【Mobile World Congress 2016】

ドコモの丸山プロダクト部長に最新動向を聞く

 Mobile World Congress(MWC)には、日本のキャリアとしてはNTTドコモが出展している。しかしそれとは別に、各キャリアの幹部はMWCに来て商談や情報収集をしている。今回は昨年に引き続き、NTTドコモのプロダクト部長の丸山誠治氏に話をうかがった。

ドコモの丸山部長

5Gの盛り上がり

――MWC 2016のトレンドはどこにあると思われますか?

丸山氏
 モバイルが多くの人に使われるようになってきたかな、と感じています。まずはそこからで、個別の要素だと5Gでしょうか。だいぶ近づいてきています。当社のブースでも5Gを展示していますが、大きなトピックかと。

――5Gのどのあたりが?

丸山氏
 使われる個々の技術要素が明確になってきています。まだ決まっていないことも多いですが。デバイスが登場するまではまだ少し遠いものの、そろそろ実際にどのようなものを作るか、みんなが真剣に議論し始めている段階です。

――2020年に5G開始を目指しているということですが、それを活かすようなサービスや端末、具体的なアイディアはありますか?

丸山氏
 明確なアイディアはまだありませんが、通信速度が速くなるだけではなく、いろいろな機器に通信機能が入るのは間違いないので、それを支えるインフラができます。スマホだけでなく、いろいろなタイプのものがあります。ものの中に通信機能が入ると考えています。

「面白いモノ」もやっていく

――今年のMWCを見ると、日本勢がさらにおとなしい印象を受けます。富士通はスマホがないですし、日本の端末メーカーがだんだんとトーンダウンしている雰囲気があります。一方でサムスンやLG、ファーウェイやZTEといった東アジアには勢いがあります。このあたりはどうご覧になっていますか?

丸山氏
 いろいろ事情がおありだと思うので、個別にコメントはできませんが、MWCに合わせて新機種を発表したサムスンやLG、それぞれいろいろ面白いです。端末に合わせて使うアクセサリーや使い方の提案などを工夫されていて、非常に期待できます。

――今回はアクセサリーの方が目立っている部分がありますね。ドコモも拡充するのでしょうか。

丸山氏
 今も「ドコモセレクト」としてニーズの高いアクセサリー商品を中心に取り扱っていますが、今後はそこはもっと面白いモノも充実させていきたいと思います。

――Androidを採用したフィーチャーフォンが昨年登場しましたが、ほかの形状のデバイスはどうお考えでしょう。たとえばウェアラブルとか。

丸山氏
 いろいろなものを検討しています。ご期待ください。しかしいまのスマホの形は使いやすいからそうなったので、それはそれで必要と思っています。

――スマホの大きさとしては、グローバルでは5インチ以上が主流です。一方、日本では小さなサイズを求める声もあります。そのギャップをどう感じていますか。

丸山氏
 日本市場の方が小さなサイズへのニーズが多いですが、一方で大きなサイズへのニーズも増えています。ただ、急にグローバルと同じようになるとは考えにくいですね。

――グローバル向けの製品を手がける企業が、日本だけのために小さい端末を作るのは難しいかもしれませんが、国内の一部メーカーは継続しています。

丸山氏
 XperiaのCompactなどを当社でも提供しいます。売れると思って作ったのですが、大きいものと小さいもの、同じくらい売れています。ニーズはあると思います。

政府の方針、どう影響?

――スマホを見ると、総務省の指導もあって、割引のやり方も難しく、高価なハイエンドは売りにくい空気感です。御社としてはハイ・ミッド・ロー、どのあたりに力を入れていくことになるのでしょうか。

丸山氏
 総務省の話はクリアになったわけではありません。これからも注視し続けます。目下、実質0円をやめただけで、端末価格はそれほど変わっていません。ちょっと販売が低下していますが、長い目では「解決するのでは」と期待しています。そういった需要を生み出せるところには、是非とも提示していきたいと思っています。

――通信への家計支出は増える傾向に行くのでしょうか。そこはネットワーク効率を高め、同じような価格帯をキープするのでしょうか。

丸山氏
 料金の見方があるかと思います。通信だけでなく、今は音楽も映像もあります。新たな価値を生み出しているとみる方がしっくりくるのでは。雑誌もオンラインで読む時代です。狭い意味での通信費として見るものではないと思いますし、そういった広がり方が目標でもあります。

――支払っている料金が通信だけではないというのは、理解されにくいですよね。

丸山氏
 そうですね。支払っていただいているお金がお客さんの役に立っているかを考えながら、サービスをブラッシュアップし続けるしかありません。

「同質化」進むなかでの対策は

――サービスを含めていかに演出するかというところでしょうか。たとえばiPhoneだとiPhoneの世界観があり、キャリアの色がつけづらいです。ほかのグローバル端末も同様です。ドコモならではのポイントとは?

丸山氏
 iPhone単体で見ると差を見つけづらいですが、ネットワークではドコモが一番です。バンドが広いおかげもあって、実効速度もハイスピードです。そういった我々のネットワークを活かしたところも特徴です。これからも5Gに向け、ネットワークも変わるので、そこは素早く新技術を取り入れ、しっかりやっていきます。

格安スマホ「対応する必要がある」

――日本でもMVNOが普及しつつありますが、そこはどうお考えでしょうか。

丸山氏
 じわじわ増えています。割安料金に流れているのも事実。我々も対応する必要があると考えています。海外メーカーだとミドルレンジやローレンジの端末が多数あるので、そこを揃えて、より安価に端末を買いたい人をカバーしたいです。

――安い端末も現状はロックをかけて売っていますが、最初からSIMロックフリーで取り扱うことはあり得るでしょうか。

丸山氏
 今のところはないです。もちろんロック解除には対応しますが、基本的にロックをかける方針は変わりません。ドコモ端末はドコモのネットワークで使いやすいように出しています。しかし、ニーズはあると認識しています。

――ドコモはdocomo IDがあればドコモ回線契約者でなくてもコンテンツサービスが使えるなど、サービス側はオープンです。オープン端末への対応はどうお考えでしょうか。

丸山氏
 オープン端末へのニーズもありますが、難しいことを考えず、買ったままで設定せずに使いたいという人もいます。それぞれに合った端末を買って使っていただければと思います。

Windows Phone

――今回のMWCではプラットフォームの話、Windows Phoneの世界がだいぶ広がってきたと思いますが、どう見られていますか?

丸山氏
 Windows 10でいろいろ改善されたと認識しています。ニーズもありますので、法人向けに提供することにした(VAIO Phone Biz)。コンシューマ向けは検討中としか申し上げられない。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

白根 雅彦