【Mobile World Congress 2016】

ドコモ吉澤副社長に2020年の5Gに向けての見通しを聞く

 Mobile World Congress(MWC)には日本のキャリアとしてはNTTドコモが出展している。しかしそれとは別に、各キャリアの幹部はMWCに来て商談や情報収集をしている。今年も昨年に引き続き、NTTドコモの代表取締役副社長の吉澤和弘氏に話をうかがった。

ドコモの吉澤副社長

――今回のMWCではどのあたりに注目されていますか。

吉澤氏
 もちろん全部は見られていませんが、いくつかのベンダーとお話をしました。ひとつは新しいネットワーク、5Gといったあたりの進化です。産業環境が変わるIoTなどの文脈を感じます。お話しした皆さんもそこは同意されてました。

――5GもIoTも具体的なイメージがまだまだな印象です。キャリアという立場ではどうなのでしょうか。

吉澤氏
 サービスのイメージというのは、LTEのときも3Gのときも、開始3年前くらいまでははっきりしませんでした。ただネットワークが実現すると、想像以上にデータが爆発するサービスやビジネスが出てきたという経験があります。イメージとしては、車が接続するにしろ、スポーツ観戦にしろ、たぶん実現すると思っていますし、それを実現させていくのがわれわれの使命だと思っています。やり遂げます。ただ具体的にそれが何かは、ちょうどこれから打ち出していかないといけない段階です。

――3Gでテレビ電話は普及しませんでしたが、いまやテレビカンファレンスは普通に使われています。

吉澤氏
 SkypeもLINEも映像コミュニケーションをやってます。3Gのスタート時とはいろいろな差がありますが、10年くらいでテレビ電話以上のことができるようになりました。今後はテレカンも普通になり、もっと便利になるでしょう。

 スマホのカメラもどんどん良くなっていますし、SNSにしろYouTubeにしろ高品質になっています。5Gのころには、そういったものがどんどん出てきます。オリンピックなんかは、選手の目線の画像が見られることは当たり前だと思います。そのベースとしてのネットワークは5Gでまかなえるようにならないと。

――ドコモの5Gは2020年、オリンピックと同じタイミングを目指されているかと思いますが、そこでスポーツ観戦も変わると?

吉澤氏
 変わるかと思います。いまでもラグビーの主審カメラとかあります。選手はなかなかそういった余計なものを身につけられませんが、IoTセンサーを持つとか。いまでもビデオからある程度は計測できますが、センサーからのデータを含めて見られるようになるとかも。

――今回のMWCでは日本企業のプレゼンスがトーンダウンしている印象があります。日本の大手メーカーも弱っていますが、日本のアプリベンダーがまったくいませんね。

吉澤氏
 見ないですね。アプリベンダーについては、いろいろバックアップやインキュベーションといった取り組みをしています。アプリを得意とするところと協業し、コンテンツを提供してもらっています。新しいものについては、それが得意な人と。しかしMWCみたいなところでは、日本のアプリベンダーの存在感がない印象です。

――日本のキャリアビジネスとして、端末は各キャリアともにiPhoneを軸にXperiaやGalaxyなど、だいたい似たものになっています。サービス面ではどこで差を付け競争していくのでしょうか。

吉澤氏
 キャリアが提供する新たなバリュー領域、新規のスマート領域でどれだけの収益・利益があるかは、数字的に開示されていないところがあります。本来、サービスについても、どういったマネタイズができるかをもう少し明らかにすることで、うまくいっているかどうかを見てもらうことができます。

 たとえばdマガジンやdTVは、全体の話はしますが、どれだけアクティブユーザーがいて収支がどうなっているかはわかりにくいです。そういったところをオープンにすれば、上手くいっているかとかの差になるのでは。

 昨年の政府の話、家計に占める通信事業者の支払い、そこにはトランザクションとかも含まれています。そこは分離しないといけないです。

――ドコモアカウントの広がり、ポイントなどについて、今回展示されていませんね。

吉澤氏
 「+d」といって、ドコモだけで回すのではなく、いろいろなところと連携しています。クレジットカードの便利さやポイントの便利さといったところで、ドコモの中でもちょっとバラバラ感があったところを、統一感を持ち、「ドコモがやってるよ」とPRしていかないといけません。昨年の12月1日からリニューアルしましたが、そこはまだ訴求が足りないかな、とも思っています。

 Samsung PayもApple Payも(出てくるなか)、ずっと前からうちはいろいろな業界の方とやっています。そこは強みだと思っているのですが、おっしゃるとおりPRが足りないと思いますので、社内体制を強化したいですね。

――今回、海外オペレーター向けにネットワーク構築のコンサルティングをされるという展示をされていますが、ネットワーク以外のビジネスのコンサルティングはしないのでしょうか。

吉澤氏
 いまはまだそこまではできていませんね。

――過去、iモードを海外に持っていったことはありましたが、あまり成功しませんでした。

吉澤氏
 そのときはビジネスのコンサルティングを含めて持っていきましたが、海外が追いついていなかった部分があります。ドコモに口出しされたくないというのがあったのかもしれませんが。

 あとあるのは、ダイレクトキャリアビリングの部分です。キャリアがまとめて決済するよ、と。それがグループ会社のドコモデジタルが海外向けにも提供しています。料金回収についてはコンサルティングで実現するところもあります。そういったところはもっと広げられないかな、とも思っています。オペレーターに限らず、小売店などでも。

 われわれとしては、dアカウントみたいなアカウントを会員プログラムに紐付けして会員管理できるシステムもあります。そういったところも、まずはグループ会社でやらないといけませんが。ABCクッキングとか。そういった管理も一体的にやって、お互いの情報をやり取りできるようにしていきたいです。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

(白根 雅彦)