【Mobile World Congress 2016】

「グローバルモデルを日本市場に投入」〜ファーウェイ呉波氏、日本戦略を語る

 ファーウェイはMobile World Congress 2016(MWC 2016)でもっとも存在感の大きな企業のひとつだ。ネットワークインフラ部門・端末部門ともに巨大なブースを構え、来場者全員に配られる入場バッジのネックストラップもファーウェイロゴの入った赤いものだったりする。

 一方で、日本の端末市場においても、ファーウェイの存在感は増しつつある。とくにSIMロックフリー市場では参入も早く、積極的に端末ラインナップを拡充しつつ販路も広げており、市場をリードするメーカーのひとつとなっている。

 今回はファーウェイ・ジャパンの端末部門を統括するデバイス・プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏に、MWCを踏まえての今後の日本戦略などについて話を聞いた。

――今回のMWCではWindowsパソコン「MateBook」を発表されました。日本でも発売されるのでしょうか。

ファーウェイ・ジャパン デバイス・プレジデント 呉波氏

呉氏
 タイミングや時期はお答えできませんが、発売する予定です。弊社にとって初めてパソコン市場に参入することになるので、今年の重点業務として取り組みます。

 製品としてはより軽く、より薄いことがコンセプトで、エンドユーザーのニーズに合わせて作っています。あくまで消費者向けのモバイル端末としてデザインしました。

――日本ではコンシューマーをターゲットに?

呉氏
 コンシューマー向けの製品ですが、法人向けのニーズも重要だと思っています。

――MWCのファーウェイブースでは、「Mate 8」など、日本未発売の製品も多数展示されています。そういったものの日本展開は?

呉氏
 ほかの製品に関しても、グローバルモデルを日本市場に投入したいと考えています。ハイエンドからミドル、ローエンドまで、すべてのセグメントを網羅し、製品カテゴリーも限定せずにタブレットやウェアラブル、ホームデバイスも検討しています。

――先日発売された「GR5」は、価格とスペックのバランスが絶妙だと感じました。


呉氏
 GR5の日本投入では、われわれとしても悪くない成果を出しています。発売開始から1週間で、ネットでの人気や満足度が1位となり、しかも勢いは増しています。

 今回のGR5という機種、実は前にリリースした「G6」の後継機種として投入しました。今後の日本市場においては、2万円台〜5万円台まで、すべてのレンジで機種を投入していく予定です。

――2万円を切るような製品の可能性は?

呉氏
 日本の消費者は製品の品質・サービスに高い要求レベルと関心を持っています。グローバル向けには1万円台の製品も多数ありますが、そういった低価格帯の機種を日本に投入するかは、あくまで日本のパートナー企業、消費者のニーズがあるかどうかによります。しかし、いまのところ知る限り、日本のSIMロックフリー市場の6割以上が2万円〜3万円台の価格帯に集中しています。

アフターサービスの強化でユーザーの満足度を高める

――日本のSIMロックフリー市場にも多くのメーカーが参入し、Windows 10 Mobileを搭載した製品も登場しましたが、その中でのファーウェイの戦略とはどこにあるのでしょうか。

呉氏
 ファーウェイの日本市場での目標は、「生き残ること」に尽きます。過去、10年を振り返ると、やはり日本市場ならではの独自性がある中で、ほかの海外メーカーの参入と撤退を見てきました。

 弊社は日本のSIMロックフリー市場で圧倒的なシェアを持っていますが、ほかの分野では難しい状況になっています。その中で弊社が重視しているのは、製品の品質と消費者に提供できるサービスです。

――サービスの面でいうと、日本でファーウェイのサービス店舗を開設されるとのことですが。

呉氏
 弊社のアフターサービスを提供する拠点を開設します。そこでは販売活動は行ないません。一番の狙いは、消費者のみなさんがSIMロックフロー端末を買う前の、懸念を払拭してもらうことです。

 やはりSIMロックフリー市場といえば格安スマホで、「ローエンド・ローコスト・ロークオリティ」のイメージがあります。そこでアフターサービスが心配という方もいるので、その心配をなくすために、細やかなアフターサービスを提供していきたいと思っています。

