【Mobile World Congress 2012】
クアッドコアでも省電力、最新技術を展示するクアルコム


クアルコムブースの様子

 クアルコムのブースでは最新のSnapdragonや、LTE関連技術、Wi-FiのIEEE 802.11acなどが展示されていた。

 Snapdragonについては、デュアルコアの「MSM8960」や、クアッドコアの「APQ8064」によるデモンストレーションを行っていた。両者に共通する特徴として、コアごとに個別の電圧をかけ動作を制御する仕組みがあり、ブースではこの機能による省電力性をアピールしていた。

 たとえば他社の場合、同じデュアルコアでもコアにかかる負荷を個別に調整できない。「モバイルだけに分野を絞って最適化してきた」(クアルコム広報)結果、パフォーマンスと低消費電力を両立させる方向に行き着いたという。展示では、ブラウザでWebを表示しているときは片方のコアがほぼ止まっており、スクロールさせると徐々に2つのコアのパワーが上がっていく様子などを確認できた。

 Snapdragonに関しては、HTML5に最適化したソフトウェアも展示していた。このソフトウェアを利用すると、非適用時と比べ、HTML5で再生した動画のフレームレートが非常に高くなるそうだ。

「MSM8960」でコアが非同期で動く様子。不要なときは片方のコアを抑えることで省電力にもつながっているクアッドコアにも、この非同期制御の特徴が受け継がれている左が最適化を行った際の動画で58fpsなのに対し、非最適化時は16fpsとなる

 LTEについては、「LTE Advanced HetNet」を紹介。マクロセルとピコセルの基地局を置き、同じ周波数帯で両者のエリアを重ね合わせながらエリアを構築できる技術で、端末側での切り替えは自動的に行われる。KDDIが導入する「EV-DO Advanced」に発想としては近いが、「セルエッジで切り替えるのではなく、完全にセルをオーバレイできるのが違い」だという。これによって、マクロセル側にぶら下がる端末の数が減り、全体としてのスループットも向上するというのが、この技術の真骨頂だ。LTEのRelease 10から対応しているものだが、スループット向上の恩恵は現状のRelease 8に準拠したLTE端末でも受けられる。

一部の端末の通信相手をピコセルに切り替え、スループットが上がった様子

 LTEのデータ網で音声通話行う、「VoLTE」に関する技術も展示されていた。クアルコムがデモを行っていたのは「SR-VCC」という技術で、LTEエリアから3Gエリアに移った際に、シームレスに音声通話を従来型の回線交換に切り替えるもの。実際、ハンドオーバー時の音声をヘッドホンで確認したが、回線や通話方式の種類が変わっていることにまったく気づかなかった。

クアルコムによると「LTEだけでエリアを構築できるのはかなり先になるため、こうした技術が必要になる」という。同社としては対応するチップセットを販売し、メーカーの端末開発をサポートしていく方針だ。ただし、現時点では、ハンドオーバーはLTEから3Gのみとなっており、逆方向の3GからLTEには非対応。これについては「LTEのRelease 10からサポートすることになる」という。また、CDMAとLTEの組み合わせについては、「技術的な準備はできており、キャリアが導入すれば利用できる」そうだ。


SR-VCCは3GからLTEへの移行期に必要となる技術だ2台の端末でハンドオーバーのデモを行っていた

 また、LTEでブロードキャスト的にデータを一斉送信する「eMBMS」という仕組みが公開されていた。KDDIがEZニュースフラッシュで導入している「BCMCS」に近い考え方の方式で、トラフィックに応じてマルチキャストにするか、ユニキャストにするかをキャリアが決められるという。LTEのRelease 9からの対応となり、「たとえばスタジアムに大勢の人がいる場合、別の角度からの映像を全員に届ける」(クアルコム広報)といった用途が想定されている。発想としてはmmbiのモバキャスに近いものの、こちらはLTEのデータ通信と同じ周波数で行えるため、利用効率がいいというメリットがある。


LTEのブロードキャストで映像を受けた端末エリクソンブースから送信した映像を、実際に受信したところ

 このほか、最大1Gbpsの通信が可能となる「IEEE 802.11ac」に対応したチップを内蔵した端末が展示されていた。このチップは「『MSM8960』とペアにできるモデルで、IEEE 802.11nともコンパチになっている」という。ブースに展示されていた端末は、約220Mbpsで通信していることが確認できた。


IEEE 802.11acでデータ通信

 




(石野 純也)

2012/3/2 13:00