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【最新レポート】

【WIRELESS JAPAN 2010】
3社がスマートフォン戦略を深く語ったパネルディスカッション


 WIRELESS JAPAN 2010の2日目に開催された講演セッション「スマートフォンエグゼクティブコンファレンス」で、3キャリアのスマートフォン担当者が参加するパネルディスカッションが開催された。

 パネラーはNTTドコモ スマートフォン事業推進室 事業企画担当部長の木戸博也氏、KDDI コンシューマ事業本部 サービス&プロダクト本部長の増田和彦氏、ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス本部 商品戦略企画部 部長の遠藤浩平氏。司会進行はリックテレコム 月刊テレコミュニケーション編集長の土屋宜弘氏。

 パネルディスカッションの冒頭では、司会の土屋氏が「今日の各パネラーの意見は、キャリアとしての公式方針ではなく、基本的には各個人の見解」と断りを入れ、まずは各社の担当者によるスマートフォンの状況の紹介から開始された。

端末・サービス両面からスマートフォン拡充を目指すNTTドコモ

 ドコモの木戸氏は、まず市場の動向データを紹介しつつ、「販売モデルが変わったことで、シュリンクしている状況。ARPUも減少傾向で、ドコモとしてはこのARPUを上昇気流に乗せていきたいと考えている」とコメントした。一方でスマートフォンについては、対前年度比で130%程度で推移するとの見通しを紹介した。

ドコモのARPU向上への取り組み

 ARPUの内訳としては、ドコモでも今年度中に音声ARPUをデータARPUが抜き去るとの予測を述べ、「ドコモとしてはARPU、パケットをとくに伸ばしたい。対前年度で+110円という目標を立てている。5000万ユーザーがいるので、ハードルが高い数字と考えているが、なんとかこの数字をクリアしたい」と目標を示しつつ、「スマートフォンや定額データプランなど、パケットARPUを押し上げる商品とサービスを提供していきたい」と語った。

スマートフォンへの取り組み
サービスの拡充について

 ドコモによるスマートフォンへの取り組みとしては、「端末」「料金」「サービス」を挙げつつ、「この3つの柱を拡充させていきたい」と語る。

 まず端末については、すでに発表・発売済みの端末に加え、秋にはサムスン電子のGalaxy Sを投入することを紹介。さらに冬モデルについても、「7機種程度の発売を準備している」とコメントした。

 また、「もうひとつの目玉としてspモードを9月に開始する」とし、新サービスのspモードにも言及する。spモードの内容としては、「スマートフォンのお客さまの中に、iモードメールを使いたいというお客さまが多数いた。spモードにより、絵文字やデコメもスマートフォン上で利用できる。ネットワークアクセス制限サービスも導入したい。さらにiモードのようなコンテンツ決済サービスも実現したい。既存端末に加え、冬モデル以降の端末はすべてspモード対応としていきたい」と紹介した。

 このほかにも、ドコモマーケットやパケ・ホーダイダブルへの料金サービス統合なども挙げつつ、「スマートフォン向けサービスの拡充が大事。iモードを使っている人が多数なので、iモードで好評なサービスをスマートフォンでも使いたいという人は多い。その声を反映し、おサイフケータイやiチャネルなどもスマートフォンに取り込んでいきたいと思っている」と語った。

端末ラインナップ spモードについて

 

ISシリーズを投入するKDDI

スマートフォンの出荷実績

 続いてはKDDIの増田氏が、KDDIのスマートフォンに対する取り組みを紹介した。

 まず増田氏は、国内のスマートフォン出荷実績のグラフを示し、「昨年度までは実質的にiPhoneが圧倒的な数を占めていたと思われるが、今年に入り、Xperiaを始め各社が端末を発売した。ラインナップ数・ボリュームともに充実すると考えている」と語る。

 続いてユーザーの利用意向について分析する。増田氏は「利用意向も変化すると考えている。もともとスマートフォンはWindows Mobileということもあり、ビジネスコンシューマーが中心だった。しかしiPhone登場以降、メインのケータイとして日常的に持ち歩くことが自然に生活に溶け込んでいる。そういった変化が進行していると考えている」とし、スマートフォンが身近になったと解説する。

現状の客観的判断

 一方、ユーザー調査で51%が興味なしと答えているデータを示し、「半数が興味ありだが、逆に興味がない人も一定量いる。まだまだフィーチャーフォン(普通のケータイ)の方が数的には多い。ただ、次に買うのであれば、という観点では、スマートフォンへの興味は増え続けている。その中でEメールの使い勝手やワンセグなどの機能がないことから、まだ使っていない人は様子見しているところがあるのではないかと思う」と解説した。

