【ITU TELECOM WORLD 2009】
UQコミュニケーションズにWiMAXの世界展開を聞く


 商用サービス開始後、3カ月で2万1700件とやや苦戦のスタートとなったUQコミュニケーションズ。しかし、スイス・ジュネーブで開催の「ITU TELECOM WORLD 2009」では、WiMAXフォーラムのロン・レスニック会長が「転換点を超えた」と力強く語るなど、世界的な普及に自信を見せている。

 果たして、モバイルWiMAXはどのような世界展開をしていくのか。会場で、UQコミュニケーションズ・マーケティング戦略部、織内慶太課長補佐に話を聞いた。

インタビューに応じてくれた織内慶太氏

 今回、「ITU TELECOM WORLD 2009」で目立っていたのがチャイナモバイルが展開する3G規格「TD-SCDMA」と「WiMAX」だった。

 会場ではロシアのWiMAX事業者であるYotaがHTC製の「GSM+WiMAX」端末を展示。また記者会見では次世代の規格となる「IEEE802.16m」が「IMT-Advance」の承認に向けての進捗が報告されるなど、将来に向けたロードマップも見えつつある。

 日本では7月に商用サービスがスタートしたモバイルWiMAXではあるが、世界を見渡すとすでにいくつかの国でもサービスが開始されている。

「やや亜流とも言える韓国を筆頭に、アメリカ、ロシア、マレーシア、そして台湾でも始まっている。ヨーロッパに関してはまだ電波オークションも始まっていない段階といえる。」(織内氏)

UQのローミングパートナーでもあるYotaのデニス・スヴェルドロフ社長

 実際にサービスを展開している国は少ないが、すでにサービスを始めている事業者がさらに別の国に進出してサービスを展開する試みも動きつつあるようだ。例えば、アメリカ・Clearwireはスペインに進出する計画があるし、ロシアのYotaもペルーやベラルーシといった海外展開を予定している。

 一方で、国際ローミングの実現に向けても動きが出始めている。先月、UQコミュニケーションズは、アメリカ・Clearwireとロシア・Yotaと国際ローミングの実現に向けて協議を開始する覚書を締結したばかりだ。

「(すぐにサービス開始というわけではなく)実際にはこれから協議を始める段階。しかし、インテルのモジュールを内蔵したノートパソコンをアメリカに持って行くと、そのまま接続できたという事例があるなど、技術的な問題はほとんどないといった状態。あとは、運用面の整理をどうするか、といった協議が中心になりそうだ。」(織内氏)

 WiMAXは無線LANと同様にMACアドレスで管理し、IDとパスワードがあれば、認証は完了する。その点、SIMカードでユーザー情報を管理するW-CDMA/HSDPAに比べると、国際ローミングにおける運用の負担は小さいという。

 織内氏によれば、今回、2つの事業者が国際ローミングの相手として選ばれた理由には「周波数帯」が大きく影響している。

「距離的に近い隣の韓国がかなりのニーズがあるため、第一候補としていたが、あちらは2.3GHz帯ということもあり見送った。まず、日本と同じ2.5GHz帯を使うアメリカとロシアを協議相手とした。」(織内氏)

 ただ現在、サービスを提供している各国でも実は細かにWiMAXのバージョンが違っていることがある(例えば日本ではWave 2 Phase 2だが、アメリカではWave 2 Phase 1といった具合)。この違いは国際ローミングの実現に影響しないのだろうか。

「アメリカも韓国も近いうちにUQが採用しているバージョンにアップする予定。またバックワード・コンパチビリティも保証するので、日本にアメリカのものを持ってきても接続できるように仕様上はなっている。ただ、これから接続試験をやっていくつもり。」(織内氏)

 ただ、気になる国際ローミングの開始時期、料金は、まだ具体的なものは一切ない。料金に関して、織内氏は「乗り継ぎの空港でつながるが料金が高い、というのではもったいない。これからの協議で決まっていくが、できるだけ料金が利用の障壁になるようなことはしたくない。現在、国内で1日600円という料金プランがあるが、これはホテルなどのWiFiサービスの値段を意識した値付けだった。国際ローミングもこの考えに近くなると思う」と語っている。

Yotaに展示してあったGSM+WiMAX端末。HTC製でVoIPにも対応するという富士通ブースにあったWiMAX対応のMID(富士通はチップのみ製造)。今後はこのような端末も登場しそうだ。



(石川 温)

2009/10/9/ 14:03