【WIRELESS JAPAN 2010】
イー・モバイルのガン社長、今後の事業戦略を語る


イー・モバイルのガン氏

 WIRELESS JAPAN 2010の初日に開催された基調講演で、イー・モバイルの代表取締役社長兼COOのエリック・ガン氏は、「イー・モバイル事業戦略の展開」と題した講演を行った。

 まずガン氏は、最近実施されたイー・アクセスとの統合の報告から講演を始めた。もともとイー・モバイルはイー・アクセスの子会社という関係だったが、ゴールドマン・サックスや三井物産などからの出資により、イー・モバイルの関係会社として事業をスタート。今回、株式交換により100%完全子会社化し、7月1日に経営統合した。ガン氏はこの統合により、「プロダクト」と「コスト削減」、「財務改善」の3つのシナジーがあると説明。2011年度の売り上げ高の規模は約2.3倍の1900億円となり、純利益も2倍以上の90億円となるとの予測を明らかにした。

統合効果グループの優位性が高まるとした

 今後の事業戦略としては、まず従来からのメインターゲットであるノートパソコンユーザーに対しては、今後もネットブックなどとのセット販売を継続する。一方で昨年末に発売されたPocket Wi-Fiについては、「いままではパソコンのユーザーしかターゲットにしていなかったが、Pocket WiFiのおかげで、Wi-Fi対応機器のユーザーが増えていくと見ている。ニンテンドーDSやPSP、iPod touchやiPadなど、Wi-Fi機器からの需要は増えるだろう」とし、新たなターゲットであるとの考えを示した。

 Pocket WiFiについては、同社が調査した購買層データも紹介する。データによると、従来のデータ端末では30~40代のビジネスマンが多かったが、Pocket WiFiでは女性と20代以下の男性で半分以上を占めており、新たなユーザー層を開拓できていることをアピールした。また、機器の特性上、これまでのデータ端末と異なり、販売時にAV機器やゲーム機などの売り場に置けることもチャンスに繋がっているとの考えも示した。

 またガン氏は、公衆無線LANユーザーもターゲットになるとの考えも語る。「ホットスポットは携帯電話が普及する前の公衆電話のイメージで、『あそこまでいけば通信できる』という仕組み。今後は携帯電話の普及と同じで、このマーケットにどんどん入っていけるのでは」と述べた。さらにPHSユーザーについても、「高速で広いエリアを使いたいと感じたユーザーがターゲットになるのでは」と語った。

ターゲット市場モバイルブロードバンド市場の成長について
イー・モバイルユーザーは250万超に基地局を小型化

 端末の展開については、「日本の携帯電話は通信事業者が主導して開発し、事業者のブランドで販売している。しかしモバイルブロードバンドの場合、メーカー主導だと考えている。実際にイー・モバイルの端末というとパソコンになるが、パソコンはメーカーが勝手に開発して販売する。さらにPocket WiFiであれば、Wi-Fi機器は勝手に増えていく。オペレーター主導ではないので、いろいろな端末がどんどん登場している」と語った。

 このような戦略で、2010年6月時点で253万契約を達成したという。こうした成長を続けられる、他社に対する優位性の1つとして、ガン氏は基地局コストが安いことを紹介した。また基地局コストが安いおかげで、サービス開始から3年で人口カバー率が91%に達し、地下鉄駅のカバー率も全国で97%になったことを明らかにした。

 とくに地下については、「これまで、データ通信ユーザーは地下街にはいないのでは、と考えられていた。地下鉄の駅で使えても、そこでノートパソコンで通信する人はいないのでは、と。しかしPocket WiFiでは、iPod touchのような機器が使えるようになる。そうなると、地下街で使う人も増えるのではないか。今後はこうした地下におけるデータ通信の重要性も増えると考えている」との考えを語った。

 通信速度の進化については、先日発表した最大42Mbpsのデータ通信サービスを今年10月より開始することと、さらに8月より帯域制限を実施することを紹介する。

 帯域制限については、通信を高速道路に例え、一部のヘビーユーザーの大量の通信によってほかのユーザーの通信速度が落ちる問題を指摘する。これを防ぐために、通信量が1日300MBを超えたユーザーについて、「特別レーン」を設けてほかのユーザーに影響が及ばないようにするという。

 さらに42Mbpsの通信サービスについても高速道路に例え、車線が増えるイメージで、従来端末での速度も向上するというユーザーメリットがあることも紹介した。

 また、現在使用しているHSPA方式が、帯域幅やMIMOなどの条件が同じであればLTEに劣らないとの考えも述べた。他社の通信サービスと価格・速度面で比較しても、「コストは安く、スピードも速い」として優位性があることをアピールした。

 最後にガン氏は、イー・モバイルとイー・アクセスが経営統合したことにより、「これまではバラバラな製品展開をしていたが、経営統合により、屋内の固定回線とモバイルを組み合わせた商品を安い値段でどんどん出せるように頑張りたい」と語り講演を締めくくった。

 



(白根 雅彦)

2010/7/15/ 06:00