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【WIRELESS JAPAN 2010】
ドコモ尾上氏、今年開始するLTEサービスの展開構想を解説


ドコモ尾上氏

 WIRELESS JAPAN 2010の最終日、次世代無線ネットワークをテーマとしたセッション「LTE&4G移動通信サービス構想」で、NTTドコモの執行役員 研究開発推進部長の尾上誠蔵氏は、「実現が近づくLTEとその後の発展シナリオ」と題した講演を行った。

 尾上氏は講演の冒頭で、「実は講演タイトルは去年と変わっていない。本日は標準化の話というより、トレンドやドコモとしての考え方をお話ししたい」と述べた。

2004年までのパケット量変遷
2009年までのパケット量変遷

 まず尾上氏は、3G導入前後(1999年〜2004年)の1ユーザー当たりのパケット使用量の変遷グラフを示し、「よく引用されるグラフだが、ここに第2世代(PDC)と第3世代(W-CDMA)のパケットの使い方が現れている。第2世代に比べ、第3世代ではスゴイ伸びている。これはW-CDMAで性能が高くなった、ということも示しているが、それ以上に、まだまだ潜在的なパケット需要がある、とも言える。事業者が良い回線を提供するのは、ニーズがあるから」と解説する。

 続いて尾上氏は、2009年までに範囲を広げたグラフを披露する。「一時的には第2世代のトラフィックも増えて喜んでいたが、そのあと、急激に3Gが伸びた。実際には、2004年まででは全体が見えていなかった。このように増えた要因としては、2006年8月にHSDPAを導入したことがある。端末には1年くらいかけて標準搭載されるようになり、そのあたりから増加速度が上がった。ただ、要因はそれだけではなく、通信方式とそれに見合った動画コンテンツなどが相まった結果」と説明する。

 さらに海外キャリアのデータも紹介し、世界的にトラフィック増がトレンドとなっていることを指摘。トラフィック増に対応するため、LTEが必要だと訴えた。

エリア展開シナリオ
周波数展開シナリオ

 尾上氏はLTEの展開シナリオについて話を移す。まずエリアの展開については、「いままでも何度も申し上げているように、現行の3Gにオーバーレイして展開する。これは新しい考え方ではなく、欧米でGSMにオーバーレイして3Gが展開したのと同じ。ただし端末がいわゆるデュアルモードであることが前提となる」とし、デュアルモード端末を前提とした展開をすることを紹介する。

 続いてLTEで使う周波数については、「ドコモのLTEでは、現在3Gに使っている2GHzでやることが特徴になる。これを特徴とはしたくなかったが、ほかの事業者は新しい帯域に入れようとしているので、特徴になってしまった。既存帯域を使うので、あまりガバっとは使えず、まずは最低5MHz幅から提供する」と説明する。混雑する場所では5MHz幅で使い、余裕があるところではその倍の10MHz幅で展開するという。

 また、尾上氏は「LTEは効率が良いので、最終的にはすべてLTEにしたい。しかしそれには時間がかかる。また、すぐに3Gを巻き取ってしまうわけではなく、巻き取りは2020年代以降。世界中の端末がLTEになるのにも時間がかかるので、海外からのローミングのための3Gも確保しないといけない」とし、3Gを早急に収束させようとはしていないことも説明した。

LTEのスペックと帯域幅

 また、まず導入するのは「カテゴリ3」とされるLTEシステムになることも紹介。LTEにはスペック別に5つのカテゴリがあり、下から3番目(カテゴリ5が最も高速)のスペックを導入することになる。カテゴリ3での最大通信速度は、5MHz幅で最大37.5Mbpsとなる。

 ここで尾上氏は「豆知識」として、LTEやHSPAでの通信速度の記述方法について言及する。スペック上の通信速度の記述方法については、レイヤー別に、物理レイヤーでの速度とMACレイヤーでの速度があり、ドコモではMACレイヤーでの速度を使うことが多い。他キャリアではより高速な数字になる物理レイヤー速度を記述することがあり、同じスペックでも速度表記が異なることがあるという。

