【Mobile World Congress 2015】

夏モデルはどうなる? ドコモの丸山プロダクト部長を直撃

 Mobile World Congressには、キャリア各社の関係者が多数参加している。これから日本のキャリアからどんな端末が登場するのか。現地でNTTドコモのプロダクト部長の丸山誠治氏に伺った。

NTTドコモ プロダクト部長の丸山誠治氏

――今回、Mobile World Congressに来るにあたっての丸山さんのお仕事はどんなことになるのでしょうか?

丸山氏
 プロダクト部長という仕事で言うと、夏モデルについては実はもうだいたいできあがっていますので、その先ですね。冬モデルとか、もっと先で、どういう技術やトレンドが重要かということを知るというのが仕事の中心になります。それから、いろんな端末ベンダーさんやソフトウェアベンダーさんと結構交渉したりもします。後者が多くて、まだ会場をまわりきれていないんですよ。

――その中にはまだ日本には登場していないような新しいものもあったりしますか?

丸山氏
 目新しいものが何かあるという感じではなく、いろいろな概念が変わってきているので、それを端末にどう取り入れていくのかというのが一番重要なことになります。例えば、IoTみたいなものが当たり前になってきていますが、必ずその時にはキャリアのインフラを使ったり、あるいは我々の端末を経由したりすることになりますから、我々として関われる部分が多くあると考えています。そういうことが当たり前になってきているのですが、私は毎年ここに来ているせいか、一年刻みで見るとあまり変わっているようには思えない部分もありますが、3~4年のレンジで見ればすごい様変わりです。このイベントは元々はキャリアが集まってやっている会合で、携帯電話だとか基地局装置を展示する場だったのですが、今はもうそんな感じではありません。こっちのブースでは車を展示したり、こっちのブースではまた別のものを展示したり、業界も変わり、狭い通信の世界の展示会ではなく、ずいぶんと領域が広くなってきたように感じます。

――IoTというと、今回発表されたポータブルSIMのアプリ版などは大きく期待されるアイデアですね。

丸山氏
 ポータブルSIMはドコモ自身が開発してやっているものなので、関わりの深いものの一つです。いろんなユースケースが考えられるので、どういった使い方があるのか、社内でもいろいろと議論しているところです。面白い使い方を皆さんにご提示できればいいなと思っています。通信の主体を証明することが大事になってくるのですが、SIMカードというのはその一つの源泉になっているので、それを生かして認証するとか課金するというのは非常に可能性があり、ビジネスチャンスがあると考えています。

――夏モデルはだいたい形になっているということですが。

丸山氏
 ほぼほぼですね。ご期待ください。個別のメーカーや機種についてはご勘弁願いたいですが(笑)、次のシーズンはジャンプが大きいと我々は思っていて、明確なところで言うと、Androidの場合はバージョンが5.0になって、64bit化されます。通信側でも同様に大きなステップアップが予定されています。

――この一年でMVNOがたくさん立ち上がってきましたが、こうした状況をどう見ていらっしゃいますか?

丸山氏
 多くのMVNOさんでドコモの回線を使っていただいていますし、パートナーでもあり、ライバルでもあるといったところでしょうか。BtoBtoCの真ん中のBをやられている事業者さんがMVNOをやられるというケースも結構あると思います。例えば、住宅機器のメーカーさんがやられたり、自動車会社さんがやられたり、我々がやるよりもそういった方々がやられた方がよくわかる分野というのもあります。当然、そのおかげで我々の回線の利用が増えていくということもあります。本来のMVNOの形というのは、そういうことなのだと思います。

 我々がああしろ、こうしろという立場にはありませんが、社会全体の利益で言えば、やはり新しい価値をつけてお客様に提案し、使っていただくというのが本来の姿だと思います。もちろん、MVNOさんが安いプランを用意されるとか、便利なプランをお作りになるというのもその一つなのでしょうが、それだけではありませんよね。

――今回の展示会ではミッドレンジの製品が多く見られるような印象もありますが、これは業界全体のトレンドなのでしょうか?

丸山氏
 チップセットの能力が全般的に上がってきているので、フラッグシップではなくミドルぐらいのプラットフォームを使っても結構快適に動くようになったということが一つあると思います。我々も不要に高い端末を買っていただく必要はないと思っていますので、そういうものもある程度はやっていきたいと考えています。

 以前は一番上のチップでないと我々の基準から見ると快適に動かないという状況がありました。今は中くらいのものでも十分に我々の基準をクリアしていくような状況にありますので、そういうものを使って、よりお手頃な価格の端末ということでバリエーションも出せますので、そういうものもラインナップに入ってくると思います。

――最近になってWindows Phoneの話題が国内でも出始め、今回のMWCでも注目されています。この動きについて、どう見ていらっしゃいますか?

丸山氏
 いろんな調査をすると、法人のお客様にニーズがあることは確かなので、検討はしています。出すかどうかは何とも言えませんが、出した方がいいですか?(笑)

――出してほしいです(笑)。話が変わりますが、年明けのCESではテレビにスマートフォン用のOSが搭載されるなどして盛り上がっていましたが、テレビというデバイスについてドコモはどう関わっていくのでしょうか。

丸山氏
 テレビはほとんどのご家庭の中にあるデバイスで、それを見ている時間も長いんです。デバイス単位で言えば、スマートフォンの次に接触時間が長いものかもしれませんから、重要なデバイスですね。

 今回、ドコモ光というサービスを始めましたが、元々テレビはモバイルというより固定回線に繋がるデバイスになります。モバイル回線で4Kのコンテンツをダウンロードすると、ものすごい金額になってしまいますから、これまでは我々モバイル向きではないと及び腰だったところもあります。これからは光も一緒に提供していく立場になりますから、だいぶスタンスが変わってくると思います。テレビそのものに何かを入れていくというようなことや、セットトップボックスのようなもの、いろいろなパターンが考えられると思います。

――楽しみですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

湯野 康隆