【Mobile World Congress Shanghai 2015】

「5G」に向けTD-LTEを進化させるソフトバンク、その取り組みとは?

5Gに向けた取り組みを解説した、Wireless City Planningの北原氏

 7月10日に、次世代通信技術の共同研究開発を進めていくことを発表したソフトバンク。中国ベンダーのファーウェイ、ZTEとともに、「Massive MIMO」や周波数の利用効率を高め、傘下のWireless City Planningがサービスを行うAXGPを、4.5世代へと進化させていく方針だ。AXGPはTD-LTEと互換性のある規格で、ファーウェイやZTEではこれを進化させた4.5世代の規格を「TDD+」と呼ぶ。

 中国・上海で開催されているMobile World Congress Shanghaiに合わせ、ソフトバンク傘下のWireless City Planning 技術本部技術統括部長 北原秀文氏が各ベンダーの開くイベントに登壇。同社のネットワークの現状や、TDD+やその先にある「5G」への取り組みを解説した。ここでは、ZTEのイベントで話された内容をお届けする。

 北原氏は、まず日本の状況をイベント参加者に向けて紹介。ソフトバンクの記者会見でおなじみの「接続率」や「スループット」を挙げ、通信のエリア、速度ともに高いレベルが維持されていることをアピールした。それを実現している理由の1つが、「狭い島国にも関わらず、27万もの基地局を設置している」ということ。そのうち、FDD-LTEが7万、AXGPが5万となり、TD-LTE単体での加入者数も1000万を超えているとするデータが披露された。加入者数の増加をもたらしたのが、iPhone 6。北原氏によると、「iPhone 6以降、劇的にTD-LTEの契約者が増えた」という。

ソフトバンクが測定した接続率や、スループットを公開した。日本でも発表会のたびに披露される、おなじみのデータだ。FDD、TDD、それぞれの基地局数の数値も示された
TD-LTEの契約者数は1000万を超えている。ここに大きく貢献したのが、iPhone 6だ。なお、1年前のMobile Asia Expoでは343万という数値が紹介されていた。約1年で657万契約ほど増えていることが分かる

 契約者数の増加に伴い、トラフィックも急増している。特に伸びが顕著なのが、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌といった大都市になり、トラフィックの8割程度がここに集中しているという。通信量は今後も継続的に増加していく一方で、新たな基地局を設置できる場所にも限りがある。また、北原氏は「トラフィックが1000倍になったら、設備投資も1000倍にしなければいけないのか」という疑問を会場に投げかける。

トラフィックは、過去9年間で1200倍に伸びた。大都市圏に集中している様子も分かる

 これに対する答えは、「ノー」だという北原氏。トラフィック増加に応える鍵となるのが、5Gだ。5Gでは、Mssive MIMOによって容量を上げるほか、変調方式の256QAM化、クラウド基地局などの手法を組み合わせて容量をトータルで上げていく。つまり、1つ1つの「基地局の価値を上げていく」ということだ。それぞれの技術自体はFDD方式でも導入が検討されているが、TD-LTEもこうしたアップグレードを行い、段階的に5Gへと進化していく。

Massive MIMOや、基地局のクラウド化、256QAMの導入など、ネットワークのキャパシティを上げる技術を紹介した

 さらに、北原氏は、日本での新たな周波数帯割り当てにも期待をのぞかせた。ソフトバンクでは2019年ごろに、FDDとTDD、それぞれのトラフィックが「半分ずつになる」と予想している。こうした状況に対応していくため、ソフトバンクではファーウェイやZTEと共同で実証実験を進めていくという。

新たな周波数を割り当てられれば、さらなる容量増加を見込める
将来的には、トラフィックの半分以上がTD-LTE経由になることを予想した

石野 純也