【Mobile World Congress 2011】
最新チップセットや技術をアピールするクアルコム


クアルコムブース

 バルセロナで開催中のMobile World Congressにおいて、クアルコムはブースを出展し、さまざまな最新技術や製品を展示しているほか、会期2日目となる2月15日(現地時間)には、クアルコムCEOであるポール・ジェイコブス氏らによりプレスカンファレンスも行われた。

CEOのジェイコブス博士

 ジェイコブス氏はLTE関連の最近の動きとして、米ベライゾンがLTEのスマートフォンを採用したこと、NTTドコモがUSBドングル端末でLTEをスタートしたこと、前日(2月14日)にソフトバンクや中国のチャイナモバイル、インドのBhrti AirtelがTD-LTEの技術で連携することを表明したことなどを紹介した。

 また、HPやHTCのタブレットデバイスやWindows Phone 7などに同社のSnapdragonが活用されていること、マイクロソフトが「Big Windows」をSnapdragonで動作するようにしていることなどを例に挙げ、Snapdragonの好調をアピールするとともに、モバイルのチップセットがさらに重要になっているという考えを語った。

モレンコフ氏

 続いてエグゼクティブ・バイス・プレジデントのスティーブ・モレンコフ氏が登壇し、Snapdragonなどのチップセットビジネスについて紹介した。モレンコフ氏はクアルコムのチップセットのアドバンテージについて、パフォーマンスだけではなく「スケジュール」があると語る。クアルコムはモバイル向けのGHz級チップセットを投入した最初のベンダーであり、前日には2GHz級の次世代Snapdragon「Krait」も発表していることを挙げ、他社に先駆けて展開しているクアルコムのチップセットの優位性を強調する。

 次にモレンコフ氏は、チップセット内のグラフィック処理部分、すなわちGPUについても言及する。モレンコフ氏は「すべてのメジャーゲーム会社はワイヤレスに向かっている。ソニー・エリクソンはSnapdragonを搭載したXperia PLAYを発表した。マイクロソフトのXboxエコシステム内でも、Windows phone 7はSnapdragonが搭載されている。Androidでゲームを実行するのもSnapdragonだ」と、幅広いゲーム環境で同社のチップセットが使われているということを紹介し、そのグラフィック性能の重要性を説いた。

 クアルコムでは、Mobile World Congressの会期直前に、高性能化されたSnapdragonシリーズの製品をいくつか発表している。

MSM8660の実証端末による立体視映像デモ

 まずその中でも、2月10日に発表されたデュアルコアのAPQ8060は、前日に発表されたHPのwebOSタブレットデバイス「TouchPad」や各社のプロトタイプに採用されており、クアルコムのブースでも同チップセットの実証端末によるデモンストレーションが行われている。APQ8060は第3世代にあたるSnapdragonで、1.5GHzまでに対応する。プロセスは45nmで、Adreno 220グラフィックコアも搭載する。3GやLTEなどのモデム機能が搭載されていないが、無線LANなどの機能には対応し、必要に応じて3Gのモデムチップと組み合わせることも可能になっている。そのモデム付きバージョンが、MSM8660となる。

立体視映像に使われいてた実証端末立体視にも対応した高品質ゲームも展示

 なお、Snapdragonのマルチコアは非同期になっているため、片方のコアだけを高速運転させ、片方のコアを省電力モードにする、といったことが可能になっているという。

 クアルコムブースでのMSM8660のデモンストレーションでは、実証端末によるHD動画の再生や3D撮影と3D表示、物理演算も含めた高品質グラフィックのゲームデモなどが行われていた。

 さらにクアルコムでは、Mobile World Congress会期中に「Krait」という次世代のアーキテクチャの製品群も発表している。Kraitは最大2.5GHzにまで対応するアーキテクチャで、プロセスは28nm。シングルコアのMSM8930はLTEモデム付きでグラフィックコアはAndreno 305。デュアルコアのMSM8960はLTEモデム付きでグラフィックコアはAdreno 225。クアッドコアのAPQ8064はモデムなしでグラフィックコアはAdreno 320。サンプル出荷時期は、MSM8960が2011年Q2で、MSM8930とAPQ8064は2012年初頭の予定。

LTE Release 10の概念説明展示

 このほかにもクアルコムブースでは、LTE AdvancedとしてLTE Release 10の展示を行っている。こちらは現在標準化に向けてクアルコムが提案中の技術で、通常のマクロセルの中に、同じ周波数でピコセルの基地局を混在させられるようになっている。たとえば移動機がピコセルの範囲内に入ったとき、ピコセルの基地局とマクロセルの基地局が通信し、その移動機のためのリソースを時分割でマクロセルからピコセルに委譲する、といった処理が可能になっている。このとき委譲されたリソースは、ほかのピコセルでも使い回せるため、全体で見るとユーザーのスループット向上につなげられる、という仕組みだ。

FlashLinqは電波を遮断する機器内で実証デモが行われている

 「FlashLinq」というP2Pの無線通信技術についてもデモンストレーションが行われていた。FlashLinqは基地局を必要としない通信技術。たとえば1キロ以内にある数千のFlashLinq端末同士が基地局なしで通信を行う、といったことが可能になっている。すべてのFlashLinqは正確な時刻情報を保持し、決められた時間のみ互いをサーチすることにより、待機時には2%の時間しか通信を行わずに済むようになっている。たとえばゲーム機で対戦相手を見つける、といった用途が想定されているという。

Skiftaを使い、遠隔地にあるコンテンツをテレビで再生している

 ちょっと変わったところでは、Android向けのDLNAソリューション「Skifta」というものも展示されていた。こちらはDLNA認証を受けた最初のソフトウェア製品だという。担当者の自宅(サンディエゴ)のサーバーにAndroid端末からアクセスし、そこから好きなファイルを選んで、目の前にあるテレビで再生させる、といったデモが行われていた。さらにAndroidアプリ上でFacebookのアルバムやネットラジオなどのメディアを登録しておくと、それらがAndroid内のメディアのように扱われ、ほかのDLNAクライアントからアクセスできるようになるという、DLNAの仲介役のような機能も果たせるという。

 Skiftaはすでにベータ版が提供中で、Android 2.2以降の対応端末を持っていれば、Androidマーケットからダウンロードすることで利用できる。インターネットから自宅サーバーにアクセスするための仲介機能も、クアルコムが提供している。



(白根 雅彦)

2011/2/16 11:47