【WIRELESS JAPAN 2010】
ソフトバンク近藤氏「端末非依存サービスに注力」


ソフトバンクモバイルの近藤正充氏

 WIRELESS JAPAN 2010で15日、ソフトバンクモバイルの近藤正充氏(商品統括 プロダクト・マーケティング本部 サービスコンテンツマーケティング統括部 サービスマーケティング部 部長)による講演「ソフトバンクモバイルのサービス&コンテンツ戦略」が行われた。ソフトバンク自社制作コンテンツの強化、3G携帯電話の固有仕様に依存した新サービスを減らす方向性などが示された。

最新モデルでTwitter&コンテンツを強化

 近藤氏はまず「2010年夏のソフトバンク最新モデルは、コミュニケーション革命、コンテンツ強化が2つの軸になっている」と説明。この“コミュニケーション革命”を体現するのが、Twitterの対応強化だ。

 2010年現在、日本国内で非常に流行しているTwitterは、サービス発祥国である米国をも超える利用率であることが民間調査会社から発表されている。しかしソフトバンクの調べによれば、iPhoneユーザーの28%がTwitterを利用しているのに対し、従来型携帯電話ユーザーのTwitter利用率はわずか3%だった。

 Twitterはソフトバンクが運営するサービスではないが、同社の孫正義社長が積極的に活用するほか、他サービスとの連携など、さらなる発展が期待される。2010年夏モデルでは、フォトフレームなどを除く14端末すべてがTwitterに対応。より具体的には、Twitter閲覧用のウィジェット、Twitter専用アプリ「TweetMe for S!アプリ」をインストールしての出荷などが行われた。

 近藤氏によると、Twitter対応強化に必要な企業間契約作業は、夏モデル発表会のわずか2日前まで実施していたという。いち早い提供を目指したゆえのエピソードと言えそうだ


2010年夏モデルでは、コミュニケーション革命、コンテンツ強化をテーマに掲げる3G携帯電話でのTwitter利用促進を図る

 夏モデルのテーマ「コンテンツ強化」の例として近藤氏が挙げたのが、「選べるかんたん動画」だ。動画視聴用のURLをメール送信するサービスだが、6月から7月にかけてはFIFAワールドカップのハイライト映像を情報料無料、さらに通信料も無料で提供した。3G携帯電話に加え、iPhoneでも専用アプリをダウンロードすることで楽しめた。

 また、著名雑誌の電子版を配信する有料サービス「ビューン」もコンテンツ強化策の1つ。しかし、サービス開始と同時にアクセスが殺到したため中断。現在もiPad向けサービスしか再開されていない。講演中でも、3G携帯電話やiPhone向けのサービス開始時期は語られなかった。


ワールドカップハイライト映像の利用者推移冬季オリンピックとの比較

自社コンテンツ、端末非依存サービス強化の狙いとは?

ソフトバンクモバイル自らのブランドでコンテンツを提供していく

 近藤氏の解説によれば、ソフトバンクではコンテンツの提供方法を従来形式から少しずつ変更しているという。これまでは、コンテンツプロバイダー(CP)に対して営業を行い、ソフトバンク携帯電話でしか楽しめないコンテンツのラインアップに注力していた。

 この状況に対し、ソフトバンク自らが出版社や新聞社などとタイアップしてコンテンツを制作、自社ブランドで販売しようというのが現在の体制だ。前述の「ビューン」は、まさにこの成果だと近藤氏は説明。コンテンツの消費を促し、データARPU向上をより積極的に狙う意図があるという。

 さらに今後、iPhoneをはじめとしたスマートフォンが台頭すれば、コンテンツの提供先はさらに拡大すると予想される。その一方で、ネットの標準規格に対応したオープンなコンテンツを用意できなければ、スマートフォンへのアプローチが遅くなる可能性もでてくる。

 そこで、携帯電話特有の機能に依存しないコンテンツおよびサービスの必要性が生じる。例えば、1台の端末で2つの電話番号を利用できる「ダブルナンバー」は、携帯電話本体側の対応が必要だが、「選べるかんたん動画」であれば、メールが受信できてWebブラウザを搭載した端末であれば基本的にすべて利用できる。サービスが普及する確率、利用者単価が向上する効率とも後者の方が高いという考え方だ。

 近藤氏が「端末にひも付いたサービスは、端末自体が普及しなければサービス利用者も増えない」と説明するように、端末の買い替えサイクルが長期化する市場状況を踏まえての戦略だと言える。なお2009年以降、ソフトバンクの端末非依存型サービスの割合はすでに高まっているという。

 一方、自社コンテンツを制作するには外部企業との提携強化が重要になる。エイベックス・マーケティングとの協業による「かんたんミュージックGOLD powered by mu-mo」、産経デジタル提供の新聞記事を携帯電話上で楽しめる「朝刊経済ニュース」をすでにリリースしているが、この方向性は今後も強化していく。


端末依存・非依存サービスの比率を図示コンテンツのマルチデバイス対応を促進していく


(森田 秀一)

2010/7/16/ 11:13