 まずは一店舗。それから手応えを見ながら、ニーズがあれば2店舗目以降も展開します。

――お店の雰囲気はどのようになるのでしょうか。

呉氏
 展示場のような雰囲気になります。簡潔さをモットーに作りたいと考えています。お店に入ってもらって、暖かみを持たせながら、シンプルかつスピーディに、ユーザーの問題を解決できる店舗を目指します。

――販売をしないというのはもったいない気もします。

呉氏
 メインとなるのはアフターサービスの体験ですが、店舗の中には製品の展示も行なうので、そこで手にとって製品を体験してもらえます。

 メーカーがアフターサービスのためだけにお店を作るのは、日本でもかつてないことです。イレギュラーな取り組みによって、より消費者の皆さんに関心を持っていただければと思います。消費者のみなさんに弊社に対する理解を高めていただくには、広くスピーディに取り組むことです。

――ファーウェイには日本で発売されていないものにもさまざまな魅力的な製品がありますが、そういったものの展示は?

呉氏
 行う可能性もありますが、日本の関連法令に沿った形になります。そういった前提の上で、できる限り店舗を通して企業理念やサービスへの考え方を消費者に伝えられる場にしたいと考えています。

――店舗のターゲットは日本人だけでしょうか。海外からの渡航者が端末を故障させたときの対応は?

呉氏
 この店舗のターゲットは日本のユーザーです。SIMロックフリーの販売チャネルでも、法人向けでも、キャリア経由でも、とにかく端末の持ち主すべてです。

 海外ユーザーも考えられますが、レアケースとして、まずケータイの保証がグローバルでアフターサービスを受けられるかどうかを確認することになり、そうでなければ有償で対応することもできます。

――店舗では具体的に、どのようなサービスを提供するのでしょうか。

呉氏
 スマートデバイスを使う過程でいろいろな問題が起きると思います。弊社では故障が発生したとき、ご自宅へ受け取りにうかがい、修理品をお届けする無料のサービスを提供しています。操作や設定がわからないときなどには、店頭サポートでお助けします。

 もちろん無料です。このお店は営利目的ではありません。あくまで弊社の端末製品を使っている人の満足度を高めるためのものです。

IoTへの取り組みはオープンな体制で

――今回のMWC、全体としてのテーマやトレンドをどうご覧になっていますか?

呉氏
 今年のMWCはここ数年を見ても、出店者・来場者ともに多いと考えています。今回はたくさんのメーカーがVRやIoTの展示品、新しい製品を出しています。それらを実現するためには、まずネットワークのトラフィックを大きくしないといけません。これがまさに、ファーウェイが28年間に渡って取り組んできたことです。トラフィックが増加するので、それを処理できるパイプを作らないといけません。

――他社ではVRなど、スマホ以外のIoT製品が目立ちましたが、ファーウェイはどうでしょうか。

呉氏
 実はIoTに関しては、私たちコンシューマーデバイス部門ではなく、ネットワークインフラ部門の管轄になります。IoTを進めるためには、中間のOSが重要です。弊社では「LITE OS」を作っていて、どのような機器にも対応できる体制を作っています。

 IoTに関しては、弊社1社だけですべてをやるのではなく、オープンな体制で、ほかのパートナーと一緒にやることを考えています。ですので、ホール1にある弊社のネットワークインフラ部門のブースは、最終日だけですが、今年ははじめて一般公開します(通常は商談先など、招待客しか入れないクローズドな運用)。競合他社の人も、自由に入っていただいて、みんなが協力し、この世界を良いものにしよう、と。オープン性は弊社にとって今年のテーマです。今回の取り組みは一般市場に向けたジェスチャーだと考えています。

ネットワークインフラ部門のブース。とてつもなく広い

“生活を変える”製品を投入していく

――日本の市場環境についてですが、昨年末から政府の動きにより、キャリアに対して販売規制を強化する流れになっています。これはファーウェイにとって、どう捉えていらっしゃるでしょうか。

呉氏
 まず、積極的なジェスチャーだと考えています。2月1日を境に、実際の市場でも変化が起きています。2016年を機に、SIMロックフリー市場の成長率が50%以上に拡大するのではないかと考えています。今後は、端末にしてもサービスにしても料金プランにしても、豊富な選択肢が与えられます。

