【Mobile World Congress 2015】

フィーチャーフォンに採用される可能性も!? KDDIが語るFirefox OSの新たな取り組み

 KDDIは、スペイン・バルセロナで3月2日(現地時間)から開幕する「Mobile World Congress 2015」に合わせる形で、Firefox OSをベースにしたIoT端末を開発する米国のスタートアップ企業「Monohm」(モノーム)に出資することを発表した。

 また、Firefox OSの開発をリードする米Mozzilaは、KDDI、LG U+、テレフォニカ、ベライゾンといった日本を含む世界各国のキャリアと、Firefox OSをベースにした新たなカテゴリーの携帯電話を開発すると表明。「折り畳み型やスライド型、ストレート型などの様々な形状をした Firefox OS 搭載デバイスとして2016年に提供することを目指す」という。

 では、KDDIはなぜ、モノームに対して出資を行うのか。また、Mozillaと合意した「新たなカテゴリーの携帯電話」とは一体どのようなものか。MWCに参加していたKDDIの執行役員 商品統括本部長の山本泰英氏にその詳細を聞いた。

KDDI 執行役員 商品統括本部長の山本泰英氏
Monohm(モノーム)が開発した「Runcible」(ルンシブル)のモックアップ
「Runcible」は懐中時計をモチーフにしているという

――まず、モノームに対する出資の意図を教えてください。

山本氏
 直接出資をしたのは高橋誠(代表取締役 執行役員専務)の部隊ですが、Firefox OSは広がり、今回のように、そこに寄るプレイヤーもいくつかあります。その中でモノームは、プロダクトを作るだけでなく、Firefox OSでプラットフォームをやりたいという考えがあった。それって、僕たちの考え方と似ているんです。プロダクトを出すだけでなく、プラットフォームを作ろうとしている志のある会社ということで、高橋が決断したのが背景です。

――具体的に、それはどのような製品なのでしょうか。

山本氏
 「Runcible」(ルンシブル)という製品で、これがものすごく新しいものです。ウェアラブル端末のようでもありますが、そうではなく、持っていても着信でブルブル震えたりしません。(ユーザーの)反応を強要しないといったものでしょうか。さりげなく寄り添うことをコンセプトに、ハードもUIもデザインされています。

 画面の動きは振り子が動くようなイメージですが、ジャイロを使ったインターフェイスもありますし、中にはテキストも出てきます。また、SNSでも、たとえばFacebookを使うと、使った量によって色の具合が変わります。

――形もそうですが、ちょっと懐中時計みたいですね。

山本氏
 彼らはモノを作ることの大事さを感じている人たちで、だから会社の名前も(日本語の)「物」から取ったモノームなんです。創立者の1人のジョージは京都のもの作りにあこがれていて、日本に住んでいたこともあります。

――出資はどの程度するのでしょうか。

山本氏
 額は非公開ですが、彼らもこれからどんどん出資を募っていくでしょうし、取締役を送るようなことは考えていません。むしろ、彼らに共感するという気持ちを表したつもりです。

――場合によっては、日本で発売することもあるのでしょうか。

山本氏
 そうですね。ただ、日本に持ってくるにあたっては、セキュリティなどもきちんと考えなければいけない。そういう意味でも、資本が入っているのはいいことだと思います。

新しいカテゴリーの携帯電話

――もう1つ、新しいカテゴリーの携帯電話を作るというお話がありました。

山本氏
 これに関しては、リリースのコメントを読めば分かるように、各社各様の理解でFirefox OSを捉えています。ベライゾンはベーシックフォンのようなシンプルなものですが、テレフォニカはちょっと違ったことをやろうとしているようにも取れます。

 そういう意味で、Firefox OSは色々な顔を持つOSです。12月にKDDI Business Forumというイベントがあって、そこに登壇してお話もしましたが、Firefox OSは“センサーOS”としても、ものすごく可能性がある。フォン(電話)を出す以外にも、色々な人たちが色々ことを考えています。そんな中で、共通の概念としてのプラットフォームはありえるのではないかというのが、今回の取り組みです。

 ただ、まだ会社としては、やるかやらないかは明言していません。それを前提にした上で、あくまで個人的な意見として捉えていただきたいのですが、やはり端末は出してはみたいですね。各社の理解に差があるように、安い端末でもなく、Fx0のようなギーク用の端末でもない、たとえば今回出資したルンシブルのように、“親切な端末”を出したいなとは思います。


――AndroidをOSに採用した「AQUOS K」がありましたが、ああいったものも可能性はあるのでしょうか。

山本氏
 可能性は十分あります。Firefox OSは必要なメモリも少ないですし、省電力です。それも、1つの親切だと思うんですよね。不親切に、無理やり載せなければいけないものもありませんし……。

――具体的に、ベライゾンなどと一緒にやったことはあるのでしょうか。

山本氏
 まだありませんし、あちらとは異なるものになる可能性もあります。ただ、ベライゾンさんは安いベーシックな電話を考えているからといって、それがまったく勉強にならないかと言われれば、そうでもないと思っています。共通の課題は似ていて、たとえばテンキーでのブラウジングなど、そういったところは踏襲できるのではないでしょうか。シンプリシティと機能のバランスは各国によって異なりますが、それを包含できるイニシアチブとしてジョインしています。

――これは、KDDIが今後もFirefox OSに関わり続けていくという意思表明と捉えてよろしいでしょうか。

山本氏
 はい。そう捉えていただいてもいいと思います。

――本日はありがとうございました。

石野 純也