【Mobile World Congress 2012】
サムスン電子ジャパンに聞く、今後の日本市場戦略


 サムスンは「Mobile World Congress 2012」において、GALAXY Noteシリーズを中心に展示を行なっている。GALAXY Noteシリーズは専用ペンによる入力にも対応したモデルで、5インチと10インチのモデルがラインナップされている。いずれも国内での販売は決まっていないが、海外ではヒット商品となっていて、日本での展開も待ち望まれるモデルだ。

 今回はサムスン電子ジャパンの携帯電話関連事業を担当する、専務・端末事業本部 Senior Vice Presidentの石井圭介氏、端末営業部 部長の呉昌珉(オウ チャンミン)氏らにグループインタビューをする機会を得たので、そこで語られたサムスンの戦略についてレポートをお届けする。なお、今回のグループインタビューは、半ば雑談形式だったので、サムスンの公式見解と言うより、各担当者の個人的意見が中心となっていることをご了承いただきたい。

――GALAXY Note、海外での反響はどうでしょうか?

オウ氏
 海外では、我々の期待以上に売れている状況です。とくに韓国では、いまでも毎日1万台以上が売れています。通常、安い端末が売れるインドでも、じきに10万台に到達します。そして販売はまだ伸び続けている状況です。

――GALAXY Noteの日本での発売は決まっていないかと思いますが、それを日本で出すかどうかはともかく、GALAXY Noteが日本でも受けるとお考えでしょうか?

石井氏
 あくまでも個人的な考えなのですが、アラン・ケイが発表したダイナブックの概念のように、ペンによる入力と画面表示によるアウトプットは必ず受け入れられると思っています。むしろ、受け入れられるというより、新しい市場を作り出す商品になって欲しい、と考えています。今回のサムスンブースでお見せしているように、GALAXY Noteは、用途がどんどん広がっていく可能性を持っています。そういったところで市場を作ることができれば、と期待しています。

――CESなどでは、GALAXY Noteはスマートフォンでもタブレットでもないと案内されていました。ではこのカテゴリはどう定義し、なんと呼ぶのでしょうか。

石井氏
 画面の大きさで分類するのではなく、使い勝手から「ノート」と呼ぶのが適切ではないでしょうか。今後もこのサイズしかラインナップがないわけではありません。新しい使い方を提案するのが、GALAXY Noteになります。

――10インチのGALAXY Noteがあります。一方で、同じくらいのサイズのタブレットもあります。このままペン操作が受け入れられた場合、タブレットからGALAXY Noteに置き換わるのでしょうか。それとも併存するのでしょうか。

石井氏
 用途別に使い分ける人もいれば、1つの端末を多機能に使う人もいます。これはユーザーによって違うと思いますので、いまはトライアルをしながら、市場を作っています。まだパターン化できるほどの段階ではありません。

――単に指の代わりにペンを使うだけでは、昔のPDAなどと変わりません。このあたりはどのようにしていくのでしょうか。

サムスン電子ジャパンのオウ氏

オウ氏
 GALAXY Noteの5インチの方は、その大きさだけで「欲しい」というお客さまもいますが、しかしペン入力は、もっといろいろなソリューションが考えられると思います。今回、サムスンのブースではさまざまなソリューションを紹介させてもらっています。たとえば画家が似顔絵を描くデモンストレーションを行なっています。これはまさにGALAXY Noteが持っているハードウェアの力です。

 GALAXY Noteをリリースしてわかったこととしては、ペン入力の楽しみに対するニーズがあったということです。そうした、いまあるニーズに答えて育てていくのかも重要です。

――GALAXYシリーズは売れていますが、しかし昨年後半からシャープなどの全部入りスマートフォンも売れるようになってきました。この状況でサムスンさんはどのような舵取りをされるのでしょう。グローバルモデルをベースにするのか、現地化をするのか、どうなのでしょうか。

サムスン電子ジャパンの石井氏

石井氏
 一般的な話をしますと、IT関連に限らず、市場に新しい製品ジャンルが登場したときは、先行メーカーが圧倒的な優位を保つことがあります。しかし時間が経過すると、先行メーカーと後発メーカーの差分は圧倒的ではなくなることもあります。スマートフォンのように、サムスンは常に先陣を切れるように準備はしますが、バランスというものもあります。日頃からマーケットを見て、しっかりユーザーへ提案できるような活動をしていくことが重要です。現地化については、やはり市場に密着していることは重要だと思っています。

――GALAXYというブランドは、だいぶ一般にも認知されるようになりました。しかしそれに対して、サムスンの認知度が低いというデータもあります。

石井氏
 GALAXYは一定の認知度を得ることができました。しかし。まだこの認知度が高いとは思っていません。位置づけとしては明確になりつつありますが、チャンピオンではありません。ここで満足して、ブランド価値向上をおろそかにすることはしません。GALAXYとサムスンの両方の認知はまだ低いですが、しかしGALAXYとサムスンの認知度のあいだにも差があります。この2つのブランド価値を上げる活動をこれから練って、取り組んでいきたいと思います。

――サムスンブランドのコアはどこにおいて訴えていくのでしょうか。

石井氏
 まだ決めていません。大きな宿題、大きな問題だと思っています。

――グローバルではハイエンドではないモデルもラインナップされています。一方でスマートフォン市場は日本でも広がりつつあり、エントリーユーザーも増えてきました。国内ではGALAXYシリーズはハイエンドモデルで展開されていますが、ほかのモデルが日本で展開する余地はあるとお考えでしょうか。

石井氏
 いまの日本の市場でいうミドルレンジは、海外ではハイエンドに相当するスペックになります。マーケティングの手法として、まずはハイエンドから入りましたが、市場に密着し、ユーザーの視点でビジネスを行なう上で、ミドルレンジを含めた展開も検討したいです。それだけでなく、今回展示しているGALAXY Noteのような新しい市場も含め、グローバルの商品を提供できれば、と思っています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。




(白根 雅彦)

2012/3/1 04:02