――ファーウェイにとっては追い風とお考えでしょうか。

呉氏
 今回の新しい施策は、日本の端末メーカーにしても、キャリアにしても、MVNOにしても、チャレンジと言うよりチャンスであると考えています。

 通常、物事の良い面を見て、ポジティブに捉え、そして目標を定めて頑張って行けば、良い結果が得られます。逆に物事のマイナス面ばかりに注目すると、そこで方向がずれ、悪い結果になることがあります。

――2月1日の前後でどのような変化が見えましたか?

呉氏
 弊社はSIMロックフリー市場とキャリア端末市場の両方の製品を提供していますが、2月1日以降、3大キャリアでの弊社製品の販売価格が変わりました。ただ、新しい価格設定によって、今後の販売量に影響があるかというと、いまはまだ実施間もないので具体的な影響は見えませんが、今後の1年間をみると、最終的な販売台数に影響はないと考えています。

 やはり消費者には、スマートデバイスに対する安定したニーズがあります。生活と密接に関わっているので、無くても良いというものではありません。以前ほどのお得感がないからもう買わない、というものではないのです。短期的にはちょっとした波が出るかも知れませんが、全体を見ると、大きく変わるとは思っていません。

 日本のスマートフォン市場は世界から見ると非常に特徴的で、ハイエンド・ミドルレンジ・ローエンドの販売数が逆三角形になっています。価格帯が高い製品ほど量が出ています。しかし、グローバルでは正位置の三角形です。

 日本の消費者にとっては、端末購入補助がついた価格なので、ハイエンド機が高いという意識はありません。ですので、MVNOの料金プランが安く、端末の本体価格も安いのに、だからといってSIMロックフリー市場が爆発的に伸びているわけではありません。

 キャリアとしては、行きすぎた購入補助が出せなくなります。しかし、消費者が端末を買うにあたり、価格だけが絶対的な要素ではないと考えています。アフターサービスなども含め、総合的に考慮されます。

 いまの携帯電話販売のビジネスモデルは、20年以上続いているので、すぐに一変するのではなく、少しずつ変わっていくと思っています。弊社としてはサービスセンターを開設することで、他社との差別化ができればと思っています。

――昨年を通してファーウェイは「セルフィー」(自分撮り)など、海外の文化を日本に積極的に紹介していました。そのほかに日本に紹介したいものはありますか?

呉氏
 あります。今はまだちょっと言えませんが、すぐにまたご案内をしたいと思います。特徴的で、消費者の生活を変えられるような、使いやすくなるようなものを、近いうちにご紹介できると思います。人々の生活をよりよくする製品を、今年も1年を通じて継続的に提供していきたいと思っています。

 私たちの生活は変わってきています。パソコンに触れる機会が減りました。仕事もプライベートもこの1台のスマホでこなしています。デジカメも持ち歩きませんが、これで事足ります。むしろスマホの方が効果が優れていると思います。

 私は、中国に戻ると、財布を持ち歩きません。中国ではスマホ1台で日常生活のすべてが事足ります。タクシーも呼べますし、ミネラルウォーターの1本から買えますし、ホテルや航空券もスマホで買えます。スマホで支払いができない場面は考えられません。自分の生活が本当に変わったと思っています。いまは財布よりもスマホを盗まれることが心配です。

 今はスマホに名刺とおサイフ、タバコ、これだけを持って移動しています。会議のメモも、書いたその場で写真を撮ってスマホで持ち歩きます。この方が安心できます。こうした生活スタイルの中に、ファーウェイの今後の取り組みについての手がかりがかなり隠されているかと。


 私の実感としても、本当に生活が変わって、より便利に、スピーディにできるようになりました。例えば欧州で何かを購入したときも、税金(VAT)の還付手続きを空港をの出国手続き後にスマホで行えます。還付金受け取りの長い列に列ぶ必要もありません。ちょっとしたことかも知れませんが、こうしたことが蓄積することで、生活が変わっていくと考えています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

(白根 雅彦)