【Mobile World Congress 2016】

ファーウェイ幹部が語る端末戦略~製品、販路、アフターサービスを磨きアップル超えを目指す

 「Mobile World Congress 2016」では新たなスマートフォンの発表がなかったファーウェイだが、同社は今、世界でもっとも勢いのあるメーカーの1社だ。1月に米・ラスベガスで開催されたCESでは、CEOのリチャード・ユー氏が、2年以内にアップルを超えると宣言。グローバルでのシェアも着実に増し、乱戦状態だった3位争いから、頭1つ抜けた格好だ。このファーウェイで、端末戦略およびビジネス開発部門のバイスプレジデントを務めるリー・チャンジュー氏が、日本の報道陣からの質問に答え、同社の戦略や今後の目標を語った。

ファーウェイのリー・チャンジュー氏

――今の世界のスマートフォン市場を、どのように捉えているのでしょうか。

リー氏
 過去数年を見ると、グローバル市場での成長が非常に緩やかになっています。去年の伸び率は大体9%程度でしたが、史上最大規模の中国市場でも、10%程度でした。この傾向は当面続くと見ています。

 しかしながら、そのような状況の中でも大きなチャンスは隠されています。主に、ふたつの兆候も同時に見られるからです。ひとつ目が先進国で、ここにはスマートフォンを買い替える市場があります。たとえば、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパでは、スマートフォンは飽和していますが、買い替えるニーズは大きくあります。

 もうひとつが発展途上国で、アメリカ、中東、アジア、南米では、いまだに速いスピードで成長し続けています。総量の増加は確かに限られていますが、このふたつの市場を細分化して見ると、大きなビジネスがあります。

――CESではアップルを抜き、2位になると宣言しました。具体的には、どのような戦略でそれを実行していくのでしょうか。

リー氏
 ご存知かと思いますが、弊社は、100ドルぐらいのローエンドモデルから、600ドル、700ドルはするハイエンドモデルまでを取り揃えています。これは、異なるニーズを満たすものとして設定しています。

 弊社はグローバルにおいても、非常に広い販売ネットワークを作っています。各地域にチャネルパートナーもいますし、マーケティング投資をさらに拡大することで、ブランド認知度を上げるとともに、各国に合った販売方法をしていく予定です。

 弊社のリチャード・ユーが、戦略目標としてトップ3になり、さらには2位、1位になると打ち出しました。そのためには、まずは優れた製品を作ること。続いて、消費者と直結する販売チャネルを作り上げることが必要になります。それには、各地域のパートナーの協力が欠かせません。そしてアフターサービスに力を入れることです。

 具体的には、製品に関しては、消費者の体験が向上するようなイノベーションを起こすことが大切になります。スマートフォンというのは、人々にとって欠かすことのできないツールで、いわばパートナーのような存在です。今後、IoTが普及して、自動運転のようなサービスが広がったときでも、中心となるツールであり続けるでしょう。

 それを実現するためには、基本的な機能――通信、マルチメディア、撮影、録音などを、引き続ききちんとブラッシュアップしていきます。

 またコンテンツのアグリゲーションを行い、高い効率で情報を獲得、処理できるような機能があり、これも良くしていくつもりです。さらに今後、スマートフォンはクラウドとの結びつきもさらに強くなるでしょう。そのエコシステム自体は、すでに現れ始めています。

 ブランドに関しても、マーケティングの取り組みがあり、一昨年の認知度は94位、昨年は88位になっています。スマートフォンは消費財で、ご存知のように、販売チャネルや販売手法も複雑化、多様化しています。この分野では十数年の蓄積がありますが、オープンマーケットだけでなく、通信事業者やディストリビューターとの協力関係も、さらに強化していきます。

 さらには直営店、パートナー企業と協力して作る店舗に関しても、投資を拡大していきます。すでに世界中には2万3000店舗ほどありますが、今年は新たに1万6000店舗を設立する予定で、最終的には4万店舗に達する見込みです。

――重点的に増やす地域はどこになるのでしょうか。

リー氏
 中国、アジアパシフィック、日本、ヨーロッパ、ラテンアメリカになります。

 もうひとつ強調したいのがサービスです。スマートフォンの機能は複雑化しているので、単純な操作方法だけでなく、よりよく使いこなすための力になりたいと考えています。ここに関しても、さらに投資をして、サービスセンターを設立することを考えています。

――各社、スマートフォンの“次”を見据えたコンパニオンデバイスを発表していますが、ファーウェイとしてはどういう製品に取り組んでいくのでしょうか。

リー氏
 もっとも重要な製品は、やはりスマートフォンです。しかしながら、スマートホームを作るためのプラットフォームへの投資も拡大しています。それは、我々が重要な分野だと考えているからです

 もうひとつ重要であると考える製品が、タブレット、特にWindowsタブレットです。新しい技術を取り入れると、新しい市場が生まれます。今回発表した2-in-1のWindowsタブレットは、今後、ビジネス利用で、これまでの製品に取って変わる可能性があると期待しています。

12インチのWindowsタブレット「MateBook」

――グローバルから見て、日本の市場をどのように捉えていますか。

リー氏
 今、日本市場はスマートフォンで2600万台ぐらいのマーケットだと理解しています。ただし、そのうちの半分はiPhoneですね(笑)。新しく参入する会社にとっては絶望的だと言う人も、中にはいます。ただ、弊社としては決して日本市場をあきらめません。

 システムにしても、インフラにしても、端末にしても、日本市場は高い要求水準を持っています。独自の販売手法や販売チャネルがあり、オペレーター(キャリア)に関しても特徴があります。

 過去数年を振り返ると、弊社の製品の中にも、日本市場で認められたものがありました。今後も、こういったものの模索は続けていきたいと思います。ブランドを認知してもらうには、時間がかかるので根気よくがんばっていきたいですね。

――本日はありがとうございました。

石野 純也