【Mobile Asia Expo】
NFCのデモでにぎわうドコモ、新サービス披露


 ドコモのブースには、他のイベントで発表されたサービスやソリューションが展示されていた。それぞれの内容は、ある程度中国向けにアレンジされた形となっている。中でも、NFCとFeliCaに両対応した端末を使った決済のデモは、多数の来場者でにぎわっていた。ドコモは、国際標準のNFCとおサイフケータイに採用されるFeliCaを、本年中に統合するロードマップを発表している。その第一弾として想定しているのが、SIMカード内にNFCのセキュアエレメントを内蔵するという方式だ。ドコモブースには、「AQUOS PHONE SH-12C」をベースにした試作機を使って、iD(FeliCa)とVISA(NFC)の両方で決済を行える環境が用意されていた。


ドコモブースの様子NFCのデモには、人だかりができていた。物珍しさで見学に来る一般の来場者に加え、最新動向を追う業界関係者も多かったという
「AQUOS PHONE SH-12C」がベースの、FeliCaとNFCに両対応した試作機。FeliCaとNFCは、かざしたリーダライターによって自動的に判別される

 会場の説明員によると、NFCのサービスは「日本と海外の両方で使えることを目指している」という。ドコモは、韓国キャリアのKTや中国のチャイナモバイルと共同で事業を行う旨を発表している。この関係を活かし、韓国・金浦空港にNFCタグを内蔵したボードを設置。対応端末でタッチすると、日本の店舗で利用できるクーポンを取得できる実験を行っている。展示会場には、このボードも置かれており、実際にクーポンを表示することができた。このほかNFC関連では、チケットサービスのデモを行っている。なお、NFCのサービスは「冬に開始する予定」(説明員)とのこと。NFCとFeliCaに両対応したスマートフォンも、この時期に投入される見込みだ。


サービスローミングというコンセプトのデモで、金浦空港のボードをタッチしてクーポンを取得し、日本で割引を受けられる

日本でNFCを使って入手したチケットを、上海で利用するというデモも行われていた

 Mobile Asia Expoで初披露されたサービスが、「taiyo」だ。これは、着せ替え可能なアバターと、各種機能・サービスを呼び出すポータルが一体となったアプリで、ドコモのドイツ子会社であるネット・モバイルが開発している。アバターのアイテムは無料と有料の両方を用意。APIも公開して、ゲームなどに利用できるという。このアプリから、電話帳やニュースなどを呼び出すことが可能で、ユーザーの好みを分析したうえで、サービスのリコメンドを行える。主にキャリアを通じて海外のユーザーに提供される見込みで、ドイツのボーダフォンが間もなくサービスを開始する予定だ。海外向けのコンテンツサービスとしては、インドのタタドコモが提供しているポータルアプリも展示されていた。


ネット・モバイルが開発した「taiyo」アバターは着せ替えが可能。アイテム課金にも対応する
ニュースなどのコンテンツや、各種機能を呼び出すポータル的な役割も果たすインドのタタドコモが展開するサービスを、1つのアプリにまとめたもの
iチャネルと動画やモバイルテレビ、ゲームは、タブで切り替えられる

 位置情報やセンサーを活用して街情報を表示するアプリも、ドコモブースに展示されていた。このアプリは米国で開催されたCTIAで披露したもので、コンテンツは上海向けにアレンジしている。かざした方向にあるレストランなどの店舗情報を表示でき、レーダーのようなデザインで位置関係が分かる仕組みだ。音声検索にも対応。「『カレーが食べたい』というように話しかけると、メニューにカレーがある店舗だけを表示する」(説明員)ことが可能だ。日本で6月29日に配信される予定で、「ぐるなび」「食べログ」「ホットペッパー」の3つを同時に検索できるのも特徴となる。


レーダーのようなUIで近隣の店舗を表示店舗はリスト形式でも表示できる

 中国向けには、ドコモチャイナの提供するソリューションが紹介されていた。屋内の位置情報をZigBeeで送信する装置や、3G網で利用できる「Push to Talk」、Eコマースサイトを構築するためのシステムなどが主な内容となる。また、ドコモクラウドとしてサービスを開始した「メール翻訳コンシェル」や、「通訳電話」(1万人限定で試験提供中)もデモが行われており、中国語から多言語に翻訳する様子を見ることができた。


ドコモチャイナが提供する、屋内向け位置情報ソリューション3G回線を利用した「Push to Talk」も展開する
「メール翻訳コンシェル」や「通訳電話」は、中国語と日本語(や来場者が使用する言語)でデモを行っていた

 ドコモに関連するトピックとしては、20日に、取締役常務執行役員(CTO)の尾上誠蔵氏が各国のCTOが集まるラウンドテーブルに登壇。日本での経験を踏まえ、スマートフォンにおいてはトラフィックだけでなく制御信号への対策が重要になることを語った。また、土管化を避けるためのクラウドサービスに言及。幅広いサービスを提供するために上位レイヤーの事業者と協力し、動きの遅くなりがちな通信事業者が従来以上のスピードで開発に取り組む必要性を説いた。


ラウンドテーブルで通信技術の最新動向を語るCTOの尾上氏

 

(石野 純也)

2012/6/21 13:09