【Interop Tokyo 2013】

ドコモ杉村氏、第三のモバイルOSを目指す「Tizen」を語る

NTTドコモ マーケティング部 担当部長 戦略アライアンス担当で、Tizen Association Chairmanの杉村領一氏

 「Interop Tokyo 2013」の併設イベント「スマートデバイスジャパン 2013」の基調講演では、NTTドコモ マーケティング部 担当部長 戦略アライアンス担当で、Tizen Association Chairmanの杉村領一氏が登壇し、新たなモバイルOSとして開発されている「Tizen」(タイゼン)について語った。

世界レベルのサービスに影響力を持てないドコモの葛藤

 「Tizen」は、iOSやAndroidといったようなモバイル向けの新たなOSを開発・提供する取り組み。ドコモをはじめ仏Orangeといったキャリアに加え、端末メーカーではサムスン電子やHuawei、またインテルやジャガーランドローバー(自動車)などのメーカーも支持を表明、トヨタ、ホンダも検討を表明している。NTTドコモはすでに、2013年度の下半期にTizen搭載端末を投入すると明らかにしている。

 これまではドコモの永田清人氏がTizenの代表を務めてきたが、5月初旬に発表された人事異動で、杉村領一氏がTizenの代表を引き継ぐことが明らかにされていた。

 その杉村氏は、端末のOSの歴史を振り返った上で、スマートフォンの販売台数が増加し、アジア太平洋地域は依然として急成長している地域であることを示す。

 一方で、世界中で事業を展開しているキャリアが獲得している7億超、3億超といったユーザー数、さらにはFacebookやGoogleといった世界中に影響力を持つサービスを展開する企業のユーザー数などと比較すると、ドコモのユーザー数は目立ったものではないとし、「世界に対して、大きな動きを変えられるかというと、非常に難しい。ファーイースト(極東)のひとつでしかなく、新しいチャレンジをするにしても、選択肢は限られている。我々が考えるものをどうやって提供するのか。(世界の中では)決して大きな存在ではない」と語る。

 また、スマートフォンのグローバル市場では端末メーカーのほとんどが海外メーカーで、こうした数字を象徴的な例として示しながら「日本だけで使えればいいというのはダメで、世界の人に価値を提供しないといけない状況。これはTizenでも同じで、サービス・セントリック(サービス中心)で、端末は手段に過ぎない。プラットフォームは(モバイル端末以外も含めた)クロスプラットフォームでなければならず、これにはクラウドも重要」と語り、世界のトレンドを取り込んで市場の大きさを確保しつつ、自社のユーザー向けに最適化することも重要とする。

 杉村氏は、「さらにラッキーなことに、HTML5が標準化された。あと何年もかかると言われたこともあったが、このHTML5を中心に、いろんなサービスをクロスデバイスでつなぐのが正しい道ではないか」と、HTML5の標準化によりサービスプラットフォームが機器を横断して提供できる可能性に言及する。

 同氏は、GoogleがAndroidで「大きな世界を開拓してきた。それ自身はすばらしいこと」と評価するものの、「我々自身の思いでも動けないか。自身でも課題意識を持って、と強く考えているメンバーが揃って、Tizenになった」と語り、より自分たちとユーザーに向けた考えの結果としてTizenが発足したとした。

HTML5でクロスプラットフォーム展開に期待

 そのTizenには大きな2つの流れがあり、Tizenアソシエーション以外に、LinuxファウンデーションによるTizenプロジェクトがもう一つの流れとなる。ここでは、ソースコードやSDKの公開などを行う。

 前述のように、Tizenはアプリやサービスの中心としてHTML5を採用し、モバイル端末にとどまらず、デジタルテレビや自動車などにも応用範囲を拡大していく意向で、「Tizenは世界標準をしっかりとフォローする形で動く」とする。一方で、例えば電話機能やその拡張などのように、HTML5だけでは制御しきれない、よりハードウェアに近いネイティブレイヤーを開発できるのもTizenの特徴。杉村氏は、「ネイティブレイヤーについてもSDK(開発キット)を提供し、作り込めるようにする」と語り、端末固有の特徴も活かせるようにする意向。このネイティブレイヤーへの対応は、Tizen同様に“第三のOS”の一角と見なされている「Firefox OS」と大きく違う部分になっている。

Tizen Storeと独自ストアを提供、主要dサービスにも対応

 エコシステムという意味ではプラットフォームの魅力を左右するアプリストアについては、「Tizen Storeをグローバルで提供する。開始当初は賞金のあるアプリコンテストも企画している」と紹介したほか、グローバル共通のアプリストアのほかに、キャリアやサービスで独自のストアを展開できる点も示された。登録されるアプリは事前審査制だが、原則として3日以内に審査を終えることや、年齢フィルタリングなどの取り組みもTizen Storeの特徴として挙げられ、「できるだけ制約を設けない形にする」という意向も明らかにされている。

 プラットフォームの具体的なロードマップとしては、機能改善や「Rich Home Screen」機能をサポートしたTizen 2.1が5月にリリースされており、2014年にはTizen 3.0が提供される予定。

 杉村氏は、「ドコモにとってのTizenとしては、本年度の下半期に商用化しようと動いている。dメニューとTizen Storeが提供される予定で、リアルな開発もすでに動いている。ドコモの主要なサービスはTizenに対応させていく」と語り、ドコモのTizen端末がサービス面でも充実する内容であることを明らかにした。

 同氏は「ユーザーからお叱りを直接受けることができるのは、直接の店舗があるところだけ。ドコモだけのストアなども提供し、顔が見えるところでサービスをやっていきたい」と語り、ユーザーと向き合い、課題を意識する上でも自由度の高いプラットフォームが重要とする。杉村氏は「Tizenは今年、産声を上げる。指導、叱咤激励をいただければ」と締めくくり、Tizenへの期待を呼びかけた。

(太田 亮三)