 まずは2GHz帯でLTEを導入したあと、次には新規周波数となる1.5GHz帯で、5〜15MHz幅でLTEを導入するという。ただし1.5GHz帯の使用は、2012年からとなる。しかし尾上氏は「これは申請上のデータ。社長も言っているが、前倒しする可能性もある。とにかく積極的に展開する方針」とも語った。

データ速度記述に関する豆知識 ドコモによる開設計画

 


国際的な周波数帯域の使い分け状況

 一方で尾上氏は、周波数利用については議論しないといけないとも指摘する。3GやLTEは、国際的に同じ方式が使われているものの、国ごとに使われている周波数帯は異なる。尾上氏は「長い目で見ると、周波数の使い方が、LTEがどのくらい世界で使われるかのカギを握る。しかし、なかなかうまくいかず、世界でバラバラの周波数を使っている。とくにLTEは新しい周波数にしか導入できないと思い込んでいる人たちがいるが、そうではない、既存周波数でも使えると訴えかけたい。とくにカギを握るのは、2.1GHz帯。欧州とアジアでは3Gの帯域として使われているので、そこにLTEを導入すれば、使いやすい」とし、2.1GHz帯の活用を訴えた。

 ただ一方で、既存帯域でLTEを使うには、技術開発が必要になるとも指摘する。これについて尾上氏は、「海外では正直に言って、反応が良くない。しかし何年か経てば、既存帯域にLTEを導入する事業者も登場する。そうなれば、いまドコモがやっているものが生きる。そういった動きになるように、働きかけていきたい」と述べた。

ドコモにおけるコアネットワークの進化

 続いて尾上氏は、無線や基地局より後ろのコアネットワークに話題を移す。まずこれまでの流れとして、最初にFOMAが導入された2001年当時、コアネットワークはATMネットワークで、2004年ごろから順次IPネットワーク化していったという経緯を紹介する。

 そして2009年度末からは、「IMSですべての制御をやるという方向。パケットは従前のままだが、回線交換も含めてIMSで処理する。IMSで処理するが、ゲートウェイが変換するので、既存の無線装置もそのまま使える。こうした基盤の準備を進めている」という。そしてLTEが導入されると、回線交換にはCSフォールバックという仕組みを用いるという。

2009年のコアネットワーク 2010年以降のコアネットワーク

 

3Gの導入タイミング

 尾上氏は、LTEの導入タイミングについても言及する。各国の事業者が3Gネットワークを導入していったタイミングと契約者数のグラフを示し、「ドコモは必死に世界をリードして3Gを導入したが、他事業者が追従したのは1年半から2年後くらい。タイミングが早かったと、結果としては反省している。導入タイミングが重要という教訓が得られた。そこでHSDPAでは適切なタイミングで導入した」と説明する。

 そしてLTEについても、「世界の先頭集団として」としつつも、導入を急ぎすぎないとの考え方を示し、すでに北欧の通信事業者であるテリアソネラが世界初のLTEサービスを開始したことを紹介した。また、ほかの会社の公開されている展開情報などを含め、ドコモが先頭集団にありつつも、突出して早いわけではないことを説明した。

テリアソネラのLTEサービス概要 世界のキャリアのLTE導入スケジュール

 

 尾上氏は、基地局へのLTE導入プロセスについても紹介する。まず2009年末よりアンテナ直下に設置するRRE(Remote Radio Equipment=光張出し基地局)をLTE対応のものに置き換えを開始していて、それと光ファイバで繋がる基地局機器も今年のLTE商用開始に備え順次LTE対応の機器を追加しているという。

LTE対応の基地局構成図 LTE対応の基地局アンテナとRREの写真

 

2004年ごろからドコモが提唱しているLTEの基本コンセプト

 さらにLTEの次の「4G」については、もともとドコモがLTE(当時はSuper 3Gと呼称)について、4Gへのスムーズな移行を想定して開発していたことを紹介。展開シナリオについても、従来から公表しているシナリオの通り、新しい広帯域を使い、エリア的にはオーバレイして展開していくとの考えを示した。

 



(白根 雅彦)

2010/7/16/ 21:44