【mobidec 2011】
DeNA小林氏、スマートフォン移行はチャンスとアピール


ディー・エヌ・エー 取締役 ソーシャルゲーム事業本部 事業本部長の小林賢治氏

 「mobidec 2011」の基調講演では、ディー・エヌ・エー(DeNA) 取締役 ソーシャルゲーム事業本部 事業本部長の小林賢治氏が登壇し、「スマートフォン時代に向けたmobageの戦略」と題した講演を行った。

 プロ野球球団の獲得や、グリーから損害賠償請求訴訟を提起されるといった話題が賑わっているが、小林氏は冒頭で「本業のmobageの話」と断り、講演ではスマートフォンに対する戦略などが語られた。

 スマートフォンの普及が進んでいるのは周知のこととなっているが、小林氏は、コンテンツプロバイダーや開発者の視点として、「今まで蓄積したことは無駄になるの?」「儲からなくなるのでは?」という2つの疑問を挙げる。

 これまでのノウハウや実績が無駄になるかどうかについては、例えば数多くの種類に対応しなければならなかったこれまでと比べて、OSや端末メーカーの集約が進んでいるとして、ポイントを押さえることで大きな収穫になるとする。ブラウザを利用したゲームなど、Flash Liteで開発されたゲームについては、DeNAが提供する「ExGame」でスマートフォン向けに移植でき、ほかのOSや海外向け展開については、ワンソースマルチユースを可能とする同社のソリューション「ngCore」を紹介する。

 同社では、スマートフォンにおいてもブラウザでアクセスして遊ぶゲームの収益性が高いとし、「ExGame」ではFlash Liteをそのまま移植でき、有名タイトルでも利用されている様子を紹介。例えばExGameを利用する「怪盗ロワイヤル」のスマートフォン版では、従来とかわらないリピート率やARPUになっているという。

 また、「ngCore」はワンソースでiOSとAndroidに対応できるとするもので、HTML5にも対応することで、エンドユーザーはアプリでなくても利用できるになるという。開発体制も20人以下が基本の少人数編成で可能とし、Androidでは差分だけアップデートできる仕組みが用意される。小林氏は、「アップデートの度に何MB、何十MBをダウンロードするとなるとウンザリする。ソーシャルゲームのように頻繁にアップデートする場合には、こういったものが必要」とした。「ngCore」ではまた、据え置き機のゲーム開発者では習熟者が少ないサーバー系技術についても、技術支援を行うライブラリが用意される。

 グローバル化、グローバル展開で規模が大きくなるスマートフォン関連市場だが、小林氏は、「パソコンを超える規模になるのは間違いない。一気に多数にアプローチできるようになるのはそう遠い時代ではない」とする一方で、各国での展開方法やローカライズなどで支援体制を整備している。例えばアプリ版かブラウザ版といった事柄でも、各国で人気は異なり、定額制の無い中国ではなるべくコンパクトにするといった具合で、これらのノウハウはmobageでゲームを展開する各社にフィードバックされる。

 小林氏は、パートナーシップを強めてきた経緯を「非常に強いところと組みたいとこだわってきた」と紹介し、すにで国内ではNTTドコモ、海外市場ではサムスン、AT&Tといった企業と連携していることを示した。一方、海外の現在の状況について、「半年前ならCPI(Click per Install)の大量投資が勝負だったが、App StoreでCPIがリジェクトされるようになり、(ランキングに食い込ませる手法が)機能しなくなった。では一体なにで集客するのかということが、北米では起こっている」とし、「パートナーと、新しい形のディストリビューションスタイルを提供していきたい」と、アプリを広める手段についても新しいものを模索していくとした。

 スマートフォンに移行して儲からなくなるのか? という疑問については、小林氏は北米におけるFacebook、Zyngaと、mobageをARPUを比較したグラフを示した。Facebookは売上実績から換算したもので、Zyngaについては公式に提供されているものだが、1ドル80円で計算し、mobageが12.06ドルなのに対して、Zyngaが0.66ドル、Facebookは0.34ドルと20倍以上の差が示され、「ARPUは全然違う。ここはインフラとして課金システムを作ってきた日本のキャリアの貢献がある」と説明された。

 これだけでは、少なくとも北米市場は“収益性が悪い市場”ということになるが、小林氏は例として「北米のApp Storeでは、有料ゲームと、フリーミアム(基本プレイは無料でアイテム課金などのゲーム)の構成比が入れ替わってきている。有名タイトルでも、基本無料として出てくるようになっている」と、課金の内容が変化している様子を指摘。「フリーミアム化すると、ダウンロード数は7.5倍に、全体のARPUも数十%上がると言われている。(ユーザーも)都度課金に慣れるということが、アメリカでも起こりつつある」と、有料ゲームの在り方が変化している様子を語った。

 フリーミアム化すると、1ダウンロードいくらといった売り切り型のゲームではなく、ソーシャルゲームのように継続的な発展がポイントになるが、小林氏は、「リリースする側にとっては、リリースはスタート。その後にどうやって収益を上げていくかが重要。海外では、ページ遷移と脱落率といった、Webでも当たり前のチューニングをやっていない場合がある。ゲームをチューニングするという技術は、ガラケーで鍛えられた人には大きな強み」と、継続的な展開にはフィーチャーフォン時代の技術が生かせるとする。

 小林氏はまた、「単発のゲームタイトルではつらい。たくさん、面白いゲームがある中で、ユーザーが回っていくという状況を作るのが重要。エコシステム全体として世界に出していきたい」と語り、ゲームを提供する仕組みを世界に問うていく姿勢を示した。


 




(太田 亮三)

2011/11/25 18:12