 増田氏はさらに深く分析しつつ、「興味関心は高まっているが、半数以上が様子見の段階。しかし、いろいろなメーカーが参入し、状況は変わりつつある。いまは『普通のケータイがイイ』と考えている人も、ある日、突然に変わるかも知れない。この意味では、iPhoneの影響は大きいと認めざるを得ない。iPhone以外に、XperiaやDesire、Galaxyなど、グローバルで評判の高い端末が国内に入ってきて、これから日本がどう変わるかは注目したい」とも語った。

ユーザーの意向変化 ユーザーのニーズ
オープンプラットフォームの導入方針

 そしてKDDIの取り組みについて増田氏は、「KDDIはスマートフォンの導入が遅れた実態があるが、日本でウケるスマートフォンがどういったものか、徹底的に研究し、ISシリーズを提供する」と紹介する。

 スマートフォンのオープンプラットフォームに対するKDDIの方針も解説する。増田氏は「いままではメーカーがプラットフォームを作っていたが、それに代わってオープンなOSをベースとしたプラットフォームとなり、どういった機能が追加されるか。日本のケータイ市場には特殊な部分があるが、それをどのくらい盛り込めるか、これはキャリアが努力するべきところ」と語る。

 現在、スマートフォンと普通のケータイの2台持ちが多い理由として増田氏は、「通常のケータイの機能に対するニーズがある。そういったスマートフォンに対する不満をいかに払拭できるかがポイント」と分析する。

 当面はスマートフォンが2台目の端末になるとしつつも、「2台目端末からスマートフォン1台持ちで済ませられるようになる流れが来ると考えている。IS01/02以降、下期に投入する端末については、メインとして使えるものを用意している」とし、Android第2弾端末が準備中であることを紹介した。

2台目から1台目へ 2台持ちの理由
IS01のコンセプト

 こうした状況でのKDDIによる最新の取り組みとして、増田氏はISシリーズの2機種の例を紹介する。

 IS01については、「スマートフォンとスマートブックのあいだ。今回はどちらかというとニッチなところから投入しているのが、他社と違うところ。5インチの大型ディスプレイとQWERTYのフルキーボード。スマートフォンと言うより、Androidを使った新ジャンル製品と考えてもらった方が良いかも知れない。通常のAndroidケータイと違うところがあるが、使ってもらえれば良さがわかる製品」と解説。さらにワンセグやケータイのメールサービス、LISMOやナビウォークといったサービスにも対応することを紹介した。

 最新のWindows Mobileと独自のUIを搭載するIS02については、「従来のWindows Mobileでは、使い勝手の点でお客さまからコメントをもらったが、その点は大幅に改善されている」とアピールした。さらに多くの人に使ってもらうため、IS01/02では料金の割引サービス「ISデビュー割」を導入したことも紹介した。

IS02 ISデビュー割

 このような状況の中、現在のスマートフォンが抱える問題として増田氏は、「やはりiPhoneのおかげで、多彩なアプリがスマートフォンにとっての魅力として認知された。スマートフォンにとって、アプリをどうそろえていくか、その取り組みがポイントとなる」と指摘。そこでKDDIでは、通常のAndroidマーケットに加え、au one Marketを提供することを紹介した。

現状の問題点 au one Marketについて

 

スマートフォンで人々に幸せをもたらすソフトバンク

ソフトバンクのスタンス

 ソフトバンクモバイルの遠藤氏はまず、「もともと無線通信事業者ではない。ソフトバンクは、インターネットをどうやってお客さまに喜んで使ってもらえるかを考えている。スマートフォンに置き換えていくとかではなく、人々の生活を豊かにする中で、ビジネスを展開していく」と同社のスタンスを説明した。

 その中で、スマートフォンが人々を幸せに導く3つのポイントとして、「日本のスマートフォン」と「タッチポイント」「スマートフォンへの期待」を挙げる。

 まず日本のスマートフォンについて遠藤氏は、スマートフォンに搭載して欲しいフィーチャーフォン(従来の携帯電話)の機能としては、カメラや赤外線、ワンセグのニーズがあることを指摘。こうしたニーズを踏まえ、日本の機能を搭載し、カスタマイズされたAndroid端末を「Japaroid」、海外のヒット商品をそのまま日本に持ち込む「Intaroid」と呼び、日本のスマートフォンにはその2つの方向性があると解説する。

 遠藤氏は、「最初に入ってきたHT-03AはIntaroid。そしてIS01でJaparoidが登場し、マーケットは急速に大きくなるだろう。これから先はどうなるか。日本向けにカスタマイズされ、日本のお客さまが買わない理由を払拭した端末が登場する」としつつも、「本当にこれだけでいいのだろうか」と疑問も投げかける。

