【WIRELESS JAPAN 2010】
イー・モバイル諸橋氏が語る、DC-HSDPAから4Gまで


イー・モバイルの諸橋氏

 WIRELWSS JAPAN 2010の最終日、次世代通信関連の講演「LTE&4G移動通信サービス構想」において、イー・モバイルの経営戦略本部 次世代モバイルネットワーク企画室長である諸橋和雄氏が「次世代モバイル技術への挑戦と展望」と題して講演を行った。

 諸橋氏は冒頭、イー・モバイルの概況について説明し、加入者数は6月末時点で254万人、エリアの充実度が契約獲得に繋がっていると述べた。また、下り最大21MbpsのHSPAサービスを料金を抑えた形で提供しているとアピールした。

 契約数は堅調に推移しており、諸橋氏は、ユーザー獲得戦略として、「一貫してモバイルブロードバンドを知っていただくことを念頭にサービス展開している」と語った。同氏は、イー・モバイルがサービスを開始する以前、モバイルデータ通信端末の契約者は200万人程度だったが、現在では500万契約程度に拡大していると説明し、市場における貢献度をアピールした。

 また、エリア展開については全国で90%を超えており、「懸案だった地下鉄エリアも東名阪エリアは100%を達成した」とアピールした。

 料金面については、月額利用料は280円~用意していると語ったほか、「使い方に応じた料金プランを多数用意。モバイルブロードバンドは発展途上のサービスであり、ユーザーニーズに合った形でサービス展開していきたい」と述べた。

 増大するトラフィックについて諸橋氏は、音声主体の携帯電話のトラフィックを1とすると、パソコンを使ったデータ通信は100になるとした。トラフィックの増加に合わせて、「気楽にデータ量を増やしていけるようなサービスにしていかなければならない」と語った。さらに、「今後、さまざまな機器が無線化していくだろう。固定網の先に無線LANがあるように、もはや固定も無線も関係ない状況だ。少なくともあらゆる機器が無線に対応していくことになるだろう」と述べた。



 こうした中、イー・モバイルのモバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi」は、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の「モバイルプロジェクト・アワード2010」のハードウェア部門において、最優秀賞を受賞した。諸橋氏は、イー・モバイルの戦略を説明し、単体の3G端末から、ネットブックと組み合わせたUSBドングルの提供、そして無線LAN機器を最大5台まで束ねられるPocket WiFiを紹介。「携帯電話市場と呼ばれている市場のみならず、携帯以外の端末を携帯電話のように取り扱うことが必要」と語った。

 このほか、「3Gを圧迫させずに無線LANに逃がすことをうたっている事業者もいるが、我々はWi-Fiを3Gネットワークに繋がるというアプローチで考えている」と話し、「Wi-Fiはエリアが限定されている一方で、端末にバリエーションがあり、3Gはバリエーションはないが、どこでも繋がる。Pocket WiFi戦略の根幹は両方の利点を兼ね備えたところだ」とした。



秋にもDC-HSDPAサービス提供

 諸橋氏は、今秋にもサービス提供する予定のDC-HSDPA方式による下り最大42Mbpsの通信サービスについても言及した。まず、発表会の実験映像を披露し、40Mbps程度の速度が出ていると紹介した。

 また、DC-HSDPAの仕組みについても説明された。HSPAなどW-CDMA系のHSPAでは、上りと下りの通信に5MHz幅ずつが割り当てられている。DC-HSDPAでは、下りの5MHz幅に隣接した形で5MHz幅が使えるようになる。下りを5MHz×2の実質10MHz幅とすることで、下り最大21Mbpsが下り最大42Mbpsまで理論上拡張できることになる。10MHz幅を1チャネルとして使えるようになると、5MHz幅を使った場合よりもセクタースループットが向上するメリットもあるという。

 諸橋氏は、LTE方式とも比較し、下り40MHzという理論値は、LTEの5MHz幅 2×2のMIMOとほぼ同じ数値であると説明した。ただし、LTEは、帯域幅を柔軟に増減できるため、帯域幅が確保できれば伝送速度も上げやすいということになる。

 DC-HSDPAのさらに先についても言及し、Release 9(R9)の標準化作業が終了したという。R9では、デュアルセルとMIMOの組み合わせが可能になり、最大84Mbpsが実現できるとした。さらに、HSDPAとHSUPAの関係と同様に、上りの速度も拡張され、上り最大23Mbpsになるとした。さらに、DC-HSDPAでは、隣接した5MHz幅が使えるが、R9では隣接しない5MHz幅にも対応する。

 このほか、2011年3月に標準化が完了する、Release 10についても語り、4キャリアが掴めるようになるため、最大168Mbpsの実現も可能とされた。HSPA系のこうした拡張について諸橋氏は、「どこまでLTEに対抗すべきか議論はあるが、CDMA側も徹底的に議論するのが良いことだと思う」と語った。

 LTEについては、実際のフィールドにおいて経験を積む必要があると語った。さらに、4Gと呼ばれる「IMT-Advanced」については、2011年末にも議論が終わるとの見方を示した。「IMT-Advanced」では、限られた周波数に対して、帯域を集約していくキャリアアグリゲーションの流れがあると説明した。

 MIMOに関しては、理論的には4×4、8×8も可能だが、研鑽が必要だとした。諸橋氏は、「最大速度は容量との裏返しであり、マーケティング手法の中で使われることもある。ユーザーが快適に使える通信を用意することが必要だ」と述べた。さらに、技術はユーザーも事業者にも無理のない形でステップアップする必要があると説明し、「LTEはかなりのジャンプがある。極めて慎重にやっていく必要があると思う」と述べた。


 



(津田 啓夢)

2010/7/16/ 19:57