセステクニカの11ac Draft対応ルーターは、他社よりも小型化を実現している。これはNEC中央研究所の「μ(マイクロ) SRアンテナ」技術、電磁ノイズを削減する「μ EBG構造」技術を採用しているため。説明員は、性能を落とさずに小型化した点をアピールしていた。このほか、NTTドコモのLTE網に対応し、MVNO向けに供給されているLTE対応Wi-Fiルーター「AtermMR02LN」なども展示されていた。

AtermMR02LN

サイネージ

 NTTグループのデジタルサイネージ関連の展示では、スマートフォンと連携し、災害時にはスマートフォンがデジタルサイネージに情報を転送するというシステムが紹介されていた。

 平時は複数のスマートフォンと連携するデジタルサイネージとして機能し、デジタルサイネージ周辺のWi-Fiに接続してサイネージから情報が取得できる。災害時など、デジタルサイネージのWANが不通になると、サイネージ側がそれまで蓄積していた周辺口コミ情報を表示して、周辺が現在どういった状況にあるのかを案内する。情報はいずれもHTML5で記述されており、スマートフォン側でも情報を確認できる。いわば、地域専用の災害用掲示板になるというわけだ。

 さらに、災害避難などで人が移動し、別の地域のデジタルサイネージに接続すると、利用者が他の地域で取得していた情報(キャッシュ)が自動的に新たなサイネージに転送される。災害によるネットワーク障害などで情報が分断される中で、ユーザーが情報の運び手となり、情報共有が図られる。

 研究段階の現時点では、個人情報の転送などセキュリティについては考慮されていない。なお、このプロジェクトは総務省からの受託研究、NTTがこのプロジェクトを手がけて2年が経つ。すでに実験環境ではシステムは完成しており、近く実証実験を行う計画という。

放送事業者が考えるセカンドスクリーン

 マルチスクリーン型放送研究会(マルケン)のブースでは、テレビを観ながらスマートフォンやタブレット端末などを利用する“セカンドスクリーン”サービスに関する提案が行われていた。

 テレビを観ながらTwitterなどのソーシャルサービスを利用したことはあるだろうか? 国内の瞬間最多Twitter投稿は、テレビ放映されたアニメ「天空の城 ラピュタ」で一斉に放たれた「バルス!」であり、ネットニュースを中心に大きな話題となった。また、野球やサッカーのテレビ中継でもTwitter投稿が増えるように、テレビとモバイル機器の親和性は高いと言えるのかもしれない。

 マルケンは、放送事業者側がこのセカンドスクリーン向けのサービスを主体的に考えていこうというもの。たとえば、地上デジタル放送に指定のデータを流すことで、スマートフォン側のアプリに自動的に番組情報サイトを表示させたり、番組放送内容から商品情報や購入ページ、クーポン情報などを提供したり、といったことが検討されているという。

 今回のデモは、スマートフォン向けアプリでテレビチャンネルを切り替え、放送波に仕込まれたIPDC(IP Data Cast)情報を受信機が受けて、スマートフォンにコンテンツを表示させるというもの。受信機とスマートフォンはWi-Fi接続されている。また、テレビリモコンでチャンネルを切り替えると、自動的にスマートフォン側が番組情報に切り替わるというデモも披露された。

 展示を説明した毎日放送の経営戦略室 マネージャーの阿部学氏は、「受信の方法はIPDCでなくてもいい、問わない」と話していた。セカンドスクリーンをうまくテレビと連動させる、それを放送事業者が主体的に検討することで、利用者に手軽で利便性が高く、かつ放送事業者にとっても新たな収益が期待できる仕組みとしたい考えだ。

その他

 ソリトンシステムズのブースでは、スマートフォンで映像をストリーミング配信する映像中継ソリューションが展示されていた。Android版に続き、iOS版も登場した。

 このシステムは、東日本大震災以降、消防や警察、自治体、一般事業者などで採用されている。災害現場などで3GやLTE、Wi-Fiなどで映像を配信し、センター側のパソコンでそれを管理する。映像中継中は、現地とセンターを音声で結び、刻々と変化する通信環境に合わせて、送信する映像品質を制御できる。岡山県の導入事例では、救急車から病院にいる医師に映像を送り、負傷者の救命率を高める取り組みがなされているという。導入費用は120万円~。

 生態認証ソリューションを展開するディー・ディー・エス(DDS)のブースでは、Android端末のアプリ起動に利用できる外付けタイプの指紋認証ユニットが紹介されていた。サーバー側で認証させたり、クライアント端末側で認証させたりできる。

 このほか、ファーウェイのブースでは、ハイブリッド型の屋外電源システムが展示されていた。「PowerCube1000」シリーズは、ディーゼル燃料、太陽光発電などとのハイブリット電源で、電力供給の少ないエリアの基地局を想定したもの。電源出力は48VDCで、3000Wまで拡張できる。また、太陽光発電だけで動作する、監視カメラおよびWi-Fiアクセスポイント用の「PowerCube 500」も紹介されていた。

津田 啓夢