【Mobile World Congress 2014】

“ラグド”を打ち出す京セラ、海外展開やSIMフリーを語る

京セラのブース

 Mobile World Congressに合わせた新端末の発表はなかった京セラだが、展示会場にはブースを構えていた。総花的だった昨年とは異なり、今年は「1つのストラテジーを持って出展した」(京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部長 能原隆氏)という。具体的には、耐衝撃性能を備えたTORQUE(トルク)を中心に、防水、防塵といった特徴を備えるスマートフォンを大きく展開。「まだまだ日本とアメリカ以外では訴求が進んでいない」という、“ラグド”(rugged、頑健)というテーマを全面に打ち出した格好だ。

ラグドをテーマにしたブース構成
「TORQUE」は、米国で発売中の2色を展示
Verizon向けの「Hydro ELITE」
コンセプトモデルも展示していた

京セラ能原氏に聞く

 日本で発売されているDIGNOシリーズや、PHS端末も各種展示されていたが、テーマに沿っていないため、やや控えめな印象だった。ほかにも、近い将来実現したいというコンセプトモデルも展示されていた。能原氏によると、要素技術も想定しており、商品化もある程度、視野に入っているという。京セラのブースでは、能原氏へのグループインタビューも行われた。報道陣との主な一問一答は次のとおり。

日米で発売中のフィーチャーフォンやPHS端末も出展
グループインタビューに応じる、京セラの能原氏

――TORQUEは法人向けということだが、個人ユーザーはどうか。

能原氏
 メインは法人向けだが、国内で発表して個人のお客様からも問い合わせを受けている。アメリカでも、ああいうものが好きな方が個人で購入されることもある。ブースには2色のTORQUEを展示しているが、青はどちらかというと個人を意識したもの。

――欧州もラグドというテーマで攻めるのか。

能原氏
 ここはバルセロナだが、我々は邦人向けの高耐久モデルを世界的にやっていきたい。商談は、欧州に限らずグローバルでやっており、興味を持っていただいている。

――より低いスペックのCPUを使ってスマートフォンを作ることはあるのか。

能原氏
 日本のマーケットはもともとガラパゴスと呼ばれ、進化したフィーチャーフォンからの流れで(スマートフォンが)きている。世界的に見てもユニークだが、フィーチャーフォン時代のワンセグ、おサイフ、赤外線も使えないといけない。そういったこともあって、マーケットの特性がスマートフォンでもハイエンドに振れている。

 ただ、色々な指標を見ると、ほぼスマートフォンに替える人は替えている。これからどうなるかというと、いろいろなバリエーションが展開されるようになるのではないか。ユーザーも、自分にとってこれがいいという経験を積んでいるし、多様性も出てくると思う。

――TORQUEは昨年のMobile World Congressにも出展していた。そろそろ後継機は出ないのか。

能原氏
 初代TORQUEから1年経っているので、要望によっては随時検討していきたい。

――ローエンド端末がかなり増えてきたが、米国のプリペイド市場で脅威に感じることはないのか。

能原氏
 確かにマーケット自体がそういう方向に振れている。ただ、脅威を感じているヒマがあったら、自分たちが努力してなんとかしたい。トレンドがそうなっているのは、誰にも止められない。競合との関係より、お客様が望むものに対して追随していかないと商売がなくなってしまう。

――Android以外のプラットフォームを利用する可能性はあるのか。

能原氏
 お客様にとっては、OSよりGUI。Windows PhoneだろうがAndroidだろうが、統一性を持ったプロダクトであればいい。OSはあくまでその手段でしかない。

――TORQUEは日本ではSIMロックフリーで販売されている。手ごたえは?

能原氏
 1年前に発表して、法人のお客様から(日本で)お問い合わせをいただいた。そのような要望にお応えするために、一番速い導入方法を考え、まずは自社ブランドでの販売という形にさせていただいた。意図的にSIMロックフリーにしたというより、結果的にそうなったというのが正しい。

 今は色々なメディアでSIMロックフリーやMVNOという話題が毎日のように出ていて、そこを狙ったのかという質問もよくされるが、そこまで明確に意識したわけではない。このモデルに関しては。

――このモデルに関しては?

能原氏
 マーケットを見たとき、お客様の選択肢が増えることは事実。そういう要望がある以上は、我々も何からのご提案をしていきたい。今回だけというつもりもない。

――ウェアラブルに対しては、どう取り組んでいくのか。

能原氏
 CESでもたくさんのソリューションが出ていたし、我々はしませんというつもりもない。スマートフォンのコンパニオンデバイス以外にも、セルラーを入れた切り口もあると思う。先ほど話したSIMフリーは、TPOに応じて端末を簡単に替えることができるというメリットもある。その分野に対してのアプローチもしていきたい。我々は「mamorino」や「あんしんGPS」も作っているが、ああいうものもウェアする価値がある。

――SIMロックフリー端末を出したことで、キャリアの態度が変わったことはあるか。

能原氏
 特にない。

――プレッシャーをかけられたり、お茶が出てこないといったことも?

能原氏
 それもない(笑)。そういうことがあったら、日本はもうダメだと思うし、決してそうなってはいない。キャリアにも継続して紹介はしているし、どういう風に(SIMロックフリー端末が)反応されるかは見られていると思う。

――日本のURBANOのようなものを、海外展開する可能性はないのか。

能原氏
 アメリカのマーケットで昨年出した「Hydro ELITE」には、「スターターUI」というものが搭載されている。フリックしない、ダブルタップしないで操作できるようになっている。年配というよりも、スマートフォンの操作に不安を感じている人向けのUI(ユーザーインターフェイス)になる。

――日本、アメリカ以外への進出時期は?

能原氏
 できるだけ早く。ただ、特に目標を決めているわけではない。

――グローバルに進出する際の課題はどこか。

能原氏
 会場全体を見るとわかるように、たくさんメーカーがきていて、ディストリビューターや通信事業者に京セラと言ってもなかなか伝わらない。

――京セラという会社は海外でもそれなりに名前は通っていると思うが。

能原氏
 確かに部品事業はグローバル展開しているし、欧州にはプリンターもある。ただ、通信をやっているという認識はほとんど持たれていないのではないか。

――Echoのような、チャレンジングなモデルはもう出てこないのか。

野原氏
 そんなことはない。Echoでは、コンセプトを具現化するために重要なことをいくつか学んだ。OSの制約であったりエコシステムの問題であったり、解かなければいけない課題が分かった。

 また、曲がるディスプレイが出たことで、物理的に(画面と画面をつなげるための)真ん中の線がなくせることも見えてきた。

――北米ではMVNOから端末を出しているが、日本ではどうか。

能原氏
 MVNOは通話料金、通信料金でポジショニングされてきたが、今後は端末を考慮してマーケットの中で動いていかなければならなくなると思う。そうなった時、そのアプローチもなくはない。

――ローコストなものということもあるのか。

能原氏
 可能性はある。マーケティング部門が市場のトレンドを見る中で、アメリカでも同じ経験をしている。そのときにはチャンスが出てくる。

石野 純也