【Mobile World Congress 2015】

吉澤副社長が語るドコモが光に取り組む理由

 昨年、音声定額サービスの「カケホーダイ」をスタートし、今月には「ドコモ光」の提供を開始したNTTドコモ。アグレッシブな攻めに転じたドコモが何を狙っているのか、バルセロナで代表取締役副社長の吉澤和弘氏に伺った。

NTTドコモ 代表取締役副社長の吉澤和弘氏

――最近の御社の動きというと、「ドコモ光」について聞かないわけにはいかないのですが、サービスをスタートさせて状況はいかがですか?

吉澤氏
 3月1日にスタートしたばかりで、私もこちらに来てしまったもので(笑)、数字などの報告は受けていますが、お客様の関心は高いようですし、本来の意味で言うと、光にすると、家の中のリビングだとかで何ができるのかといったところが重要なのだろうと考えています。そこのところがまだ打ち出せていませんが、テレビなどを含めてどういったサービスを出せるのかということだと思います。

 今日も会場を回っていると、ただ単にモバイルということではなく、コネクテッドホームのようなテーマもかなりあるので、いろんなことができるのかなと感じています。例えば、スマートフォンのカメラで4Kなども撮れるようになってきていますから、それをクラウドに上げて、家のリビングからは光回線を使って見るようなことというのは当然出てくると思います。旅行や運動会の映像をクラウドに上げて、それをお爺ちゃん、お婆ちゃんが見るですとか、そういうものが具体的に出てくるというのが、我々が光をやる意味です。

――数年前には各キャリアでデジタルフォトフレーム祭みたいなものがありましたが、その世界観がもっと現実的で身近なものになってくるということでしょうか。

吉澤氏
 そうですね。実際に中の映像そのものが非常に高精細になりますし、わざわざ専用のカメラで撮る必要もなく、スマートフォンでも手振れ補正などかなり高度に機能したようなものが出てきています。そういったものが現実のものとして、本当に近い将来実現できるのではないかと思いますし、我々はそれをやっていかなくてはいけないのだと考えています。

 ドコモ光というサービスをスタートしたことの意味としては、今お話ししたような形でサービスを拡大していくところです。ネットワークや端末での先進性も出していこうとは考えていますが、それらはすぐに追いつかれてしまうという部分もありますので、なかなか追いつかれないサービスの面でいかに新しいものを出せるかということだと思っています。そこにグッと力を入れていきたいですね。

――昨年に続き、今回のMWCではペイメント、決済といったところがテーマの一つになって来ています。Apple Payをきっかけにモバイル決済が世界的に動き始めたのかなと感じるのですが、ドコモとしてはどう見ていらっしゃるのでしょうか。

吉澤氏
 我々はスマートフォンよりも前にケータイの中で決済をやっているわけですから、今さらという部分もありますが、そうは言いながらも非常に重要なのは、その中でのセキュリティだとか、本人認証だとか、そういったところをどういう風に実現できるかということです。今回も虹彩認証のようなものが披露されていましたが、そういうようなものを取り入れながら、対策に取り組んでいくことが重要です。我々自身もそういった仕組みを考えて行かなければなりません。今さらと表現してしまいましたが(笑)、ネットワーク上での攻撃が現実のものとなって来ている今だからこそ、そういうものに取り組む必要性が出てきているのだと思います。

 さまざまなプレイヤーがいて、それぞれの立場からアプローチしようとしていますが、ユーザーにとってどんなサービスが使いやすいのか、システムの面での競争が始まるのかなという感じがしています。

――ブースでは新しい音声コーデック「EVS」のデモも拝見しました。音質の部分での進化もあるのですが、LINEのスタンプのように通話中に効果音を出していろいろと遊べるようになっていたのが面白いと感じました。こうしたアイデアというのは、どういう風に社内で引き出しているのでしょうか?

吉澤氏
 企画や研究の部門からはいろんなアイデアが出てきていますが、そこは遊び心が無いと、実際に使うお客様の思いだとか感受性だとかを引き出していけません。ドコモでいうと、長い時間がかかるコア系の開発というものも必要ですが、ちょっとしたアイデアを短い時間で実現するといったことにも取り組んでいます。R&Dの中にイノベーション統括部というのを作って、思いつきや面白いアイデアが出てきたときに、2カ月ぐらいで実現するような仕組みも作っていまして、例えば「しゃべってコンシェル」はそういう形で生まれてきたものです。

――お客さんとの接点というと、ドコモショップのような場所も大きな役割を担っていると思うのですが、あの銀行のようなスタイルを海外のショップのように、もう少しフレンドリーな形に変えていくことなども期待しているのですが。

吉澤氏
 もちろん考えています。それこそ今、ドコモ光を始めて、それを含めて説明しようとすると、また時間がかかるとかいうようなこともあるのですが、カウンターに行かないと始まらないということではなくて、カウンターに行くまでにお客様と事前の商談が始まるというような形にしようと取り組んでいるところです。

 実は今、かなり変えてきているところです。まだ全ショップというわけではありませんが、一人でお見えになったお客様ですとか、家族でお見えになったお客様ですとか、相応しい場所にお迎えして、希望されるサービスだとか端末だとか、カウンターに行く前にお話をすることで分かる部分がかなりありますから、契約の内容などをある程度そこで決めた上でカウンターに行くというような取り組みも始めています。将来的にはカウンターではなく、そういった場所で契約処理もできるようにしていくというのが理想です。今、そういう動きがだいぶ出てきています。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

湯野 康隆