【Mobile World Congress 2010】
放送波でTwitter、クアルコムが狙うマルチメディアサービス


クアルコムブース
MediaFLOのデモ

 米クアルコムのブースでは、マルチメディア放送サービス「MediaFLO」を使ったデモンストレーションや、次世代通信規格のベースバンドチップ、バックライト不要のディスプレイ技術などが紹介された。

 「MediaFLO」は、マルチメディア放送サービスとして米国で商用展開されている。放送技術ということもあり、国内ではワンセグの発展形であるISDB-Tmmの対抗軸として紹介されること多い。しかし、今回のデモンストレーションでは、映像という切り口ではなく、マルチキャストであること活かしたコンテンツ配信の仕組みを、クアルコムらしい形でアピールしていた。

 ブースでは、CPUにSnapdragonを搭載したノートPC(Smartbook)を用いて、映像配信、Twitter、ニュース、天気予報などを放送波にのせて表示するデモが行われた。多数のコンテンツを同時に配信することになるが、通信網ではなく放送波を用いることで、事業者が輻輳を心配することなくマルチメディアコンテンツの提供が可能になる。多くのユーザーに同時にリッチなコンテンツを届けられるため、電子書籍版の新聞や雑誌などの定期配信などにも有効という。ちなみにTwitterへ投稿する際は、3Gなど携帯電話網を利用する。

 なお、総務省では、携帯向けマルチメディア放送の技術方式(VHF-High帯)として、ISDB-TmmとMediaFLOの2方式が利用できることを公表している。商用サービスは2011年にも開始される予定。

 会場では試験基地局から電波を発して「DC-HSPA+」のデモが実施された。38Mbps程度の下りスループットを記録していた。また、サンプル出荷中のLTEとHSPA+ Release 8 Multicarrier、EV-DO Rev.B対応のベースバンドチップ「MDM9600」を使った通信デモでは、下り60Mbps程度を記録。いずれも試験免許を取得して実際に電波を発していた。チップセットのサンプル出荷から製品投入までは通常、12~18カ月程度かかるとのこと。「MDM9600」は、FDD/TDDの両対応となる。

 クアルコムでは、LTEのチップにおいてマルチキャリア対応製品のみ展開している。これは、LTEの普及までにはある程度の時間がかかり、当面、HSPA+などのW-CDMA系のアップグレードが必要になるためという。

 このほか、フェムトセルへの取り組みも紹介していた。フェムト基地局を個人で導入できるようになった場合、電波干渉によってLTEやHSPA網に影響が出る可能性がある。安定したスループットを確保するため、通信全体のマネジメントが可能なフェムト用チップを研究しているという。2010年後半にもサンプル出荷される予定。

「MDM9600」搭載通信端末(試作機)

 さらに、「mirasol」と呼ばれるカラーディスプレイ技術の展示も行われた。「mirasol」は、光の反射によって蝶の羽が変化する特性をヒントに、外光を反射させてディスプレイに色を着けるという技術。バックライトが不要で、明るい場所でより発色がよくなる特性を持っている。電子書籍などリーダーなどへの採用が見込まれ、5インチサイズの電子ブックリーダーが展示されていた。バックライトが要らないため、従来よりも消費電力が非常に少なくなる。同サイズの電子ブックリーダーと比較した場合、5倍程度長く動作し、さらにアニメーションなどをさせた場合、もっと大きな差がでるという。なお、この端末は米国の展示会「CES 2010」で発表されたもので、今回初めて公の場所で披露された。

 このほか、携帯電話向けのプラットフォーム「Brew MP」についても展示されていた。こちらは普及化価格帯のスマートフォン向けのプラットフォームで、動作周波数300MHz程度のCPUでもスマートフォン的な味付けが可能という。

 



(津田 啓夢)

2010/2/19/ 13:11