JaparoidとIntaroid IntaroidとJaparoidの今後
タッチポイント

 遠藤氏は自問に対し、「スマートフォンはたくさんの機能が入っているので、買わないネガティブな理由をつぶすだけで良いというわけではない。スマートフォンは世界に対して心を開く『Touch point』だと考えている。そのポイントを画面上のアイコンで表示するのが、スマートフォンのあり方」と答える。

 具体的には、「スマートフォンには社会インフラが入る。そしてそれらを追加したり取り外したりできる。いままでのフィーチャーフォン以上に、お客さまが自分の目的思考で社会インフラと接触できるのが特徴」と説明する。

 そのひとつの具体例として遠藤氏は、ソフトバンクが販売するAndroid端末、HTC Desireの搭載するUI「HTC Sence」を紹介。その上で「スマートフォンのUIは、いろいろな人がいろいろなアイディアを詰め込んで進化するのではないか。キャリアの想像を超えるだろう。そこに期待している」と語った。

 また、スマートフォンでは開発の効率化への期待もあると語る。遠藤氏は「ここ10年くらい、ケータイのソフトはどんどん大きくなり、重厚長大な開発環境が必要となった。その結果、知的なはずのソフトウェア産業なのに、いまは人間をどれだけ投入できるか、という労働集約型産業になってしまった。これは必ずしも良い話ではない」と現状の問題点を指摘し、さらに「オープンソースな環境により、クオリティ維持管理コストもある程度削減された。これにより、いままでケータイを作れなかった人が作れるようになり、参入障壁が下がる。さらに既存のメーカーも、自分の強みを出すことにコストをかけられるようになる。この結果、端末の付加価値の向上に期待できるのではないか。我々の想像を絶した端末が登場する可能性があるのが、スマートフォンの環境だと考えている」と述べた。

スマートフォンへの期待

 

スマートフォン普及のための戦略とは

 ディスカッション・パートでは、司会の土屋氏はまず、各社におけるスマートフォンの定義と事業における位置づけを質問した。

 ドコモの木戸氏はこれに対し、「スマートフォンとは、インターネットの世界を手のひらで見られるもの。普通のケータイはキャリアのポータルを介していたが、スマートフォンでは好きなアプリを使える。」と定義づける。ドコモの位置づけとしては、「パケット通信収入を大幅に押し上げるデバイスだと考えている。今後は大きな事業の柱になるのでは」と語った。

 続いてKDDIの増田氏は、「(携帯電話向けではない)ピュア・インターネットはパソコンを前提とした作りをしていた。これをそのまま、あるいはより使いやすい形で持ち運べるようになったのがスマートフォン。コミュニケーションを電話やメールから別の形にするのでは」と定義づける。そして「新しいデバイス・新しいカテゴリの商品は、まずギーク層(新しいものが好きな層)が飛びつく。スマートフォンというだけでは、ギーク層以上には普及しないと考えている。普及させるためには、どのようなものを準備するかがポイント。積極的に使ってもらうために、従来サービスを使える環境を使えば、バリアが下がるのではないか」と指摘した。

 ソフトバンクの遠藤氏は、「データでいかに稼ぐかがスマートフォンの事業では大きなテーマになる。定額サービスや付加サービスを考えなければいけない」とする一方で、「スマートフォンとフィーチャーフォン以外の領域も残されていると考えている。データ通信のビジネス領域は広い。スマートフォンもそれらの中の1つに過ぎないかも知れない」とし、さらなる可能性も示唆した。

 また、土屋氏がスマートフォンのシェアがどのくらいまで広がると考えているかを質問すると、3者はともに「どこまでいくかわからない」との見解を示しつつも、いつかは半分に達するかもしれない、との可能性も指摘した。

 最後に土屋氏は、各社にスマートフォン普及においての戦略を質問した。

 ドコモの木戸氏はこれに対し、「より使いやすい料金、そしてフィーチャーフォンにあった機能・サービスを提供すること。あとは端末ラインナップ。端末については、女性にウケる端末、ビジネスにウケる端末と、ニーズが分かれるところだと思っている。そこは我が社としても強化していきたい」と答えた。

 KDDIの増田氏は、「普及のためには、スマートフォンへ移行するバリアーを低くすることは避けられない。キャリアのメールサービスやおサイフケータイは、日本独自だと言われているけど、こういったものが使えることは、いまの普及期には必要だろう。そういった取り組みに加え、差別化をしていく。差別化については、多数のキャリアで使える端末が登場することで、できる部分とやりにくくなる部分がある。そういったところを踏まえ、戦っていく」と語った。

 ソフトバンクの遠藤氏は、「スマートフォンについて、どうお客さまに理解してもらえるか、どう伝えるかがポイントになる。端末のバリエーション、料金サービスなどこれからいろいろ発表していくと思うが、ご期待いただきたい」と答えた。

 

(白根 雅彦)

2010/7/16/ 12:52